“高い城”冒頭、美しいハープ重奏が噛んで含めるようにゆっくりと語り出す。ニュアンスが込められ表情豊かに紡がれる一音一音をチェコ・フィルから引き出すビシュコフの真摯な筆致は、極めて入念で意志的だ。チェコ・フィルの反応が実に鋭敏で、スメタナ生誕200年に送り出す故国不朽の銘品に対する深い敬意と愛情が音楽に溢れ出ている。そこには時代や状況に対する音楽家たちの情感が否応なくにじみ、時には運命的に歴史と切り結ぶために掲げられてきたこの大作にとって不可分のアティテュードであることがおのずと示される。スメタナ生誕200年、もっと言えば同時代に刻まれた〈わが祖国〉として、深く耳を傾けたい。