植松伸夫作曲のテーマソング、鈴木光人・浜渦正志らが手がける楽曲を全175曲の大ボリュームで収録したサウンドトラックが早くも登場

 日本発の数あるRPGのなかでも不朽の名作として名高い「FINAL FANTASY VII」。プラットフォームがスーパーファミコンから初代PlayStationへ移行したことで進化したのはゲームシステムのみならず、映像はドット絵の2Dからポリゴンモデルやムービーシーンを導入した3D仕様へ。それに伴い、言わば劇伴的な意味合いを強めた植松伸夫による音楽は、より自由度の高いジャンルレスなサウンドへ──。〈FF7〉はそうした〈新機軸の集合体〉であったわけだが、そこから20年以上を経た現在、同作を現代の技術で再構築するという大規模なリメイク・プロジェクトが進行中だ。まず2020年に3部作のうちの1作目「FINAL FANTASY VII REMAKE」が発表され、続編の「FINAL FANTASY VII REBIRTH」がこの2月末日に登場。陰のある物語の起点〈魔晄都市ミッドガル〉を飛び出すところから本作はスタートするが、その後の彼らが目にする広大なワールドマップと、積み重ねゆく冒険のシネマティックなドラマ性を音楽越しに体験できる作品、それがこの『FINAL FANTASY VII REBIRTH Original Soudtrack』である。

『FINAL FANTASY VII REBIRTH Original Soundtrack ~Special edit version~<初回生産限定盤>』 スクウェア・エニックス(2024)

 メイン・ストーリーに加え、数多のサイド・コンテンツも含むゲーム世界のスコアや挿入歌を網羅しているだけあって、7枚組(初回生産限定盤はボーナス・トラックCDが追加された8枚組)、全175曲の大ヴォリュームとなった本作。植松によるオリジナル曲のリアレンジ版や〈REMAKE〉曲のヴァージョン違い、そして膨大な新曲群の制作には20名ほどのクリエイターが集結しているが、その中心を担ったのは前作〈REMAKE〉と同様に鈴木光人と浜渦正志。それぞれが突出した方向でその手腕を振るっている。

 クスリと笑えるマーチング・ソング“スキンヘッドの歌 -オレの太陽-”(編曲はとくさしけんごとの共作)、ロマンティックなシンセ・ポップ~ブリブリのダンス・ポップへと80sサウンドをインタラクティヴに連結した“ヤッホー! コレル山”、アフロともアラビアンともつかない土着的なリズムとメロディが重なり合う“ゴンガガの森”、多言語で繰り返される呪術的な旋律と神秘的なアンビエンスに取り込まれる“ギはマテリアを求めたり”、ビースティ・ボーイズあたりを想起させるロッキンなラップ・チューン“The fun DON’t stop”など、多様すぎる音楽性で聴き手の想像力を掻き立てる鈴木作の楽曲群。一方の浜渦は、クワイアを効果的に織り込んだ壮麗なオーケストラ・サウンドで本作のクライマックスとなる最終戦を緊張感たっぷりに盛り立てる。また、朗々としたハイバリトンで開幕するオペラ・シーンを表現した連作は、オフィシャルのコメントによると「モーツァルトやレオン・カヴァッロのような曲想、エットーレ・バスティアニーニやカルロ・タリアブーエのような歌手……といった具体的なイメージ」があったそうで、リアルな歌劇としても堪能してみたいと思わせる迫力の完成度。そこから植松伸夫が作曲、野島一成(本作のシナリオライター)が作詞を手掛け、映画『グレイテスト・ショーマン』などで知られるローレン・オルレッドが歌唱したテーマ・ソング“No Promises to Keep LOVELESS Ver.”へと続く流れも互いの染み入るような叙情性を高め合っていてとても良い。