ジャズの装いを脱いだ原曲の素顔は――

 さまざまに形を変えながら歌い継がれてきた名曲が並ぶ『SINGS -Bedtime Stories-』。メインとなっているのは、日本人唯一のアカデミー賞受賞女優、ナンシー梅木の持ち歌“君待てども ~I’m waiting for you~”などの戦後歌謡カヴァーだ。甘いクルーナー唱法でならした小畑実の“星影の小径”は、〈アイ・ラブ・ユー〉のフレーズが当時の若者のハートを捉えた都会派歌謡の逸品。同曲と、中村八大/永六輔の共作による“黄昏のビギン”は90年代に発表されたちあきなおみ版も有名で、定番となったいまでは多様な歌手に歌われている。

ちあきなおみの91年のシングル“黄昏のビギン”

 また、霧島昇の“胸の振り子”は大作曲家、服部良一の傑作のひとつで、雪村いづみ&ティン・パン・アレーのカヴァーで記憶しているロック・リスナーも多いかも。加えて、USスタンダードからはドリス・デイのヒットで知られる“Again”や、トニー・ベネットとレディ・ガガによるコラボ盤でも取り上げられたコール・ポーター作の“Ev'ry Time We Say Goodbye”、異色なものでは笠井紀美子のシティー・ポップな名盤『TOKYO SPECIAL』に収録のメロウ・バラード“やりかけの人生”も。原曲に負けないレイジーな歌声を聴かせる高岡ヴァージョンと聴き比べてみては?

霧島昇の1947年の楽曲“胸の振子”

笠井紀美子の77年作『TOKYO SPECIAL』収録曲“やりかけの人生”

 

▼関連作品

左から、ナンシー梅木のベスト盤『アーリー・デイズ 1950~1954』(ビクター)、ちあきなおみのベスト盤『ちあきなおみ 全曲集 ~黄昏のビギン~』(テイチク)、霧島昇のベスト盤『スター★デラックス 霧島昇 永遠の歌声』(コロムビア)、トニー・ベネット&レディ・ガガの2014年のデュエット作『Cheek To Cheek: Deluxe Edition』(Streamline/Interscope/Columbia)、笠井紀美子の77年作『TOKYO SPECIAL』(ソニー)
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