INTERVIEW

対談:野田秀樹(演出家)×井上道義(指揮者) 夢のタッグの新演出で引き出されるモーツァルト歌劇〈フィガロの結婚〉の奥深い面白さ

左:野田秀樹(演出家) 右:井上道義(指揮者)

 

「フィガロの結婚」の奥深さから、いろんな面白さを引き出したい

日本のクラシック音楽界を代表する指揮者の一人である井上道義氏と、日本演劇界を代表する演出家である野田秀樹氏がタッグを組み、全国10か所でのオペラ公演!! 各地で活躍するオーケストラ、合唱団とのコラボレーションも! そんな夢のプロジェクト、どうせなら全国ついて回りたい!ですよね。まずは、お二人の心意気を!

 

――お二人のコラボレーションが実現したきっかけは?

井上 僕は夢の遊眠社の頃から野田さんの芝居が好きで、ずっと片思い状態だったから、今回やっとくどけたという感じです。僕は彼が以前演出したヴェルディの『マクベス』も観たんだけど、野田さんのいいところが全然出ていないと思ったの。ああいう悲劇は彼に合ってないと思ったし、基本的に悲劇よりも難しい喜劇をやれる人なんだし。オペラと演劇の「マクベス」は全く違うから。これで野田さんがもうオペラやるのを嫌になっちゃったりしたらいけないと思って、これぞっていうものをもっていかないと、といくつか持っていきました。実現にはスケジュールが空いていない事やオペラは上演回数が少ないという問題があって時間がかかりました。

――『フィガロの結婚』の制作に取りかかって手ごたえは?

野田 最初はスケジュール的にそんなに時間をかけてやれないんじゃないかと思っていたけど、やり出したらね、やはり作品の奥深さなんだろうけど、僕にとって面白いんですよ。それで本来なら自分の芝居の新作にあてる時間までフィガロに時間かけちゃった。でもいつも新しい世界に踏み込むときは、自分が面白いとのめり込んだときはやっぱり成果として面白いことが多いから、面白い(ものが出来る)に違いないと思ってやってますけどね。

【参考動画】2013年に行われた新国立劇場のオペラ公演〈フィガロの結婚〉の告知映像

 

――今回は主人公のフィガロとスザンナなど、日本人であるという設定の登場人物がいる点が特徴になりますね。

野田 僕は最初に、日本でやるオペラで日本人と西洋人が当然のようにイタリア語で歌っていることを不思議に思って、このフィガロでは、日本人は日本語で、西洋人はイタリア語で歌うことが自然な設定になんとかできないかなと考えたんです。

井上 僕も大賛成。オペラはヨーロッパで生まれたものだからね。微妙なとこだけど、日本人が演じると、例えば胸元が大きくあいたドレスが借り物みたいに見えたり、燕尾服がホテルの“ドアマン”のように見えてしまって、どんなに声がよくても西洋人の方が様になるといった問題を、今回のような工夫をすることでうまく自然にできるんじゃないかな。それから副題にある「庭師は見た!」という切り口も野田さんの発明です。

――野田さんがご自分でつくられた字幕にも注目です。

野田 今までのオペラは字幕を見るとがっかりするというか、一目見てもわからない観念的な漢字の連続だったりするから。何のために自分で字幕つくるかって言うと、まず僕自身が、原語では何を言おうとしているのか、正確に知りたい。日本語訳は全然違う表現になってるときがあるので、元がどうなのかを理解するためでもあるんです。当たり前のことなのですが、そこを演出家がわかっていないといけない。『マクベス』のときは音楽というものに乗って流れで場面の雰囲気をつくっていたけれど、やはり言葉をちゃんと解釈することによって、役者の位置が変わるとか、こういう並びでなくちゃおかしいはずだということがわかってくる。演劇の演出のときは普通にできることをマクベスではやりきれなかった。今回はそれがないように、全部言葉を把握しながらやっています。

【参考動画】野田秀樹の劇団NODA・MAPによる2013年の舞台〈MIWA〉舞台稽古

 

――作品の面白さはどこにありますか?

野田 男と女のありとあらゆる恋愛事情の中で、いろんな感情が網羅されているところ、言っている言葉とは裏腹な音が出ているところが圧倒的に面白いですね。そこの部分をどう見せるか。例えば、「許す」ということがいっぱい出てくるけど、本当に許しているのだろうか? 現実に我々はいろんな恋愛の局面で、許すと言って何年も根に持って生きてたりするわけだから、そういう部分をちょっと見せたいなというのはあります。

――最後に、初共演に向けた思いをお願いします。

野田 オペラは井上さんが生きてきた場所ですから、そこにお邪魔して楽しめるということは、どんな結果になっても僕の中ではとてもありがたい体験なんで感謝してます。

井上 僕はちょっと死にかけたんで、死なないでこの作品ができることの運命を感じます。野田さんが今より20年若くてもジジイでもうまく行かなかったろうし、今このときにしかできないことだと思っています。

 

全国共同制作プロジェクト
モーツァルト 歌劇『フィガロの結婚』~庭師は見た!~新演出

(全4幕・字幕付 原語&一部日本語上演)

指揮・総監督:井上道義 演出:野田秀樹

[春期]
5/26(火)18:30開演 石川・金沢歌劇座
5/30(土)16:00開演 大阪・フェスティバルホール※
5/31(日)14:00開演 大阪・フェスティバルホール※
6/06(土)14:00開演 兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
6/07(日)14:00開演 兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
6/10(水)18:30開演 香川・サンポートホール 高松大ホール
6/17(水)18:30開演 神奈川・ミューザ 川崎シンフォニーホール

[秋期]
10/24(土)14:00開演 東京・東京芸術劇場 コンサートホール
10/25(日)14:00開演 東京・東京芸術劇場 コンサートホール
10/29(木)18:30開演 山形・山形テルサ テルサホール
11/01(日)14:00開演 宮城・名取市文化会館 大ホール
11/08(日)14:00開演 宮崎・メディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場)
11/14(土)15:00開演 熊本・熊本県立劇場 演劇ホール

※関連公演:国境なき医師団支援のためのチャリティーコンサート

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