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【新連載:架空のJ-Pop考】第1回 メイガス・トゥー“BEAUTIFUL≒SENTENCE”をmabanua、西山瞳、スカート澤部が斬る!

アニメ/ゲームのキャラソン=〈架空のJ-Pop〉を異畑ミュージシャンがクロス・レヴュー

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  • 2015.03.17

 

キャラクター・ソング(キャラソン)とは、アニメやゲームなどの劇中の役柄/登場人物として声優が歌った楽曲のこと。このキャラソン市場が拡大を続ける近年、音楽自体も大きな進化を遂げているらしい、どうやらおもしろいことになっているらしい! しかしその音楽に触れるには、実際に作品を観たりゲームに親しまない限り聴くことはないわけで。でもその扉を開く第一歩をなかなか踏み出せない……何から手をつければわからない……という人もいるでしょう。そんな貴方のために、Mikikiではキャラソンという名の〈架空のJ-Pop〉にフォーカスし、一見アニメ/ゲームとは相容れないフィールドで活躍する3名のミュージシャンに、TOWERanime新宿のバイヤーと編集部スタッフがセレクトした1曲を自由にレヴューしてもらう連載をスタートすることにしました。さまざまな意味で目から鱗な発見があるかもよ!

 


 

【今月のお題】

メイガス・トゥー BEAUTIFUL≒SENTENCE avex pictures(2014)

2014年秋(10~12月)放送アニメ「トリニティセブン」エンディング・テーマ

アニメ音楽周りで知られるテクノ・ユニット、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDが、話題となったアニメ「ウィッチクラフトワークス」発ユニット・KMM団が歌う“ウィッチ☆アクティビティ”に次いで手掛けた「トリニティセブン」のエンディング・テーマ。「トリニティセブン」のキャラクター、浅見リリス(CV:原由実)と神無月アリン(CV:内田彩)から成るメイガス・トゥーが歌い、テクノボーイズの持ち味である温故知新なテクノポップ・サウンドを絶妙な塩梅でアニソンに落とし込んだオリジナリティー溢れる同曲は、アニメ界隈に留まらずより広い音楽リスナーに刺さるハズ! *樋口翔(TOWERanime新宿バイヤー)

 

★mabanua

 

 

「トリニティセブン」という大人気アニメのエンディング・テーマである本曲。実は僕自身、アニメに本当疎くて(すみません……)、めったにこのフィールドの音楽を聴いていなかったので、ある意味フラットかつ素の状態でこの曲を聴くことができました。

メンバー3人で構成されるTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDですが、経歴や音の拘りを知るやいなやビックリ。ハード・シンセへの造詣を深めつつ細野晴臣氏監修のサントラ『EX MACHINA ORIGINAL SOUNDTRACK』へのトラック収録や、あのデトロイト出身レジェンド、クロード・ヤングに楽曲(“LOST”)をリミックスされるなど、僕のアニメ音楽へのイメージが初っ端から覆されました。

今回のテーマ“BEAUTIFUL≒SENTENCE”本編というと、たくさんの音のレイヤー、そしてドラムの音色配置&エディット、そしてスラップを含めた超絶エレキ・ベース(これ生で弾いてるのかな? 個人的に平歌部のハイノートを含めたループ・フレーズが気持ち良い!)が響き、これに目まぐるしいほどの楽曲アレンジが施されている(サビの転調は圧巻)。

にもかかわらず、すーっと4分聴けてしまうのは何なのだろうと。僕の普段やっているフィールド内では決して出ることのない発想に、インスト・ヴァージョンを含めて何度も聴いてしまいました。

おそらく、僕がよく言うのですが、いわゆる〈点と点のアレンジ〉が絶妙なのではと。音色、音数が多くてもそれらを巧みに絡み合わせることで嫌味なく聴かせる一種のアレンジ方法があるのですが、まさにその極地なのではと思いました。

おまけにメイガス・トゥーのお2人が織り成す歌とRapの絡み。僕はブラック・ミュージックが大好きなのでたまたまベースに耳がいってしまったかもなのですが、よくよく聴くとテクノはもちろんエレクトロ、ファンク、ヒップホップ、あらゆる要素がふんだんに盛り込まれている。

そういうところも何度か聴くとわかってくるので、非常に聴き応えがあると思いました。実はこの“BEAUTIFUL≒SENTENCE”、メイガス・トゥーが歌う以前にTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDのプロトタイプ・ヴァージョン↓もあるのでそれと聴き比べてもおもしろいかと思います! 大変刺激になりました!!

【参考音源】「トリニティセブン」のサントラ『TRINITY SEVEN: MAGUS MUSIC ARCHIVE』収録曲
“Nervous Sightseeing”

 

PROFILE:mabanua


ドラマー/ビートメイカー/シンガー。Shingo Suzuki関口シンゴとのOvallとして活動する傍ら(現在活動休止中)、ソロでも活躍。リーダー作としては2012年の最新作『only the facts』を含む2作品をリリースするほか、BudaMunkとのGreen ButterU-zhaanとのコラボ、 さらにCharaGotch七尾旅人福原美穂ら多くのアーティストのプロデュースやリミックス、ツアー・サポートなどをこなす。直近では思い出野郎 Aチーム大橋トリオ、Charaの最新作、そして4月にリリースされるAwesome City Clubの初作のプロデュースを担当。ドラマーとしては関口シンゴのソロ作(ヴォーカルでも)、くるりのライヴ・シリーズ〈NOW AND THEN〉にサポート参加する。

【参考動画】mabanuaの2012年作『only the facts』収録曲“drawing”

 

 

★西山瞳

 

 

ええっと、全く門外漢のジャズピアニストの私が書いていいのでしょうか。私の見地で好きに書いて下さいと言われましたが、私自身は「劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス」を観に行き、毎期1作か2作選んで観る程度のアニメ視聴者で、思ったまま書かせてもらいますが、どうぞお付き合い下さい。

最近のアニメ音楽の充実ぶりには、もう感服するばかりです。それぞれのアニメの世界感に合わせた音楽クリエイターが選ばれ、総合的なその作品の世界を創る……素晴らしいことですね。ジャズのような、瞬間の即興音楽をしている自分は、アニメ音楽にはちょっとした羨望を抱いています。いえ、ちょっとした嫉妬すら感じています。ジャズ演奏をしていると、その時のリアルな等身大の人間同士で会話するように演奏を進めていき、1秒ごとに話の方向も変わりますし、いかにリアルな人間にスピーディーに身体を対応させるか、という、とにかく等身大で現実的な作業になります。

たまには、頭の中で時間をかけて練りに練った、超絶空想ファンタジーのような音楽を、100%振り切ってしてみたい欲求があるわけです。
2012年に『Astrolabe』という作品を発表しましたが、これは同世代ギタリスト(本物のアニメ・ファンであり、私のアニメの導師、馬場孝喜)と、即興メインではなくファンタジーをテーマに創り込んだ作品だったのですが、この時の作業は楽しかったですね。

さて、今回の“BEAUTIFUL≒SENTENCE”ですが、どんなのが送られてくるんだろうとドキドキしていましたが、予想を上回る格好良さでした。
レイヤーの多い作りで、沢山重ねて塗り込んでありますが、個人的にこういう塗り込み型アレンジは大好きです。制作者のセンスが出ますよね。構成も全然飽きないですし。

しかし、聴き終わった後、強く印象に残って私の頭から離れないのは、幾度となく繰り返される電子タムのトゥルトゥトゥトゥトゥトゥンでした。
トゥルトゥトゥトゥトゥトゥンです。何度でも言います、トゥルトゥトゥトゥトゥトゥンです。何度でも言いたいぐらい、頭に残っていますから!

昔から、テクノ系のアレンジのアニメソングも多いですが、最近だと澤野弘之さんなどは、電子音を効果的にオーケストラやハードロックとミックスして使っていて、格好良いなあと大変感銘を受けました。電子音楽も好きなのですが、今回聴いたトゥルトゥトゥトゥトゥトゥンは、妙なデジャヴがある……ああ、キーーン!と言いながら両手を広げて全力で走ってくる、紫の髪のメガネをかけた女の子のやつだ!と思い至りました。

だからでしょうか、他のバック・トラックは音楽として入ってくるのに、この音色にだけ、妙な二次元感がありまして、私はこれが気になって気になって仕方がない状態に陥りました。全くネガティヴな意味ではないです、むしろまた聴きたい。なんとなく、昭和と二次元感を感じるために。逆に、アニメ「Dr.スランプ アラレちゃん」を観ていないもっと下の世代の方々は、この音色はどのように感じられるのでしょうか。気になります。

【参考動画】アニメ「Dr.スランプ アラレちゃん」オープニング・テーマ“ワイワイワールド”

 

PROFILE:西山瞳


79年生まれのジャズ・ピアニスト。2006年にスウェーデンのミュージシャンとのトリオで録音した『Cubium』でデビュー。2008年のバンド編成での『Parallax』、2011年のトリオ作『Music In You』など作品ごとに着実に評価を高めるほか、ヴォーカリスト・東かおるとのプロジェクトやベーシストの安ヵ川大樹とのデュオ、さらにビッグバンドへの楽曲提供なども手掛ける。2014年には西山瞳trio“parallax”として最新作『Shift』をリリース。3月31日には新宿PIT INNにて同作のレコーディング・メンバーであるクァルテット編成でのライヴ〈西山瞳トリオ・パララックス+1 LIVE〉を開催する。

【参考音源】西山瞳trio“parallax”の2014年作『Shift』ダイジェスト

 

 

★澤部渡(スカート)

 

 

スカートというバンドをやっております、澤部渡と言います。普段あまりアニメソングに触れる機会がないので、新しく音楽が聴けるチャンスをいただきとても嬉しく思います。

早速今回の“BEAUTIFUL≒SENTENCE”ですが、Aメロの部分はいくつかある小室哲哉黄金期のうちのひとつを思わせる緩急のついたメロディーの譜割と、サビでの目の覚めるような転調が印象に残りました。他にはシモンズ(英の電子打楽器メーカー)のタムのような音色で鳴るフィル・インも敢えてジャストなタイミングから外した部分(これはもしかして実機を鳴らしているからなのでしょうか)もあったり、スラップ・ベースが入っていたり、詰め込まれた情報のなかにも妙に人間っぽい部分が垣間見れるのは、テクノというよりもテクノポップへの敬虔さというか、説得力がそこに表れているように聴こえ、そこがとても興味深かかったです。

【参考動画】globe“Departures” 98年のライヴ映像

 

PROFILE:スカート/澤部渡


2006年より澤部のソロ・プロジェクト=スカートとして、サポート・メンバーを迎えて活動。2010年にファースト・アルバム『エス・オー・エス』を発表後、2014年作『サイダーの庭』まで計4枚のアルバムをリリース。一方、オノマトペ大臣らと組むトーベヤンソン・ニューヨークで2013年にシングル“ロシアンブルー”を発表、また2014年のマンタ・レイ・バレエの初作にパーカッションで、Negiccoの最新作にアレンジャーとして参加するなど、幅広い活動を行っている。4月6日にはスカートの自主企画ライヴ〈月光密造の夜〉を渋谷O-nestで、4月11日には同企画で初めての沖縄公演を沖縄outputで開催。なお、この初沖縄ライヴを記念して、タワレコ那覇店でライヴ盤『The First Waltz Award』の購入が可能。

【参考動画】スカートの2014年作『サイダーの庭』収録曲“すみか”

 

 

【番外編! 今月のお題候補たち】
残念ながらお題盤にはならなかったものの、ぜひ聴いていただきたい楽曲をTOWERanime新宿の樋口による解説付きで紹介します!

 

VARIOUS ARTISTS プリパラ アイドルソング♪コレクション by SoLaMi SMILE&コスモ&ファルル avex pictures(2015)

現在放送中アニメ「プリパラ」のキャラソン集。2012年に放送を開始した女児向けアニメ「プリティーリズム」の系譜を引き継ぎ、2014年7月より放送されている「プリパラ」に登場するキャラソン集第3弾。なかでも、同作のキャラクター、北条コスモ(CV:山本希望)による“君100%人生”をオススメ。avex音楽チームならではなちょっと懐かしめのJ-Pop感は他のアイドル系アニメでは見られない濃さとアツさを見せてくれます。業界最高峰レヴェルの3DCGチームによる映像と相まったこんなライヴはプリパラでしか見れないハズ!

 

 

新条ひなき&氷上スミレ“Popin' Bubbles”
ゲームセンターにて稼働中の女児向け筐体ゲーム「アイカツ!」2015シリーズ第3弾使用曲(音源未発売)

「THE IDOLM@STER」「ラブライブ!」「Wake Up, Girls!」「プリパラ」など世代を越えて日々勢いを増しているアイドル・アニメ・シーンのなかでダントツの楽曲クォリティーと多彩さを誇る人気タイトル「アイカツ!」発のキャラソン。同曲を手掛けたのは、本作への楽曲提供が初となるミトクラムボン)。「アイカツ!」の世界観との絶妙なマリアージュを見せています。ミトらしさ全開の緻密な音作りが耳に心地良いですね。通常のキャラソンは本編でキャラクターの声を担当している声優自身が歌唱を担当するのに対し、「アイカツ!」では声優とは別にディアステージ発のアイドル・ユニット、STAR☆ANISAIKATSU☆STARS!がヴォーカルを担当しています。リアル世界のアイドルが歌うというアプローチも本作の面白さのひとつ。