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いまニーナ・シモンを引用することの意味―ローリン・ヒルとロバート・グラスパーがプロデュースした豪華トリビュート盤登場

NINA REVISITED...

 ルーツ『...And Then You Shoot Your Cousin』の冒頭で“Theme From Middle Of The Night”がそのまま引用されていたのも思い出されるニーナ・シモンだが、そうでなくてもその〈存在〉を引用することは大きな意味を伴う。彼女のトリビュート作となるとフランス産の好盤『Round Nina』(2014年)も記憶に新しいなか、ここで改めて同趣向の盤が登場する背景に、昨今のブラック・ピープルをとりまく状況や、それに対する〈Black Lives Matter〉ムーヴメントがあることは言うまでもないだろう。かつて教会爆破事件に対して“Mississippi Goddam”(64年)で抗議し、黒人讃歌“(To Be)Young, Gifted And Black”(69年)を残しているニーナは、公民権運動の時代から同胞たちを代弁する闘士でもあった。彼女の功績を単純化すべきではないが、残念ながら現代はその部分こそが求められる時代だということだ。

VARIOUS ARTISTS Nina Revisited... A Tribute To Nina Simone RCA(2015)

 ただ、そうして生まれた『Nina Revisited... A Tribute To Nina Simone』は、絶好調のロバート・グラスパーが久々に前線復帰したミス・ローリン・ヒルと揃ってエグゼクティヴ・プロデューサーを務める点でも注目の一枚となっている。実質的には双方の主導パートを組み合わせた構成になっていて両者の直接的な絡みはないものの、そのオムニバス感が結果的に偉人の魅力を一面的に規定しない結果に繋がったのは収穫だろう。ローリンが制作したのは自身のパフォーマンスとインストを含む6曲。いわゆる正調のジャジーなカヴァーから、ニーナのライヴ音源をネタ使いしたラップ・チューン“I've Got Life(Version)”まで流石の振る舞いで聴かせる。

 一方、グラスパーはニーナの娘リサによるイントロを含む8曲をプロデュース。『Round Nina』にも参加していたグレゴリー・ポーターをはじめ、ジャズミン・サリヴァンメアリーJ・ブライジアリス・スミスが濃厚なカヴァーを披露するなか、ハイライトはコモンレイラ・ハサウェイによるリメイク“We Are Young, Gifted And Black”か。また、唯一サラーム・レミの手掛けたアッシャーの“My Baby Just Cares For Me”が、作中では異質の優美な輝きを発していることにも留意しておきたい。

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