この恐るべきスタンダード感! 圧倒的なビッグ・チューンでEDMシーンを支配する最強兄弟の魅力の根源を、圧巻のアルバムで味わおう!

 問答無用のアンセム“Booyah”(2013年)を筆頭に、数多くのビッグ・チューンで名を馳せるショウテック。ウーター(82年生まれ)とショード(84年生まれ)のジャンセン兄弟から成るこのユニットは、10代初めから楽曲制作に取り組み、2000年代初頭よりリリースを始めている。当初のテクノからハードスタイルへ変遷する過程で頭角を表し、EDMムーヴメントが世界に広まる流れにも呼応して、ここ数年でトップ・アクトとしての地位を不動のものに。そして、今回登場した日本企画盤『Essentials』は、ハードウェルとの“How We Do”(2012年)から、昨年のヒット“Cannonball”や“90s By Nature”、さらには主宰するスキンク発の音源やカーリー・レイ・ジェプセンらのリミックス、そしてヴァッシーを迎えた最新シングル“Satisfied”までを満載した、まさに彼らのキャリアを知るには欠かせない名曲揃いの豪華な一作となっている! ここではオフィシャル・インタヴューを元に、それ以前からの歩みを振り返ってみよう(回答は兄弟共通)。

SHOWTEK Essentials FARM(2015)

だから音楽はやめられないんだよね!

――初期のテクノから徐々にハードなサウンドへと傾倒していった理由は?

 「ハードスタイルへの移行はごく自然なことだった。普通テクノではメロディアスなラインをトラックに盛り込むのは一般的じゃないけど、僕らはメロディーを前面に出したトラックが大好きだったから、自然とハードスタイルをやるようになっていったんだ。結果的に良かったと思ってるよ」

――ハードスタイルと呼ばれるシーンがヨーロッパでなぜここまでブレイクしたのでしょう?

 「ハードスタイルがヨーロッパで流行りはじめた当時は、それまでにないまったく新しいスタイルのジャンルとして注目されていたんだ。当時はトランスやテクノの全盛期だったんだけど、ハードスタイルみたいに強烈なインパクトを持ったものは他になかったように思う。ハードスタイルに魅了された人々の多くは、その力強さに魅力を感じたんだろうね」

――そのなかで徐々にEDMへ向かった理由は?

 「新しいことに挑戦してみたいと常々思っていたから、少しずつではあるけど、いろんなスタイルのダンス・ミュージックを試すようになっていったんだ。ある日を境にハードスタイルをパッタリ止めたというわけではなく、長い年月をかけて自分たちの新しいスタイルを徐々に形成していったのさ。いまも毎日新しいことに取り組んでいるよ」

――2012年に〈Crazy Collabs〉のプロジェクトを始めたきっかけを教えてください。

 「単純にかっこいいと思ったから(笑)。スタジオで違うジャンルのアーティストと一緒にセッションするには最適な企画だと思ってさ。ティエストやハードウェルといった凄いアーティストとのコラボはファンのみんなには意外だったと思うし、彼らと一緒にやれたのは本当に良い経験になったよ。僕たちとコラボしてくれるアーティストがいることは大きな自信に繋がったし、ファンのみんなが喜んでくれたのは本当に嬉しかった。だから音楽はやめられないんだよね!」

――ショウテックの名を全世界に広めた“Booyah”のエピソードを教えて下さい。

 「“Booyah”の大ヒットはまさに寝耳に水だったよ。最初にスタジオで録音した時も確かな手応えを感じたけど、ここまでの大ヒットになるとは夢にも思っていなかった。最初にセットリストに加えてくれたDJはデヴィッド・ゲッタだったね。彼にフィーチャーされてからたくさんのDJが取り上げてくれるようになっていって、それからまた少し経つと、今度はメジャーなラジオ番組のほとんどでこの曲がかかるようになって。たくさんの人に自分の曲を聴いてもらえるのは、このうえなく幸せな気分だったよ」

 

どんな音楽にもオープンでいる

 昨年はゲッタと“Bad”や“No Money No Love”を共作して名声をさらに広げ、一方では大御所ティエストの“The Feeling”に助力してもいた2人。兄弟はオランダのアイントホーフェン出身だが、そのティエストやハードウェルの名を挙げるまでもなく、かの国の才能がEDMシーンを賑わせる状況はまだまだ続いていくことだろう。

――昨年のDJ Magのチャートなどを見るに、現在のダンス・シーンではかつてないほどオランダのアクトが盛り上がっています。その理由は何だと思いますか?

 「何と言ってもその許容量の広さじゃないかな。オランダのシーンでは同業者に対して競争意識を持っているDJはあまりいなくて、昔からお互いに知識を共有し合うことがあたりまえになっているから、積極的に互いを助け合うんだ。世界的に有名なDJも何人かいるけど、僕らみたいな世代のDJにとってラッキーだったのは、そういった偉大な先輩たちが自分の知識や技術を惜しみなく教えてくれたことかな。皆が新しいことを学びながら一緒に成長してこれたから、レヴェルの高いDJが国内にたくさんいるんだと思う。最高の音楽を作るためにはそれがベストなやり方だって、みんなわかっているんだね」

――同時に、今年の〈Ultra〉などを観ているとEDMシーンの次を模索しているアーティストも多く見られました。シーンは循環していくものですが、そうした流れをどのように感じていますか?

 「音楽の一番おもしろいところは、常に進化し続けている点にあるし、音楽シーンってアーティストと一緒に成長しながら刻々とその姿形を変えていくものだと思う。EDMも常に変化し続けていて、それはとても良いことだ。シーンの変化を肯定的に受け入れるのはとても大事なことだと思う」

――オランダのシーンはそういう時流にあまり左右されない印象があるのですが、それはなぜなんでしょうか?

 「それは必ずしも正しい意見とは言えないんじゃないかな。オランダのシーンも当然世界のシーンから影響を受けているし、オランダ出身のEDMのDJたちも少しずつスタイルを変えていっている。オランダは世界のダンス・ミュージック市場をリードし続けている国のひとつだけど、国内のアーティストたちは海外の音楽シーンにも常にアンテナを張っているよ。世界のEDMが変われば、オランダのEDMも変わるってことさ」

――そんななか、あなたたちがいま注目しているサウンドがあれば教えてください。

 「いまは自分たちの作っているようなスタイルの音楽が一番好きかな。だけど、新しい種類の音楽や他のジャンルにも常にオープンでいるように心がけているよ。だから今後どんな音楽を作っていくことになるかは、僕ら自身にもわからない。いまファンのみんなに言えるのは、これからの活動に期待しておいてくれってことかな」