INTERVIEW

秦基博が全曲セルフ・プロデュース&サウンドの隅々まで自身の世界観映し、SSWとして大きな成熟示す新作『青の光景』を語る

秦基博が全曲セルフ・プロデュース&サウンドの隅々まで自身の世界観映し、SSWとして大きな成熟示す新作『青の光景』を語る

価値観の多様化が進んだ世界に染みる、さまざまな〈青〉の光景――自身の美学を貫くシンガー・ソングライターの成熟を映した新作!

 秦基博が、約3年ぶりとなるオリジナル・アルバム『青の光景』をリリースした。記録的なロングセラーとなった“ひまわりの約束”をはじめ、数々のタイアップ曲を収録した今作。しかし、アルバムは単なるヒット曲集ではなく、秦基博のミュージシャンとしての大きな成熟を示す一枚となっている。弾き語りのイメージも強い彼だが、本作では全曲をセルフ・プロデュースで制作。メロディーと歌声だけでなく、サウンドの隅々にまでその世界観が染み渡った内容だ。

 「歪でもいいからとにかく自分の音が立ち上がってるアルバムにしたいと思っていました。作詞と作曲と歌はずっとやってきていることなんで、そこに自分の思いを込めて、表現をソリッドに研ぎ澄ませていくのは大前提の話であって。さらにアレンジもみずから手掛けることで、曲のニュアンスや世界観をより具体的なフレーズや音像として伝えられる。どこを切り取っても〈秦基博〉を聴いてもらえるようになるんじゃないかと思いました」。

秦基博 青の光景 ARIOLA JAPAN(2015)

 アルバムのコンセプトは、タイトルにも掲げられた〈青〉。それも爽やかな青だけではなく、憂鬱や孤独のなかに沈む深い青まで、さまざまなグラデーションが描かれている。

 「青という色のイメージは最初からありました。このアルバムの中では“ダイアローグ・モノローグ”がいちばん古い曲なんですけど、前作の『Signed POP』のツアーを終えてこの曲を作った時点で、青みがかった色のアルバムにしようと思ってたんです。“ひまわりの約束”も、優しい温かさだけでなく、寂しさや悲しさを孕んだ曲になっている。それは『青の光景』という作品全体を通して自分自身がやろうとしてることと通じてると思います。〈青〉という色が持ってる物悲しさ、生きていく悲哀、そこを含めて描けたらいいなと思ってました」。

 メロウな歌声がアルバムの幕開けを飾る“嘘”、深い海に沈んでいくような“ディープブルー”、アコギとパーカッションが気持ち良いファンク・ナンバー“Fast Life”、おおらかで包容力のある“Sally”など、ヴァラエティーに富んだ曲調でさまざまな〈青〉の色彩を描く本作。サウンドのテイストと歌詞のテーマも、曲ごとに密接に結び付いている。

 「今回は初期衝動がそのまま、ニュアンスの隅々まで形になっている。自分の世界を広げながらひとつひとつ進めていく。そういうやり方ができたと思います」。

 そして、こうした秦の美学は、彼が〈いま〉という時代をどう見ているか、ということの象徴でもあるようだ。

 「アルバム全体を通して言ってることでもあるんですけど、いまの時代は何が嘘で何が本当かわからなくなってきていると思うんです。情報が多くなって、価値観も多様になってきている。それでいいんだっていうことを誰もがわかってる一方で、〈こうじゃなきゃいけない〉というものもなくなっている。だからこそ、僕自身も〈これが自分の表現したい音楽なんだ〉ということを明確に提示しなきゃいけないと思うんです。音楽にしても、ジャンルも山ほどあるし、細分化されている。どんな音楽もすぐに聴ける。だからこそ、表現する側は価値観をハッキリと見せなければいけない。そういうことは考えますね」。

 歌を通して、〈いま〉という時代と、そこを生きるひとりの男の美学を丁寧に描き出したアルバム。とても深い聴き応えを持った一枚だ。

 


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ここでは秦基博の作品を振り返ります。インディーでの活動を経て2006年にシングル“シンクロ”でメジャー・デビューした彼は、2007年3月に同曲を含むミニ・アルバム『僕らをつなぐもの』(ARIOLA JAPAN)を発表。ここで早くも全曲セルフ・プロデュースに挑みます。同年9月には初フル作『コントラスト』(同)で初のオリコンTOP10入りを果たし、2008年の2作目『ALRIGHT』(同)では『青の光景』でも活躍する鈴木正人のプロデュース曲を初収録。2010年には“朝が来る前に”“アイ”などの人気曲を収めた3作目『Documentary』(同)を発表します。その後も“水無月”“グッバイ・アイザック”とヒットを立て続け、それらを含む2013年の4作目『Signed POP』(同)では楽曲ごとに多彩なアレンジャーを迎えてサウンドの幅を広げました。 *bounce編集部

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