INTERVIEW

Suchmos、スケール感あるアンセムと現代的ミクスチャー・サウンドに向き合った新EP『MINT CONDITION』を語る

Suchmos、スケール感あるアンセムと現代的ミクスチャー・サウンドに向き合った新EP『MINT CONDITION』を語る

〈古きをたずねて新しきを知る〉というスタンスで今回6人が向き合ったのは、ロックスター感を湛えたアンセムと、現代的なミクスチャー・サウンド。その堂々たる響きは、より広い場所へ届きはじめていて……

俺たちに必要なものは

 昨年4月にリリースされたファーストEP『Essence』から始まったSuchmosの快進撃は、アルバム『THE BAY』とセカンドEP『LOVE&VICE』を経て、加速度的に進んでいる。そして、そのグルーヴに宿るストリート感覚とレベル・スピリットに貫かれたロックのダイナミズム、ジャンルを軽やかに横断する軽妙なフットワークが一体となった6人のバンド・アンサンブルは、この夏、さらなる進化を遂げた。〈古きをたずねて新しきを知る〉というバンドのスタンスを、中古レコードの盤質〈新品同様〉を意味するタイトル『MINT CONDITION』に凝縮させた新作EPは、彼らの胸の内で生まれたばかりの感情が鮮やかに響く、そんな作品だ。

Suchmos MINT CONDITION SPACE SHOWER(2016)

 「イギリスだったらオアシス、アメリカだったらディアンジェロのような、ものすごいパフォーマンスをするライヴ・アクトを観てきて、俺たちもお客さんと一緒になってヴァイブスを生み出す、めちゃくちゃテンションが高いライヴをしたいなとずっと思っていたんです。ただ、現在のメンバーが揃って半年しか経っていなかったこともあって、去年やった『THE BAY』のリリース記念ライヴは自分たちにとって満足できるものではなかった。じゃあ、そこで最高のライヴをやるためにはどうすればいいのか。いまの俺たちに必要なのは、〈Suchmosのアンセム〉だなって思ったんです」(KCEE、DJ)。

 「その時期に観ていたのは、ギャラガー兄弟がサポーターを務める地元のサッカー・クラブのスタジアムでやったオアシスのライヴDVD『Live At City Of Manchester Stadium』なんですけど、地元への凱旋感やホーム感がハンパなくて。俺らもバンドがデカくなるにつれて、ホーム戦に向き合うスタンスがより重要になっていくだろうし、曲作りの段階からスケールのデカい楽曲世界と、俺たち6人のチームと会場に駆け付けてくれたオーディエンスを描いたリリックをイメージしながら、1曲目の“MINT”を作り上げていったんです」(YONCE、ヴォーカル)。

 その曲作りは、KCEEがコード進行のループと転調を含んだ曲のアイデアをギターで弾き語るなか、YONCEが鼻歌でメロディーを歌い、歌詞を付けていくという極めてオーソドックスかつシンプルなもの。そこから生まれた力強い歌と仲間に向けたメッセージが、ミッドテンポのグルーヴに乗って真っ直ぐに聴き手へと届けられる“MINT”は、まさに堂々たる一曲だ。

 「〈堂々とした、ロックスター然としたアーティスト〉という意味で、自分が影響を受けたのはカート・コバーンなんですよ。中学生の時、ニルヴァーナのリリックを読んで、〈この人、めっちゃ病んでて大変だな〉って思ったんですけど、そこに込められたやりきれない思いには大いに刺激を受けたし、それだけじゃなく、姿勢を正されたり、反面教師として、いまでも聴き入ってしまうんです」(YONCE)。

 「ロックスターというと、自分はジャミロクワイジェイ・ケイかな。彼はデビュー作の時点で環境問題のことを正面から歌っていますけど、それでいて、排気ガスがすごいスーパーカーに乗ってる(笑)。矛盾はしているんですけど、〈金が入ったから良い車を買った。でも、俺は変わらず訴え続けるぜ〉っていう嘘のないスタンスが人間らしくてグッとくるし、歌いたいことを好きに歌うのがアーティストだと思うんです。同じことはYONCEにも言えるんじゃないかな」(KCEE)。


ミクスチャーの進化

 そして2曲目は、アマチュアの未成熟な部分がなぜかもてはやされる世の風潮に一石を投じる“DUMBO”。ストレートなロック・ナンバーとしてライヴの現場をヒートアップさせている楽曲を、ここでは生演奏と打ち込み、シンセ・ベースを組み合わせたクロスオーヴァーなアレンジへと昇華している。

 「この手法は、ゴリラズビースティ・ボーイズマルーン5なんかが使っていますよね。いまの日本では、ビートメイカーはビートメイカー、バンドはバンドって感じで分かれてしまっていて、あまり用いられていませんけど、“DUMBO”では生と打ち込みが同居し得るものなんだということを聴かせたかったし、〈ミクスチャー〉という発想もレッド・ホット・チリ・ペッパーズレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの頃からさらに進化しているので、俺らがこの曲でそれを形にしてみようと思ったんです」(YONCE)。

 手持ちのカードから切り札を次々に切る彼ら。その気前のいい札捌きは、バンドの充実ぶりを如実に物語っている。

 「3曲目の“JET COAST”は、『THE BAY』のリード・トラック“YMM”、今年1月に出したEP『LOVE&VICE』に収録の“STAY TUNE”に続くSuchmosの得意玉、その最新形です。作っていた別の曲をボツにして、そのサビのメロディーだけ活かして、別の曲として構築し直した一曲ですね」(YONCE)。

 「スピード感があるこういう曲にはHSU(ベース)のリリックがめちゃくちゃ気持ち良くハマるし、YONCEが書くアンセムとは異なる彩りがバンドを豊かにしてくれるんですよね」(KCEE)。

 「あと、ラストを締め括る“S.G.S.3”は〈一発録りをやってみた〉シリーズ。バンドとして舐められないように、プレイヤーとしての力量を披露して、最後にリスナーの胸ぐらを掴むような、そんな曲です(笑)」(YONCE)。

 メロディーは洗練を極め、そして、グルーヴはスムースに。しかし、それだけでは終わらない血が沸き立つようなソウルの圧倒的な熱を、全国各地のリスナーに広く伝播しつつある2016年のSuchmos。今年後半以降の動きも期待を軽々と越えてくるはずだ。

 「いまのSuchmosのライヴは、若い子もいれば、年配の方もいる幅広いお客さんに支えられていて、最前列がいちばん若くて、リアクションも激しくて、いちばん後ろがお酒片手に、スロウなグルーヴで揺れてる最年長組なんですよ。俺たち自身は、格好良いと思う音楽をただやってるだけなんですけど、老若男女が集う光景がホント嬉しいんですよね。誰からも愛されるバンド――音楽はそうあるべきだと思うし、そういう理想的な状況が広がる様は美しいなって思いますね」(KCEE)。

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