INTERVIEW

ビル・フリゼールがもたらす新しい何か―自身と共に育った映画・TV音楽取り上げた『When You Wish Upon A Star』を語る

(C)Monica Frisell
 

共に生きた映画音楽に新しい風を吹かせる

 ギタリスト、ビル・フリゼールの『星に願いを』は、主に50~60年代の映画やTVの音楽を取り上げたアルバムだ。ビルは「映画やTVに想像力を刺激されて育った」世代であり、「どの曲にも個人的な思い出とつながりがある。初めてその映画を観て、その音楽を聴いたときに何を感じて、何が起こったかを覚えている」曲が選ばれた。

BILL FRISELL When You Wish Upon A Star Okeh/ソニー(2016)

 「『アラバマ物語』は、家族みんなで車に乗って劇場へ行った。何の映画か知らずに観て、驚いて感動した。公民権運動期に作られた映画だったからね。『007は二度死ぬ』は、車の免許を取って初めて女の子を乗せて、デートで観に行ったんだ」。

 自分の育った時代の音楽が題材なのは、前作『ギター・イン・ザ・スペース・エイジ』とも共通する。

 「音楽にとてもわくわくさせられた時代だったね。その頃に聴いた音楽の印象は強烈で、それまでになかったまったく新しいものと感じた。あれから50年以上経って、今の僕がやろうとしているのは、「こんなのは聴いたことない、まったく新しい」と当時受けた衝撃を思い出し、その感覚をとらえることだ。だから、過去を振り返っているけど、前を向いてもいるんだ」

 映画音楽はジャンルを超えた音楽でもある。ジャズ、即興からフォーク、カントリーまでを呑み込む独自のサウンドを追及してきたビルには格好の題材だ。

 「映画音楽には何の境界線もないと感じている。そこが大好きなところだ。ベートーヴェンみたいな瞬間もあれば、突然エレクトリック・ギターが聞こえてきて、普通だったら一緒に聴けない組み合わせのサウンドだったりする。映画音楽の作曲家はすごく実験的なことも試したね。『サイコ』のバーナード・ハーマンはTV番組『トワイライト・ゾーン』の音楽をたくさん書いたけど、電子楽器とアコースティック楽器の変わった組み合わせで、おもしろいサウンドを作り出した」

 オーケストラが用いられることの多い映画音楽を、小編成のコンボに置き換えるにあたって、「そんなにアレンジをしているわけじゃない」という。

 「元の音楽にできるかぎり近いもの、オーケストラの縮小版というか、単純化したパートを書いて、そこからは自由にやってもらった。だから、即興もたっぷりある。変化があるとすれば、それは僕らがどう解釈するかなんだ。それぞれが自分のサウンドを持っているから、それが新しい何かをもたらせばいいなと考えた。全員が長い付き合いでお互いを良く知っているから、指示をすることもあまりない。最初はうまくいくか心配するんだけど、いったん演奏を始めると魔法が生まれる。音楽が自ら進んでいく。そういったことが頻繁に起こる。音楽が僕らを連れて行ってくれるんだ」

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