〈現代最高峰のジャズギタリスト〉の呼び声も高いジュリアン・ラージ。10代でゲイリー・バートンのグループに参加したのをはじめ、チャールス・ロイドやジョン・ゾーンらの大物と共演を重ねる一方で、ソロとしてのキャリアも確実に積み重ねてきた。ジャズの伝統に加え、ブルースやカントリーなど古いアメリカンミュージックからの影響も感じさせるスタイルは幅広い音楽ファンから支持されている。

2021年には名門ブルーノート・レコードから、ホルヘ・ローダー(ベース)、デイヴ・キング(ドラム)とのトリオでアルバム『Squint』をリリース。昨年はそのトリオにビル・フリゼールを迎えた注目作『View With A Room』を、そして今年は、同じ日のセッションからの未発表曲を集めた『The Layers』を発表した。そしてこのたび、『View With A Room』と『The Layers』をカップリングし、未発表テイクも追加したコンプリート盤が登場。聴けば聴くほど2枚のアルバムの方向性の違いが浮き彫りになる今作について、ライブのために来日したジュリアン・ラージ本人に話を聞いた。

JULIAN LAGE 『ヴュー・ウィズ・ア・ルーム/ザ・レイヤーズ(来日記念盤)』 Blue Note/ユニバーサル(2023)

 

ブルーノートのプレッシャーと手ごたえ

――『View With A Room』は『Squint』に続いてブルーノート・レコードからの2作目になります。改めて伺いますが、ブルーノートに移籍して制作環境は変わりましたか?

「大きく変わったよ。僕も、多くのジャズプレイヤーやジャズファンと同じように、ブルーノート・レコードのアルバムをたくさん聴いて育ったのだけど、どの作品にもいえるのは、ジャズミュージシャンたちによる即興のアンサンブルが基本にあるところだよね。そして、そこにはものすごい緊迫感がある。まさに、いまこの瞬間に起こっている音楽をリアルに収めたエネルギーを感じるんだ。

僕たちもそのようなアルバムを作らなきゃ、と気を引き締めて制作に臨んだよ。その結果、いい意味でプレッシャーを感じながら作ることができたし、ブルーノートでのアルバムは、それまで以上にいいアルバムになっている手ごたえを感じているよ」

――あなたの作品はどれも文学作品、短編集を読んでいるような味わい深さがあって、楽曲というひとつひとつのストーリーをギュッと凝縮したような密度の濃さが大きな魅力だと思います。

「そのように感じてもらえるととても嬉しいな。僕たちの曲はどれもそれほど長くはないけれど、それぞれの曲が語るストーリーはより長大なものなんだ。だから、まさに短編集といえると思うよ」

 

ビル・フリゼールとの友情で新次元へ

――改めて今作のコンセプトを教えてください。

「前作『Squint』と比較すると、『Squint』では1960年代初期のような、ちょっと古いジャズのライブパフォーマンスを感じさせる空気感を目指したところがあったんだ。今回『View With A Room』と『The Layers』のセッションでは、レコーディングの手法は同じだけれど、よりカラフルでハーモニー的にも豊かなものにしたかった。

その試みは成功させることができたし、さっき言ったブルーノートらしさもより大きく出せたと思う。そこにはビル・フリゼールが参加してくれたことが大きく貢献しているよ。特にオーケストレーションの部分でね」

――ビル・フリゼールとはチャールス・ロイドやジョン・ゾーンのアルバムで共演したり、ギターデュオでツアーも行ったりしている間柄ですが、今作のレコーディングに参加してもらった理由を教えてください。

「おっしゃるとおり、ビルとはさまざまな機会で共演していて、深い信頼関係を築くことができている。彼は僕のことを本当によく知っているんだ。だから今回、今まで築き上げてきた自分の音楽性をさらに広げて、新しい次元にまで引き上げたいと思ったときに、彼にサポートしてもらいたい、と考えたのは自然の流れだったよ。

また、僕とビルが一緒にたくさんのライブを行っていることを、ライブを観たことのないファンは知らないかもしれないよね。今回のレコーディングで、彼らに改めて僕たちの友情を紹介したい、という気持ちもあったんだ」

――ビル・フリゼールが入ることで、今作では従来のトリオのサウンドとは一線を画する、広がりのある音世界が楽しめます。加えて、テーマとインプロビゼーションがシームレスに展開する、曲のまとまりというか一体感が、さらに研ぎ澄まされたような気がします。

「そう言ってくれてありがとう! 僕たちが目指したのはまさにそこだったんだ。僕は、曲を書くという行為は、自分が好きなことや愛していることを改めて見出す作業だと考えていて、今回のレコーディングでは、さらに多くのことを発見してパッケージすることができたよ。もちろん、曲についての理解は時間の経過とともに深まって、ライブはその過程がリアルタイムに体験できる場だといえる。

今作のセッションでは、30曲ぐらいを用意して、『View With A Room』と『The Layers』で16曲が残ったわけだけど、これらの曲は極めて短い期間でレコーディングできたから、まとまりや一体感があるのはある意味自然なことかもしれないね」