INTERVIEW

ケイタイモに何が起こったのか? 盟友・村田シゲと語る、両極端なルーツ反映した2つの新バンドが示すリラックスした現在地

ikanimo『ikanimo』/HEAVENLY BOYS『HEAVENLY BOYS IN TOWN ~ヘヴンリーボーイズがやって来た~』

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  • 2016.12.05
(左から)ケイタイモ、村田シゲ
撮影協力:TiSSUE

 

ケイタイモという音楽家の全体像を捉えようとするのは、非常に困難な作業だ。90年代にMONG HANGのベーシストとしてキャリアをスタートさせるも、2003年にBEAT CRUSADERS(以下、ビークル)にキーボードで加入。2010年のビークル散会後は大編成のプログレ楽団、WUJA BIN BINで活躍しつつ、ATOM ON SPHEREMUSIC FROM THE MARSにも参加するなど、その活動は多岐に及ぶ。先日リリースされた、渋さ知らズ高橋保行片想い伴瀬朝彦が率いるCooking Songsの初作『Cooking Songs』にもベーシストとして参加していた。

そんなケイタイモが新たに結成した2つのユニット、ikanimoHEAVENLY BOYSが11月にそれぞれの初作を連続リリースした。松井泉YOUR SONG IS GOODのサポートなど)、野村卓史グッドラックヘイワ)とのアコースティック編成で、ボサノヴァとフォークを軸にモンゴルの歌唱法・ホーミーを絡めたikanimo。そして、元ビークルのカトウタロウSCAFULL KINGNARI、構成作家の小林知之を従え、キメキメな装いと共に80年代風ポップに取り組んだHEAVENLY BOYS。これら2バンドは、音楽性こそ180度異なるものの、どちらもケイタイモがベースやキーボードを弾かず、作曲に加えて歌を担当していることが共通点だ。果たして、一体彼に何が起こったのだろうか?

今回はそれを探るべく、旧知の仲である村田シゲ□□□CUBISMO GRAFICO FIVE、元NATSUMEN)を招き、対談を実施。ルーツに立ち返りつつ、柔軟な活動を楽しんでいるケイタイモの現在地が浮かび上がってきた。

ikanimo ikanimo 惑/Natural Hi-Tech(2016)

HEAVENLY BOYS HEAVENLY BOYS IN TOWN ~ヘヴンリーボーイズがやって来た~ 惑/Natural Hi-Tech(2016)

 

40歳でギターを弾き語ってみたら、ちょっと見い出しちゃって

――お二人はいつ頃からのお知り合いですか?

村田シゲ「もう15年近く前になるのかな? 当時僕はメレンゲを手伝っていて、その当時の彼らのプロデューサーを務めていたのがAxSxENATSUMEN元BOaT)くんだったんですよ。そうした繋がりもあって、AxSxEくんが2002年頃に下北沢CLUB QUEでBOaT復活の2デイズ・ライヴをやったときに、片方の1日で俺が少しベースを弾いたんです。そこで〈NATSUMENもやらへんか?〉という話になったような。ケイタくんや当時の秋葉原CLUB GOODMAN界隈のみんなともそこで一気に出会った記憶があります。でも、このあたりはうろ覚えなので、知っている方は情報求む(笑)」

※AxSxEが90年代後半にやっていた男女混合のロック・バンド。2001年に解散

BOaTの99年作『SOUL.THRASH.TRAIN』収録曲“KILL/KILL”
 

――ケイタイモさんはMONG HANGをやっていた頃ですよね。シゲさんから見た当時のケイタイモさんの印象は?

シゲ「バンドも変わっていたし、とりあえず〈スペーシーな人〉という印象でした。音楽的には一般的なポップスより変態な印象でしたけど、喋ると凄く常識人というイメージ(笑)」

ケイタイモ「それ、すげえ言われた。意外とつまんないねって(笑)」

シゲ「まあ、最初はグッドマン界隈ってアンダーグラウンド・ミュージックの集いに見えたんだけど、いざ関わってみるとそんなに内々には向いていない印象だったな。当時〈お前らは何をルーツに音楽をやっているんだ?〉と言いたくなる、似たようなバンドがたくさんいるなかで、グッドマン周辺のみんなは音楽的な知識が凄くあるのもわかったし、かつ全員がポップだったんですよ。妙なキャッチーさがあったし、こんな音楽が日本にあるんだと思った。特にケイタくんに関してはそう思った気がします」

ケイタイモ「昔からポップなものを作りたいという欲求は持っていたんだけど、いま当時の音源を聴き返してみると〈これじゃ売れねえよ〉と思うよね。当時の高円寺20000V界隈――KIRIHITOグラインド・オーケストラを見ていて、ああいう音楽性でも食って行けるんじゃないかと思っていたんです。やっぱり、あの頃はちょっと突っ張っていたから、メインストリームに寄せると負け、みたいな。ディスってる位置にいたいという気持ちもあったと思うしね(笑)」

※元ボアダムス吉川豊人花電車楯川陽二郎ら関西アンダーグラウンドの凄腕プレイヤーが集まったバンド。カルト的な人気を誇った

――そういう考えは、ビークルに参加して、実際にメインストリームの場を経験することで変わってきた?

ケイタイモ「そう言葉にするとカッコイイんですけど、結局メインストリームでやっている人と知り合ってみると、みんな多かれ少なかれ苦労しているし、音楽に対しては真摯に向き合っている。基本オタクな連中が多いし、コロッと好きになっちゃったんだよね(笑)。TVというフィルターを外して、人間として向き合うと、勝手に決めつけていただけだったんだなと思いました」

――ビークルの解散後は、WUJA BIN BINを軸としつつも、MUSIC FROM THE MARSやATOM ON SPHEREなどにも参加して、さらに今回は2つのバンドで同時リリースをしたわけですが、近年はいろんなプロジェクトでの活動を楽しんでいるのでしょうか?

ケイタイモ「最近そうなった感じですね。WUJA BIN BINは人数が多いし、忙しいメンバーも多いから、フットワークがどうしても重いんです。でも、立ち止まらずに何かをやっていたい自分がいて、あるときたまたまSCAFULL KINGのようちゃん(4106)に〈歌ってみたら?〉と、彼のやっている〈俺たち、ようキン族。〉というイヴェントに誘われて。それが40歳になるくらいの時期だったんだけど、そこで2曲歌ったのがいまに至るきっかけ。40歳を過ぎてからいきなりギターを持って歌うのは、ギャグみたいな感じじゃない? 実際、最初はそんなノリだったんだけど、やってみたらちょっと見い出しちゃったんだよね」

シゲ「〈ようキン族。〉は基本カヴァー・イヴェントでしょ? そのときは何を歌ったの?」

ケイタイモ「あ、でもオリジナルを作って行った」

シゲ「凄いな(笑)。そういうところは譲らないね」

WUJA BIN BINの2016年のライヴ映像
 

――今回の2バンドではどちらもベースを弾いていないわけですが、以前までは〈ベーシスト〉という意識が強かったんですか?

シゲ「ベーシストって意識あるの? ないでしょ?」

ケイタイモ「うーん……そんなにはないかも」

シゲ「この人は自分のことをベーシストだとあんまり思ってない気がするし、そういうイメージはずっとある。今回の2つでは、たまたまベースを弾いてないけど、これまでのバンドにしても、自分で書いた曲のベースを弾ける奴が他にいなかったから結果的にやっていたんだと思うんです。MUSIC FROM THE MARSとかを手伝い出したのは、ミュージシャンとしてというよりも、友達だからじゃない?」

ケイタイモ「(ベーシストであることには)あんまりこだわりがないかもね」

シゲ「でも、ベースに関してはなくても、作曲に関してはあると思うんです。そこは変わらずで、今回はたまたま担当がベースではなく歌になったという。そういうことなんじゃないかな」

MUSIC FROM THE MARSの2016年作『After Midnight』のトレイラー映像
 

――では、それぞれのバンドについて訊いていくと、ikanimoはさっきおっしゃった弾き語りの延長線上で結成されたのでしょうか?

ケイタイモ「そういう感じですね。その弾き語りのちょっと後にChris Van CornellのイヴェントにDJで呼ばれたんですけど、そこに松井(泉/パーカッション、コーラス)がいたから、いまこういうことをやりたいと思っているという話をして。最初は松井と2人でやろうと思ったんだけど、自分のギターにそこまで自信がなかったから、アコーディオン的なものが欲しいと思って、WUJA BIN BINの(野村)卓史(アコーディオン、トイピアノ、ピアニカ、コーラス)くんに入ってもらった」

――プロフィールには〈ブラジルのシンガー・ソングライターの巨人達が、NHK「みんなのうた」的 ヴェクトルで作曲したらこんな感じなんじゃなかろうか〉というコンセプトがあったとありますね。

ケイタイモ「ブラジル的なアプローチでのプレイを勉強したいと思ったことが、ギターをやりはじめたきっかけだったので、必然的にそういう感じになりました。あと自分の音楽の原体験として、『みんなのうた』で矢野顕子が歌っていた“わたしのにゃんこ”という曲の存在がすごく大きいんです。ビークルをやっていたときに、〈ROCK IN JAPAN〉の楽屋エリアに矢野顕子が現れて、〈とうとう来た!〉と。〈BEAT CRUSADERSというバンドでキーボードを弾いているケイタイモと申します。“わたしのにゃんこ”を聴いて、音楽を始めたようなものなんです〉と興奮気味に熱い想いを伝えたら、〈どうでもいいけど、あんたその髪型どうしたの?〉と、全然取り合ってもらえなくて(笑)」

――矢野さんらしいエピソードですね(笑)。あとikanimoの音楽性でもうひとつキーになっているのが、ホーミーですよね。

ケイタイモ「ホーミーはMONG HANGの頃からやっていたんです。もう十何年も前ですけど、BoATのシングルに1曲だけ入れたこともあって、そのときのプロデューサーだったアイゴン(會田茂一)さんは事あるごとに凄かったと言ってくれるんですけど、それ以外は特別取り沙汰されることもなく(笑)。なので、どこか発表の場が欲しいなというのはずっと思っていました。WUJA BIN BINだと音を詰め込みすぎだけど、ikanimoだったら雰囲気的にもバッチリだなと。ただ、ホーミーは地声を出して、同時に倍音を出すんですけど、あんまり認知されてないから、知らないと倍音のほうに耳がいかなくて、イマイチ伝わりづらいんですよ。なので、こうして音源にしちゃえば、ちゃんと凄さが伝えられると思います」

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