INTERVIEW

LUCKY TAPESとSugar’s Campaignが2016年を総括! 〈ミキキの平日〉開催記念、正反対なポップス観炙り出した特別座談会

意味があるのは〈いま〉しかない!?

――では、2016年の締めとして、皆さんがそれぞれ聴いていた音楽を教えてもらいたいのですが。

Avec Avec「僕はストーンズ・スロウからリリースされたマイルド・ハイ・クラブっすね。あとはNV

――ああ、ロシアのグライムスという触れ込みの。

Avec Avec「単純に聴いたら80年代のシミュレーションなんですけど、アートワークも含めて美意識があって。すごく好きでしたね。で、日本やとOGRE YOU ASSHOLEの新譜(『ハンドルを放す前に』)がめっちゃ良かったすね。オウガらしさもあるし、僕はサイケ・ポップが好きなんですけど、その感じもすごくするから」

NVの2016年作『Binasu』収録曲“Kata”
OGRE YOU ASSHOLE『ハンドルを放す前に』収録曲“なくした”
 

Seiho「おもしろいな。俺はブラッド・オレンジと……」

Avec Avec「あ、そうよね。Seihoは絶対そっち系だと思ったから、僕は役割として(別のものを)選んでみた」

Seihoチャンス・ザ・ラッパーノーネームあたりも良かったんですけど、どちらかというとブラッド・オレンジやジェイムスズーですかね。さっき話した自分のいた場所に帰るという話と繋がるんですが、チャンスやノーネームはルーツなんですね。つまり、自分たちが聴いてきたものに帰っていくというか。でも、僕が好きなブラッド・オレンジやジェイムスズーは帰っていく場所がないんですよ」

Avec Avec「あー、あのサッド感はそういうことか」

Seiho「ブラッド・オレンジの作品も、住んでいたアパートが火事になったことがテーマの一つになっているしね。そういう帰る場所のない奴こそがフィクションを作り出せる。自分の頭の中に広がった自分の帰る場所を、あの2人のアルバムから感じたんです。そこにグッときました」

Avec Avec「めっちゃいい話やな!」

Seiho「これ、年末ずっと言うから(笑)」

ブラッド・オレンジの2016年作『Freetown Sound』収録曲“Augustine”
ジェイムスズーの2016年作『Fool』収録曲“Flu” 

 

――LUCKY TAPESの皆さんはどうですか?

健介「今年は新譜を全然チェックしていなくて。どんどん好きなものが昔のものになっているんですよね」

――昔の音楽のほうに興味が向かっていたのには何か理由があるんですか?

健介「自分の研究というか探究というか、どういうものを自分が今後やっていきたいのかに意識が向いていたんです。もっと自分の引き出しを幅広く持ちたいというか。もしくは自分がもともと好きなものをもっと深く掘ってみたりとか」

――そのなかで新たに発見したおもしろいものはありましたか?

健介スカイラークですね。ちょっとオーケストラ、ビッグバンド的なサウンドという面で、自分たちの音楽にも反映できるんじゃないかと思いました」

「自分も今年は、制作やツアーでほとんど新譜を聴けていないのですが、そのなかでもレモン・ツィッグスホイットニーとか、フォクシジェンジョナサン・ラドーがプロデュースしているデュオはよく聴きました」

――あの音作りはすごいですよね。新しい感じもありつつ懐かしい。

バロック・ポップですよね、サイケだし」

ホイットニーの2016年作『Light Upon The Lake』収録曲“Golden Days”
レモン・ツイッグスの2016年作『Do Hollywood』収録曲“These Words”
 

――田口さんはどうですか?

田口「僕はベースのことしか考えてなかったですね(笑)。今年は特にプレイヤーとして技術を磨くことに注力していたので。それでやっぱり僕も昔の音楽を。ベースが格好良いものを掘ったり」

――何か参考になったものはありましたか?

田口「70年代のギル・スコット・ヘロンにはハマりましたね。いまさら聴いたんですけど。そんな難しいことはしてないのに、シンプルな音でカッコイイ」

ギル・スコット・ヘロンの70年作『Small Talk At 125th And Lenox』収録曲“The Revolution Will Not Be Televised”
 

――LUCKY TAPESの方々は、新作というよりは過去のものを掘っていく感じだったんですね。シュガーズのお2人が好んで聴くのは新作ものがメインですか?

Seiho「これは阿木譲さんの影響でもあるけど、僕は新譜以外あまり意味がないと思っているので。音楽は新聞と一緒で、過去の記事を見たところでいまは何もわからんというか。日々変わっていく世界情勢を知るためには、新しい新聞を読んだほうがいいという考えが僕は強いですね」

※1947年生まれ、大阪府在住の音楽評論家/編集者/DJ/プロデューサー。Seihoの2016年作『Collapse』のライナーノーツに両者の対談記事が掲載された

Avec Avec「ずっとそうやもんな」

Seiho「絶対に新譜しか買わへん。まあ戻るときは戻るし、ジャズも好きやから昔のものも聴きますけど、でも意味があるのはいましかないということです」

Avec Avec「僕は昔の音楽もめっちゃ聴きます。でも研究というよりは、自分のフェチ的に聴く感じですね。やっぱりポール・マッカートニーがすごく好きなので、ああいうポップスを。ポール・マッカートニー・ポップスっていろいろあるじゃないですか」

――トッド・ラングレンELOとか。

Avec Avec「そうです、そうです。あの感じにミスチルも入るし、杉真理KANあたりから広がっていくみたいな(笑)。ユニコーンもそうですよね。最近のインディー・バンドでもそういうのが受け継がれているのを知ると、いいなあ、繋がってるなと思います」

――でも、最近あまりいなくないですか。

Avec Avec「そうなんですよ。今年出たのだとエクスプローラーズ・クラブの『Together』というアルバムがとても好きでした」

エクスプローラーズ・クラブの2016年作『Together』収録曲“California's Callin' Ya”
 

Seiho「あれもめっちゃ良かったけどな、去年の年末あたりに言ってたやつ」

Avec Avecヤング・ガン・シルヴァー・フォックスね、最高! アルバムを出したのは2015年で、今年もミュージック・ビデオを公開してましたけど、ポール的なポップスではないけど僕の好きなウェスト・コースト・ロックのいい部分を全部網羅してるような感じ。イーグルスっぽくもあれば、スティーリー・ダンっぽくもあって、ちょっとカントリーも入っていて……もうわかってる!みたいな(笑)」

ヤング・ガン・シルヴァー・フォックスの2015年作『West End Coast』収録曲“Emilia”
 

――では最後に、2017年のテーマや抱負を教えてください。

健介「今年は全国ツアーをやって、エンターテイメントとはどういうことか、お客さんとの距離感みたいなものを掴むことができた気がするんです。これまでは演奏することに必死だったけど、ツアーを経験することでだいぶ慣れてきて、視野が広くなりました。お客さんの表情もよく見るようになったし。なのでお客さんを楽しませるということを、音楽性も含めてもっと高めていきたいなと」

「ラッキーの世界観が今年出したセカンドでようやく見えてきて、ライヴでもそれを表現できるようになってきたので、来年はもっと大きな意味でラッキーとはこういうものだというのを見せていけたらいいなと思います」

田口「僕もそんな感じですが、ツアーを終えてチーム感が強まったので、もっとこのチームでお客さんを踊らせたいですね」

――シュガーズのお2人は?

Avec Avec「距離感がテーマかな、僕のなかでは。距離感が一番大事なんじゃないかな」

――人間と人間の?

Avec Avec「というより、作品と自分でも、作品と作品でもいいんですけど」

Seiho「それが、バランスやったのに距離感になったと」

Avec Avec「バランスを取るということじゃないんですよ。それはめっちゃ遠くても近くてもいいけど、その距離感をちゃんと知って、守る。それがブレてたらそれはブレてることになっちゃうと。フィクションと現実の距離感みたいな」

Seiho「僕は最近、自分が女子高生だった頃を思い出していろいろ考えてたんですけど」

――女子高生ですか、なるほど。

Seiho「あの当時は恋愛のことしか考えてなかったよね、みたいな。それを大事にしてこうと。ちゃんと思い出してこうと。ソロはまた違うんですよ、シュガーズとのカウンターで存在してるから。ソロのほうがもっと遠くに行くかなと。シュガーズはもう1回自分たちがやりたかったことに戻る時期だという気がします。来年は楽しく2人で考える。楽しくいきたいですね」

Avec Avec「楽しく、明るく(笑)」

終演後、両バンドのメンバー陣で
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