INTERVIEW

メインストリームから逃げずに〈オルタナティヴ〉をめざす―Age Factory × パノラマパナマタウン × PELICAN FANCLUBが迷いなき野心を語る

〈GREAT TRIANGLE TOUR 2017〉

(左から)清水エイスケ、エンドウアンリ、岩渕想太

 

Age FactoryパノラマパナマタウンPELICAN FANCLUBの3組による全国6都市ツアー〈GREAT TRIANGLE TOUR 2017〉が、2月15日(水)の大阪・心斎橋Live House Pangea公演を皮切りにスタートする。

Age Factoryは奈良出身のスリー・ピース・バンドで、2016年にLOSTAGE五味岳久をプロデューサーに迎えたファースト・アルバム『LOVE』をリリース。90年代のUSオルタナに加え、eastern youthbloodthirsty butchersといった国内エモ・パンク勢からの影響が色濃い、生々しい歌声と圧倒的なライヴ・パフォーマンスが話題を集めている。そして、神戸を拠点に活動するパノラマパナマタウンは、2015年に〈RO69JACK〉や〈MASH A&R〉といった人気バンドへの登竜門となっているオーディション企画でグランプリを獲得。ストロークスをバックに向井秀徳がラップを繰り出しているかのような、摩訶不思議なサウンドが特徴だ。最後に、PELICAN FANCLUBはコクトー・ツインズエリザベス・フレイザーに影響を受けたという中性的でありながらも力強いヴォーカル・スタイルがとにかく印象的。シューゲイザーからラウド・ロックまで採り入れた幅広いサウンドが、他のインディー・ギター・バンドとは一線を画している。

メンバー全員が20代前半という同世代の3バンドがバトルを繰り広げる本ツアーでは、いったいどんなケミストリーが生まれるのだろうか。今回はそれぞれのフロントマン――清水エイスケ(Age Factory)、岩渕想太(パノラマパナマタウン)、エンドウアンリ(PELICAN FANCLUB)の3人に集まってもらい、それぞれのルーツや音楽性など、彼らが共通点に持っている〈オルタナティヴ〉な志向性について語ってもらった。

 

いまの潮流とは関係ない〈オルタナティヴ〉を作りたい

――3バンドの鳴らしているサウンドはまったく違っていますが、共通のルーツもあるのでしょうか?

エンドウアンリ(PELICAN FANCLUB)「僕が最初に興味を持った音楽は、10歳の頃に聴いたBUMP OF CHICKENですね。友人に誘われて『ONE PIECE THE MOVIE デッドエンドの冒険』(2003年)を観に行ったら、バンプの“sailing day”が映画の主題歌で使われていて好きになったんですよ。そこからいろいろ聴くようになった。当時、音楽好きの小学生が聴いていたのはバンプやASIAN KUNG-FU GENERATIONELLEGARDEN、それからレミオロメンといった感じでしたね」

PELICAN FANCLUBの2015年のミニ・アルバム 『PELICAN FANCLUB』収録曲“Dali”
 

清水エイスケ(Age Factory)「10歳かあ、俺はその頃なんも聴いてなかったな。10代前半くらいまでは、バンドをやっていた兄貴の部屋から流れてくる洋楽をなんとなく聴いていたという感じ。自発的に聴くようになったのは、高校1年生くらいですね。最初はMONGOL800Hi-STANDARDが好きで、ギターをめちゃコピーしてました。高2くらいでeastern youthやbloodthirsty butchers、COWPERSなど札幌シーンのバンドを聴くようになり、彼らに影響を与えた海外のバンドも掘り下げていくようになって。特に歌詞の面では札幌のバンドにものすごく影響を受けていますね」

Age Factoryの2014年作『手を振る』収録曲“真空から”
 

――札幌シーンのバンドを聴くようになったキッカケは?

清水「僕は奈良出身なんですけど、同郷の先輩にLOSTAGEの五味(岳久)さんがいて、彼主催のイヴェントに通っていたんです。そこで札幌のバンドがライヴをしに来ていて」

岩渕想太(パノラマパナマタウン)「自分で音楽を探して聴くようになったのは中2か中3の頃で、最初はくるりでしたね。まずはベスト・アルバムを聴いたんですけど、そこから『図鑑』(2000年)や『さよならストレンジャー』(99年)など初期の作品も聴くようになり、90年代後半から2000年代前半に活躍していた日本のバンド、NUMBER GIRLスーパーカーなどを聴くようになった。その流れでアメリカのオルタナにも滅茶苦茶ハマって、ピクシーズソニック・ユースがいまの僕のルーツになっていると思います。もちろんUKロックも好きで、ブラーのあの独特の〈軽さ〉には影響されました」

パノラマパナマタウンの2016年のミニ・アルバム『SHINKAICHI』収録曲“SHINKAICHI”
 

エンドウ「洋楽だと僕はコクトー・ツインズにものすごく影響を受けています。最初に『Garlands』(82年)を聴いたとき、エリザベス・フレイザーの歌声に衝撃を受けて、自分の歌い方も変わりましたね。最初は真似から入ったんですけど、やっぱり性別や声質、言葉も違うから試行錯誤しました。歌い方だけではなく、(コクトー・ツインズの)メロディー・ラインやギター・サウンドも研究しましたね」

コクトー・ツインズの82年作『Garlands』収録曲“Garlands”
 

清水「僕はUSインディーからの影響がいちばん強いかな。シェラックを聴いて、そこからスティーヴ・アルビニが携わっている作品を聴くようになり、思想的な部分ではブラック・フラッグ、音楽的にはジーザス・リザードにもっとも影響を受けています。不協和音を取り込みながら、自分たちのサウンドを作り出している自由な姿勢に惹かれたんですよね。いまでも憧れの存在です」

ジーザス・リザードの91年作『Goat』収録曲“Nub”
 

――お話を伺ってると、3バンドに共通しているのは80〜90年代の4ADっぽさなのかなと思いました。清水さんが好きなアルビニは、岩渕さんが好きなピクシーズのアルバムをプロデュースしていましたし、エンドウさんの好きなコクトー・ツインズは、まさに当時の4ADの看板バンドでしたし。

一同「(頷く)」

――お互いのサウンドに関しては、どんなふうに評価しています?

エンドウ「Age Factoryからは、やっぱりブッチャーズやCOWPERSの匂いを感じますね。パノラマパナマタウンを最初に観たときは、(パノラマは)まだCDも出していなくて、いまよりもイギリスっぽいスタイルだった気がします。岩渕くんの佇まいにはロックスターらしさがあって、強烈な第一印象でした」

岩渕「PELICAN FANCLUBもAge Factoryも、すごく正直な音楽だなと思います。フロントマンの濃さがそのまま音楽に出ている。自分はまだそれを模索中なので、正直羨ましい。あとPELICAN FANCLUBを初めて観たときに、訳のわからない〈狂気〉を感じました。そして、Age Factoryは男っぽい熱量がある。鉄っぽいというか」

――岩渕さんは、さっきアメリカのオルタナに影響されたとおっしゃいましたけど、〈オルタナティヴ〉ってなんだと思いますか?

岩渕「例えば、4つ打ちの〈踊れるロック〉が流行ったとして、それに対するアンチというかカウンターとして〈踊れないロック〉をやるとか、そういう対立構造ありきの表現は、僕はイヤなんですよ。流行りに対してカウンターじゃなきゃダメみたいな空気があるけれど、そういうのってメチャメチャ狭い話だなと思っていて」

――確かに。自家中毒を起こして潰し合いみたいになってしまいますよね。

岩渕「そうなんですよ。メインストリームにせよアンダーグラウンドにせよ、あらゆる潮流とは一切関係ないところで音楽を作りたい。本当の意味でのオルタナ=別の選択を作ることができたら良いなと思っているんです。PELICAN FANCLUBもAge Factoryもいまの潮流に囚われていないし迎合していないから、オルタナティヴだと思う。そこにシンパシーを感じます」

――昨年、PELICAN FANCLUBは『OK BALLADE』、Age Factoryは『LOVE』、そしてパノラマパナマタウンは『PROPOSE』と3組とも最新音源をリリースしています。それぞれ、どんなサウンドをめざしたのでしょう?

岩渕「前のミニ・アルバム『SHINKAICHI』を綺麗に録りすぎてしまったという反省もあって、『PROPOSE』はもっと歪にしたいと思い、音像的にはストロークスの『Is This It』(2001年)を意識しました。音の質感としてはカリカリしていて、位相としては目の前で鳴っているような感じ。“シェルター”という曲では聴こえないくらいの低音域を音に混ぜていて、きっとイヤホンで聴くとメチャメチャ気持ち悪いと思うんですけど、意図的に聴き辛いサウンドにしたんです」

清水「僕らの『LOVE』は、五味(岳久)さんにプロデュース、PAのKCさんこと岩谷啓士郎さんにエンジニアリングをお願いして、普段LOSTAGEもよく使っている奈良のスタジオでレコーディングしました。今回は参考音源としてeastern youth『ボトムオブザワールド』(2015年)と、ブロークン・ソーシャル・シーンの『Broken Social Scene』(2005年)、それからナウ・ナウの『Neighbors』(2010年)などをスタジオに持って行きました。丸写しするというよりは、この曲のキックの音はこのアルバムの感じで……というふうに部分的に参考にしたので、どのアルバムとも同じような音にはならなかったんですけど」

エンドウ「僕らも『OK BALADDE』では、こういうイメージでと1曲ずつエンジニアにリクエストしました。例えば1曲目“記憶について”は、レッティング・アップ・ディスパイト・グレイト・フォールツのミニ・アルバム『Neon』(2014年)の煌びやかさを意識して、隠し味としてシンセのアルペジエーターを入れています。でも、エイスケくんが言ったように、参考曲そのままにはならなかった。“説明”という曲は、僕のなかではビースティ・ボーイズのつもりだったんですけど、バンドでアレンジしていくうちにレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンリンプ・ビズキットみたいになっちゃった(笑)」

清水「すごくわかるな。そもそも作曲者の頭の中で鳴っている音と、それぞれのメンバーがイメージしている音が完全に一致することはない。でも、そのおかげでいろんな解釈が混じって僕らのオリジナリティーになるんじゃないかなと思う」

――作曲者の思い通りにならないところがバンドの醍醐味なんですよね。

エンドウ「あと実は僕、海援隊も好きなんですけど、その影響も入ってきているような気がします」

清水「え、海援隊って鉄矢さんの? 武田鉄矢フォロワーなん?」

エンドウ「ハハハ(笑)。フォロワーじゃないけど、でもすごく好きなんですよ。僕の歌詞の説教臭さみたいなものは、きっと海援隊からの影響もあると思うんです。おばあちゃんの家に行くと、必ず海援隊かペドロ&カプリシャスチューリップがかかっていて、そのなかでも印象に残っていたのが海援隊だったんですよね」

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