INTERVIEW

10代のラッパーLick-Gが語る、自身のやりたいことを貫き高いスキルやメッセージ性をとことん追及した初作『Trainspotting』

【特集:ON SEASON OF BEATS & RHYME 2017】Pt.1

ON SEASON OF BEATS & RHYME 2017
[緊急ワイド]2017年、日本のヒップホップは
数多くの思い出が生まれた時代、色褪せないクラシックが作られた時代――それは何年前? あるいはいま? もしくはこれから? いずれにせよ、名盤が皆無だった年はないが、肥沃な土壌が育まれた前年を受け、2017年もまたいい作品が各方面から届きそうな……表題は適当だけど、予感は本当だ!

★Pt.2 生粋のフリースタイラー、輪入道がさらけ出す拭えない過去―逃げ場をなくして今を繋ぎ止めた新作『左回りの時計』を語る
★Pt.3 タイプライター&YMGが生み出すありそうでなかった何か―世代やエリア越える豪華メンツ揃えたプロデュース・アルバム
★Pt.4 Eccyが発見した自分らしさとは? Shing02やどついたるねんら招いてパーソナルな物語紡いだ8年半ぶりのフル・アルバムを語る
★Pt.5 早熟なシンデレラガール・ちゃんみなの初作、とんでもないクォリティー光るJJJの新アルバムなど日本語ラップの注目盤を紹介

 


10代で人生を選んだ若きラッパーが、突出したスキルで描く新たな創世記とは

 史上最年少で本選に出場した〈UMB〉や〈SCHOOL OF RAP〉〈高校生ラップ選手権〉をはじめとするMCバトルで頭角を現す一方、音源も積極的に発表するなど、10代にして早くから人々の視線を集めてきたLick-G。日本人の父とイギリス人の母を持ち、幼い頃から家でUSのヒップホップが流れる環境にはあったものの、中学時代の彼がみずからラップするまでになったきっかけは日本の作品だった。その頃に手に取ったのがスキー・ビーツの『24 HOUR KARATE SCHOOL JAPAN』(2010年)というあたりにも若さは窺えるが、「不平不満を歌ってるのが自分の心境と一致した」という日本語ラップのメッセージの強烈さに、彼もマイクを手に取らずにはいられなかったのだ。

 「ラップは、考えてる言葉をそのまま書けて誰にも邪魔されないし、自己表現の究極というか、何から何まで武器にできて、他のどの音楽と比べても自由度が段違いじゃないですか。韻を踏むだけで、フリースタイルも喋りの延長線上だと思うんで、意外とすんなりやれて、ラップを始めてから1、2年で音源も作るようになりました」。

Lick-G Trainspotting Genesis/DREAM BOY(2017)

 16歳で自主EP『無題』(2015年)を発表、昨年もミックステープを発表した彼が、いよいよ初の全国流通盤となるファースト・アルバム『Trainspotting』をリリースした。18歳の誕生日を前にトントン拍子でこぎつけた今回のリリースは、KEN THE 390の“Nobody Knows”への客演をきっかけに、彼主宰の新レーベル=Genesisに誘われて実現したもの。奇しくも同名映画の続編公開が近づくタイミングとなったが、表題はその情報を知る前につけたものだとか。

 「偶然で驚きましたね(笑)。単純にタイトルとしてオシャレだっていうのもあるけど、『トレインスポッティング』は〈レールから外れた人にもそれぞれの道や人生がある〉っていう意味からつけました。母親のルーツであるイギリスの映画という意味もありますね」。

 彼にとっても念願であったろう初のアルバムだが、ただ、制作当初に思い描いたものとは違う仕上がりになったようだ。

 「最初はKENさんのアドヴァイスを貰いながら、DREAM BOYのカラーに近い音を狙って世に出す考えだったんですけど、歌詞も浮かばないし、トラックも向いてなくて、じゃあ自分のやりたいことからやってみようっていう形になって」。

 結果、アルバムはLick-G持ち前のプライドの高さで「完全に他人の意見なしでやってみたい」という思いを反映させたものになった。dubby bunnyらのトラックをみずから集め、客演を入れていないのも「いままで一人でコツコツやってきたのに急に誰か入れるのも違うかなと思って」と語る。

 〈周囲の視線 他人の意見 フルシカト〉と歌う表題曲や、「ビートを貰ってすぐ書ける」という得意なトラップに乗せて〈諦めなよ お前じゃ絶対に無理〉と他との違いを見せつける“Mellow Akira”。さらにはメロディアスなサビを挿みつつ頂点をめざして突っ走るマインドを歌う“Do Your Things”に、唯一KEN THE 390が提案したビートで軽快なラップを畳み掛ける“Positive State of Mind”など、収録曲の数々は己を鼓舞するものであると同時に、彼がラップに求める〈メッセージ〉を託したものなのだろう。

 「テーマを他愛ないものにしたくないっていうのがあったから、そのうえで超スキルを追及するというか、どっちも高めるとこまで高めようって感じでした。妥協は絶対したくなくてスタジオでも超録り直したし、完璧に近い状態で送り出したかった。完成度をめっちゃ重視して、誰が聴いてもどれか一曲は気に入ってくれるんじゃないかと思います」。

 とかく〈バトル〉や〈若さ〉を引き合いに語られてきたこれまでのイメージを取っ払う意味でも、『Trainspotting』は彼の見据える新たな一歩だ。負けん気の強さを感じさせる10代の横顔を、Lick-Gはこんな発言にも見せてくれた。

 「〈高校生〉とか〈バトル〉とかで括られること自体は別にOKですね。どう括られても、そのなかで突出してる自信はあるし、〈フリースタイルだけ〉とか言われても、自分は音源も作って、やることをやってる。このアルバムでもある意味それしか言ってないし、そのなかに括られて終わるものじゃないと思うんで、自分の曲は」。  

 

Lick-Gが参加したKEN THE 390の2016年作『真っ向勝負』(DREAM BOY)

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