INTERVIEW

生粋のフリースタイラー、輪入道がさらけ出す拭えない過去―逃げ場をなくして今を繋ぎ止めた新作『左回りの時計』を語る

【特集:ON SEASON OF BEATS & RHYME 2017】Pt.2

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  • 2017.03.01

ON SEASON OF BEATS & RHYME 2017
[緊急ワイド 2017年、日本のヒップホップは
数多くの思い出が生まれた時代、色褪せないクラシックが作られた時代――それは何年前? あるいはいま? もしくはこれから? いずれにせよ、名盤が皆無だった年はないが、肥沃な土壌が育まれた前年を受け、2017年もまたいい作品が各方面から届きそうな……表題は適当だけど、予感は本当だ!

★Pt.1 10代のラッパーLick-Gが語る、自身のやりたいことを貫き高いスキルやメッセージ性をとことん追及した初作『Trainspotting』
★Pt.3 タイプライター&YMGが生み出すありそうでなかった何か―世代やエリア越える豪華メンツ揃えたプロデュース・アルバム
★Pt.4 Eccyが発見した自分らしさとは? Shing02やどついたるねんら招いてパーソナルな物語紡いだ8年半ぶりのフル・アルバムを語る
★Pt.5 早熟なシンデレラガール・ちゃんみなの初作、とんでもないクォリティー光るJJJの新アルバムなど日本語ラップの注目盤を紹介

 


後ろ暗い記憶も良き思い出もすべて、包み隠さず吐き出した傑作!

 〈BBOY PARK 2014〉や〈THE罵倒〉などいくつものMCバトルで優勝を勝ち取る一方、一昨年は長渕剛の10万人オールナイト・ライヴのステージも経験。そして昨年は、「フリースタイルダンジョン」の漢 a.k.a. GAMIとのバトルを皮切りに、地上波のヴァラエティー番組や、東京都選挙管理委員会の主催イヴェント出演、Zeebraプロデュースのフェス〈SUMMER BOMB〉における漢との再戦も話題を呼ぶなど、昨今とみにラッパーとして名を上げている輪入道。バトルにとどまらず、驚くなかれ活動開始から5年近くに渡り、持ち曲がないままフリースタイルだけでパフォーマンスを繰り返し、いまなおそれをベースにライヴを重ねている彼は、まさに生粋のフリースタイラーと言えよう。約3年ぶりのセカンド・アルバム『左回りの時計』も、リリックなどの手直しこそそれぞれあれど、収録曲はどれも基本一発録りだという。もっとも、制作に臨む姿勢は初作『片割れ』(2013年)との違いもあったようだ。

輪入道 左回りの時計 GARAGE MUSIC JAPAN(2017)

 「一枚目は通して流してみると音的に重かったんで、今回はアルバムとして聴けるように、トラックのヴァラエティーも意識しました。前作はトピックとかも何にも決めないで出来た曲から入れていく感じだったんですけど、今回は雨の曲とか季節の曲とかそういうテーマを先に決めてから作ってみるみたいなこともやりましたね」。

 みずからを包み隠さず歌うことも前作以上に考えたという内容は、気迫のこもったラップぶりと共に、ド頭の“so dark”から強烈。後ろめたいはずの過去や荒んだ感情をピー音混じりにぶちまけたこの曲から、負の感情をさらに連鎖させていくかのような“焦燥”、ラップという術を見つけてギリギリ人生を繋ぐ現在へと至る自画像“俺はやる”……と続く序盤から、人を引かせかねないその詞世界は、シャレやネタで済むものではない。

 「“so dark”とか“俺はやる”みたいな曲は別に〈ワル自慢〉の曲じゃないし、隠しといたほうがいいことなんですよね。ぶっちゃけ、不良自慢の人ほどこういう面は見せたくないと思うんですよ(笑)。でも、それも出しちゃえみたいな。“so dark”に関してはスタッフも一貫して止めてたし、自分でも出そうか、やっぱ止めようかを何十回も繰り返したっすね、録る前も録ってからも。ここから先どういうふうに広がるかまで考えてないし、これ出したらどうなっちゃうかもわかんないです」。

 しかし、拭えない過去を歌ったそれらの曲があることで、アルバムを聴き進めるにつれて表れてくる何でもない日常や風景、人との繋がりが、より切実に響いてくる。ノスタルジックなトラックに、季節の描写に自分の歩みを重ねながら、〈本当は正直になるのが怖いんだ〉とも漏らすエモーショナルな“four seasons”や、ライヴで降り立った縁もゆかりもない徳之島での交流を心温まる語り口で表現した“徳之島”、序盤で歌った事柄への彼なりの答えというラスト前のアルバム表題曲……〈出来なかった事柄から出来上がった言葉〉(“four seasons”)の一つ一つを、身を削るようにラップし、今を繋ぎ止める彼の姿は、聴く者の心をとらえるだろう。

 「このアルバムには自分の逃げ場をなくすみたいな意味もあるんで、その意味でも考え得るなかで攻めたセレクトっすね。曲の並びにしてもすごく考えたし、一曲目から〈ウワッ〉て止められちゃう可能性があるかもしれないけど、最後まで通して聴いてさえもらえればいいふうには作ってるんで、全曲聴いてみて判断してもらいたいです」。

 4月30日には地元・千葉のSTARNITEにてリリース・パーティーも開催。「これを出してライヴのクォリティーが下がったら意味がない」と話しながらも、彼の目はすでにその先へ向かっている。ライヴと音源をあくまで別物と考えていた彼の意識にも少しずつ変化が見られるように、活動の場を広げていくことで彼の歌の世界もさらに広がっていくだろう。

※輪入道 2nd Album「左回りの時計」Release party 4月30日(日)千葉STARNITE

 「アルバムが出ていろんな土地に行ったら、いままでなかったような経験をまたするんじゃないかと思うんですよね、恥をかいたり、痛みを感じたり。そういうところからも誰も作れないような曲を作れればいいなと思ってます」。

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