INTERVIEW

DÉ DÉ MOUSE『dream you up』 〈インターネットの存在する80年代〉から届くヒット曲とは? ダンス回帰した新作を語る

DÉ DÉ MOUSE『dream you up』 〈インターネットの存在する80年代〉から届くヒット曲とは? ダンス回帰した新作を語る

先進的な10年の星間飛行を経て、メロディー・カットアップのオリジネイターがふたたびここに還ってきた——〈インターネットの存在する80年代〉から次元を超えて届くヒットソングは、夢心地の昂揚を約束してくれる!

 

架空の80sヒッツ

 ファースト・アルバム『tide of stars』から10年——流れの早いダンス・ミュージックの世界を主戦場としながら、多くのフォロワーを生んだメロディアスなヴォイス・エディットをトレードマークに、常に第一線で新しい景色を描き出してきたDÉ DÉ MOUSE。2015年の前作『farewell holiday!』では精緻な打ち込みでオーケストラを意のままに操って、モダンなシネマティック・テクノ・ポップを構築していたが、表記を改めてのニュー・アルバム『dream you up』はそこから一転、ストロングなダンス・トラックを並べた、いわば原点回帰的なアルバムとなった。

DÉ DÉ MOUSE dream you up not(2017)

 とはいえ、一筋縄ではいかないのが彼の魅力。今回も、〈インターネットの存在する80年代〉を舞台にした架空SFアニメの〈若いパイロットたちの間で話題のヒット・ミュージック〉という、何とも込み入ったテーマが掲げられている。

 「もともとは〈カーステから流れてくるポップス〉風にしたかったんです。MTVが流行っていた80年代から90年代初頭のポップ・ミュージックみたいなものを、いまのダンス・ミュージックとしてやりたくて。でも、そのテーマを簡潔にまとめられなくて、ある時にふと頭によぎったのが〈もし80年代にインターネットがあったら?〉という世界。それとSF感を出したくていろいろと合体させたら、よくわからない感じになって(笑)」。

 そのアイデアを、彼とはガイナックス企画の「MUSIC is SF」(2012年)でコラボして以来の親交だというデザイナー、コヤマシゲト(『交響詩篇エウレカセブン』など)の力を借りてブラッシュアップ。そうして出来上がったのが、SFなコックピットに乗り込んだ女の子のアートワークとレトロ・フューチャーな世界観だ。

 「いままでの作品はアルバム全体でストーリーを語ってたんだけど、今回は曲ごとにポップスとして完結した、ヒット曲のコンピレーションみたいなイメージ。(ジャケの)彼女が戦いに行く時にテンションを上げるためのカセットテープが、80年代のパラレル・ワールドから迷い込んできたような」。

 

哀愁とノスタルジー

 かくして妄想世界からやって来たヒット曲集は、荒々しいスクラッチ音を伴ったはみ出しブレイクス“get you back”で威勢良くスタートする。アーメン・ブレイクを隠し味に刻んだ“face to face”、十八番のカットアップ・ヴォイスがファニーな旋律を紡ぐ表題曲、NYで活動するチップチューン・バンドのアナマナグチとのコラボ曲“pump it up”など、ハウスやブレイクビーツのマナーを軸にしながら予想外な方向に展開する楽曲群はまさに別世界な代物。リズムやアレンジにPa's Lam Systemら日本の若手トラックメイカーたちと共鳴する感覚(というより、DÉ DÉ MOUSEの作法がそうした世代の影響源でもあるわけだが)を仕込みつつ、FM音源風の煌びやかなシンセや初期レイヴを思わせる雑多な意匠を散りばめることで、そこに彼ならではの〈懐かしさ〉を刻印している。

 「今回は80年代の洋楽っぽい音を意識的に採り入れてるんです。自分のなかでは例えば、当時のペット・ショップ・ボーイズのような、イギリスのヒット・ミュージックの気持ちで作っていて。コード感も哀愁のある湿った感じで、それを日本人の解釈でいま風に表現するというか。それと僕のなかでダフト・パンクの『Discovery』は80年代初頭のディスコやヒット曲っぽいノスタルジーを持った作品なので、質感などで多少意識した部分がありますね」。

 また、『farewell holiday!』で新しく取り組んだ楽典的な作曲法と経験も本作に反映されている。それは例えば「SF版〈トムとジェリー〉のイメージ」と説明するカートゥーン・ブレイクコア“chase after chase”に顕著だが、その影響は作品全体にも及んでいるようだ。

 「『farewell holiday!』はメロディーの積み重ねで作っていく対位法的なアレンジだったんですけど、今回は和音を入れたら余計なメロディーを排除したりして、コードが固まりとして鳴るようにしたんです。シンプルに聴こえるけど、シンセもめちゃくちゃ重ねてるんですよ。それと前作でユニゾンの良さを再発見して。同じメロディーをいくつもの音で鳴らすとスッキリしてるのにすごく豊かに聴こえるんですよね。それがダンス・ミュージックとポップ・ミュージックを繋ぐ良いやり方だとわかったので、しばらくはこの手法でいくんじゃないかな」。

 

またメガネをかけてみたり

 そのような考えは、彼のすべての作品の根底にもある命題のようなものだが、今作ではその方法論や提示の仕方について、より自覚的になったという。そんな意識の変化にはさまざまな理由があるようだ。

 「メジャーのレーベルに在籍していた頃の『A journey to freedom』(2010年)は、実は自分ではリズムやメロディーを足し過ぎたトゥーマッチな作品だと思ってて。でもファンの間ではいまでも人気が高くて、代表作だと言ってもらえてる。当時は、ただメジャーで求められることだけをやっても音楽的に成長できないという気持ちが強かったので、2011年に独立してからは自分がやりたい表現だけを追っかけて、ある意味ダーク・ヒーローを気取ってたんです。でも、変わってしまった音楽ビジネスの形を目の当たりにした時に、これはもう少し大きく物を考えないとダメだと思って。それで〈もう一回わかりやすい正義のヒーローをやろう〉ということで、当時のトレードマークだったメガネをかけてみたりして(笑)。『dream you up』の曲はスタッフも盛り上がってくれたし、〈みんなが求めるDÉ DÉ MOUSE像〉に応えることの大切さもいまになってわかってきたと思います」。

 そういったより広い場所に自身の音楽を届けるための努力が、例えば名前表記の変更であったり、今後予定しているLITEやSawagiのメンバーを迎えたバンド編成でのツアーだというわけだ。

 「記号ナシの〈DE DE MOUSE〉だと英語圏の人は〈ディディマウス〉と読んでしまうから、読み方をはっきり提示する意味もあるんですけど。この記号を入れたのは〈正義のヒーロー〉をやる決意表明でもあるんです。自分の中では表記が変わって一枚目だから新しいスタート、デビュー・アルバムみたいなつもりでいて。いまは本当に楽しくて、すごく爽やかな気持ちですね」。

DÉ DÉ MOUSEのフル・アルバムを紹介。

 

DÉ DÉ MOUSEのリミックスを収録した近作。

 

【DÉ DÉ MOUSE "dream you up" tour 2017】
4/28(金)東京・代官山UNIT、5/1(金)仙台enn、5/5(金)札幌DUCE、5/11(木)広島Club Quattro、5/12(金)大阪・心斎橋CONPASS、5/13(土)名古屋 Club Rock'n Roll、5/14(日)横浜 LANDMARK HALL、5/19(金)~21(日)フランス公演(solo set)、5/26(金)京都CLUB METRO、5/28(日)富山 MAIRO、6/2(金)福岡 VOODOO LOUNGE、6/3(土)沖縄 OUTPUT 詳細は〈http://dedemouse.com〉にて!

 

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