いきなりボーナストラックについて書くが、〈ガイア盤〉収録の“M”は、あるAV女優の独白を描いており、あまりの壮絶さと純粋さに言葉を失った。まったくの私小説なので境遇を重ねられるわけではないのだが、置きどころのない愛情や寂しさの発露に胸が締め付けられる。大森靖子は、歌で情景をヴィヴィッドにイメージさせ、誰しもが抱えるであろう収まりのつかない心のざわつきを汲み取っていくのがめちゃくちゃにうまい。メジャー3作目にしていよいよ途方もない高みに到達した感がある。眩しくて青臭いヤンキーの夏を描いたり、上京した〈私〉と地元に残った友達との繋がりを伊予弁で綴ったり、アイドルの自己紹介フレーズのパッチワークをしたりするのも、一聴トリッキーに感じるかもしれないが、すべては誰かを優しく肯定し、鼓舞するものだ。生きることに何かしらの息苦しさを感じる人々は、キチガイの女神となった大森のムキダシの言葉に向き合ったとき、〈これは私のことだ〉と身を以て感じることだろう。