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ネルス・クライン&ジェフ・パーカーも登場! 音響的アプローチに秀でた鬼才ジャズ・ドラマー、スコット・アメンドラが見逃せない理由を柳樂光隆が解説

ネルス・クライン&ジェフ・パーカーも登場! 音響的アプローチに秀でた鬼才ジャズ・ドラマー、スコット・アメンドラが見逃せない理由を柳樂光隆が解説

鬼才ジャズ・ドラマー、スコット・アメンドラが自身のユニットを率いて5月11日(木)~13日(土)に東京・丸の内コットンクラブで来日公演を行う。今回のステージには、ウィルコでの活躍でも知られるネルス・クライン、トータスの一員であるジェフ・パーカーという2人のスーパー・ギタリストに加えて、ヴァイオリンの才媛ことジェニー・シェインマン、ベースのクリス・ライトキャップも参加。現代ジャズは言わずもがな、ポスト・ロックやアメリカーナなどさまざまな文脈が交錯する、文字通り最強ラインナップでの登場となる。そこで今回はジャズ評論家の柳樂光隆氏に、中心人物のスコットを含むメンバー5人の魅力と、彼らが集結したステージの展望を解説してもらった。 *Mikiki編集部

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キーワードは〈音響的なアプローチ〉と〈即興センス〉

ニュージャージー出身のスコット・アメンドラは、ボストンのバークリー音大を卒業したあと、92年にサンフランシスコへ移住。チャーリー・ハンターらと結成したTJ・カークでのジャム・バンド的な活動のほか、ビル・フリゼールやマイク・パットン(フェイス・ノー・モア)、パット・マルティーノ、マデリン・ペルーらと共演を重ねてきた。2015年にはネルス・クライン・シンガーズの一員として来日しているが、即興シーンで知り合った2人の付き合いは古く、「シンガーズとしての活動をはじめたとき、ドラムにエレクトロニクスの要素を持ち込みたいのに、誰もライヴでそういうことをさせてくれないんだってスコットがこぼしてたから、〈ぜひそれをやろう!〉って誘ったのさ(笑)」とネルスは以前語っている。そんなスコットのミュージシャンとしての特徴を、柳樂氏に訊いた。

※チャーリー・ハンター、ウィル・バーナード、ジョン・スコットによる3本のギターを軸に、セロニアス・モンク(T)、ジェームス・ブラウン(J)、ローランド・カークの曲を演奏するユニット

「インプロヴィゼーション主体でちょっとアヴァンギャルド寄りだけど、ジャズの枠組みを超えたプレイヤーの先駆者だと思います。ドラマーでありつつ、パーカッションやエレクトロニクスも自在に操る人。特に最近のスコット・アメンドラ・バンドでは、演奏のなかに音響的なアプローチを持ちこんでいて、いわゆる普通のフリージャズとは一線を画すというか、今っぽい感性が光っている。音色やテクスチャーへのこだわりに、予測のつかない研ぎ澄まされた即興センス――そういった志向性は、今回の共演メンバーの顔ぶれにも反映されていますよね」

そんなスコットの〈今っぽい感性〉を知るうえでうってつけなのが、2005年に発表された彼のリーダー作『Believe』。クリス・ライトキャップを除く4人が参加した同作では、エレクトロニクスも駆使しながら、刺激的かつ甘美でとろけるようなインプロが展開されている。

 

ネルス・クラインとジェフ・パーカー、刮目すべき2人のギタリスト

今回スコットの元に集う4人は、いずれも彼と同じように〈音響的なアプローチ〉と〈即興センス〉に秀でたプレイヤーたち。そのなかでも注目したいのが、ネルス・クラインとジェフ・パーカー。このスタイルの異なる2人のギタリストが、同じステージに立つというだけでも事件だろう。まずネルスは、ウィルコの一員としても有名で、近年だとチボ・マットやプラスティック・オノ・バンドの一員としても日本の地を踏んでいる。

「基本的にはフリージャズの流れを汲んだギタリスト。普通に弾いていたかと思えば、いきなりノイジーな演奏がガッと入ってきたりして。そういう演奏を、ウィルコのようなロック・バンドのなかにいても違和感なく出すことができる。それに、ジュリアン・ラージとのデュオ作(2014年作『Room』)を出したりもしていますけど、彼はジム・ホールみたいなギタリストが好きなんですよね。それこそビル・フリゼールのように、いわゆるジャズ的なアプローチと、オルタナっぽい響き、アメリカーナ~音響系のプレイを両立させることができる。だから、いろんなスタイルを演奏できるんだけど、それぞれを使い分けるというよりは、同じ場所で共存させている感じ」

スコットが参加したネルス・クライン・シンガーズのパフォーマンス映像
 

「ネルスは最近だと、エミット・ローズの新作『Rainbow Ends』(2016年)で弾いていたかと思えば、ベン・ゴールドバーグというジャズ・クラリネット奏者の室内楽アルバムにも参加している。自分のリーダー作でも、ブルーノートから発表した新作『Lovers』(2016年)では、〈アメリカの終わり〉を思わせるスローなバラードを、オーケストラと一緒にやっていて。即興演奏はお手の物だし、アレンジが作り込まれた場で求められる通りの演奏をしたりもできる、そんな万能型ですね」

ネルス・クライン『Lovers』収録曲“The Bond”
 

片やジェフ・パーカーは、シカゴ音響派を代表するトータスのギタリスト。ポスト・ロックの中心選手であるのはもちろん、ジャズをルーツに持ち、ヒップホップや実験音楽にも精通している。近年はLAに移住しており、スコット・アメンドラとの共演もそれがきっかけの一つではないかと柳樂氏は語る。

「トータスやアイソトープ217での活動を通じて、音響っぽいイメージが強い人だと思いますけど、本格派のジャズ・ギタリストでもあって。かつてはシカゴのフリージャズ界隈にも出入りしながら、そういう方面のアルバムにもたくさん参加していたんですよね。プレイヤーとしても個性的で、ブライアン・ブレイドの作品では、どこに参加しているのかわからないくらい溶け込んでいて、全体のサウンドに調和している。かと思えば、自分のリーダー作だとたっぷり弾いていて。そういう後者のスタイルも、カート・ローゼンウィンケル的でなければ、ジム・ホールやフリージャズとも違う。だから謎が多いギタリストでもあったんですけど、最近のインタヴューによると、高柳昌行さんやデレク・ベイリーが好きらしいと。確かに、ジェフがちょっと変なタイム感でメロディアスな演奏をしているときの感じは、スタンダード曲を弾いていたり、デヴィッド・シルヴィアンと一緒にやっていたときのデレク・ベイリーとも近い気がします」

ジェフ・パーカーが参加したブライアン・ブレイド・フェローシップの98年作『Brian Blade Fellowship』収録曲“Red River Revel”
 

「あと最近、ジェフの新作『The New Breed』が日本盤化されたばかりで、そこではアーシーな演奏を披露していて。グラント・グリーンのギターをサンプリングしたア・トライブ・コールド・クエストの“Vibes And Stuff”みたいな、ソウルフルでブルージーな質感が素晴らしいんですよね。この作品にもJ・ディラからの影響がフィードバックされているんですけど、そんなふうにいろんな音楽から要素を抽出して、歴史に紐づけながら個性的なスタイルを確立している。それにジェフは、『Slight Freedom』というアナログと配信だけのアルバムも昨年リリースしていて、そちらはフランク・オーシャン“Super Rich Kids”のカヴァーも収録された、アンビエント的な音響アルバム。彼はこの2枚で、新しいレヴェルに到達したように思いますね」

『The New Breed』収録曲“Cliché”
『Slight Freedom』収録曲“Slight Freedom”

 

 

メンバー全員がキーパーソン、5人で行われるライヴの展望は?

今回のバンドで、ネルスやジェフと共に注目したいのが、ヴァイオリンのジェニー・シェインマンと、ベーシストのクリス・ライトキャップ。いずれもコンテンポラリー・シーンを熱心に追う人にとっては重要な存在であり、柳樂氏もこの2人の来日を心待ちにしていたそうだ。

「ジェニー・シェインマンはノラ・ジョーンズやビル・フリゼール、ルー・リードからアレサ・フランクリンまで共演しているんですけど、個人的には、今回の5人のなかでも一番気になる存在です。もともとはフリージャズ系の演奏が中心なんだけど、ソロ作はジョン・ゾーンのレーベル(ザディック)から発表していて、そこではフォーク/カントリー系の歌モノを披露していて。ジェイソン・モランやブルックリン・ライダーも参加していたりするし、ここ数年のアメリカーナ再解釈の流れでも気になる存在ですね。スコットは〈音響的な装置〉として、彼女のヴァイオリンがほしかったんじゃないかな」

ジェニー・シェインマン・クァルテットの2014年作『The Littlest Prisoner』収録曲“Run Run Run”
 

「クリス・ライトキャップは、最近だとクレイグ・テイボーンがECMから発表しているアルバムに参加していたり、ジェラルド・クリーヴァーみたいな尖ったことをやっている人と組んでいて。本人のリーダー作にもクレイグは参加していて、インプロ色もあるけどちょっとミニマルで、ポスト・ロック的でフォーキーな浮遊感のあるサックス・アンサンブルを生み出している。今回、ベーシストはもともと違う人が出演する予定だったんですけど、クリスが代わりに来るとアナウンスがあったときにSNS上もざわついていたね。それくらいの要注目人物です」

クリス・ライトキャップの2015年作『Epicenter』収録曲“Epicenter”
 

このように演奏スキルのみならず、音楽家としてのセンスも一線級のプレイヤーが揃った今回のスコット・アメンドラ・バンド。はたしてライヴはどのようなものになるのか?

「スコット・アメンドラの『Fade To Orange』(2015年作)という作品があって、オリジナルの表題曲と4つのリミックスを収録しているんですけど、ネルスも参加していて、エレクトロニクスを多用した〈音響インプロ〉みたいな感じですごくよかったです。あと今回は、ドラマー以外はみんな弦楽器なので、モダンなストリングス・アンサンブルとしても楽しめると思いますね。とにかく、全員すごいのは間違いない。見逃したらもったいないステージになると思いますよ」

 


LIVE INFORMATION
スコット・アメンドラ・バンド・フィーチャリング・
ネルス・クライン、ジェフ・パーカー、ジェニー・シャインマン&クリス・ライトキャップ

日時/会場:2017年5月11日(木)~13日(土)に東京・丸の内コットンクラブ
開場/開演:
〈5月11日(木)~12日(近)〉
・1stショウ:17:00/18:30
・2ndショウ:20:00/21:00
〈5月13日(土)〉
・1stショウ:16:00/17:00
・2ndショウ:18:30/20:00
料金:自由席/6,800円
※指定席の料金は下記リンク先を参照
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