INTERVIEW

YOUR SONG IS GOODが辿り着いた普遍=バレアリック、サイトウジュンを魅了したダンス・ミュージックの限りなき可能性

YOUR SONG IS GOOD『Extended』

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  • 2017.05.12
YOUR SONG IS GOODが辿り着いた普遍=バレアリック、サイトウジュンを魅了したダンス・ミュージックの限りなき可能性

ハードコア・パンクを皮切りに、エモ、ポスト・パンク、スカ、カリプソ……と、その音楽性を変化させてきたYOUR SONG IS GOOD(以下、YSIG)。その軌跡は高揚感の追求によって描かれたものであるが、ハイブリッドなダンス・ミュージックに舵を切った前作『OUT』から3年半。7人のメンバーが乗り込んだ大型船の船首は、会心の新作アルバム『Extended』において、レゲエやダブのマジカルな風を受けながら、バレアリックかつトロピカルな大海原へ。陽光が降り注ぎ、清々しい風が吹き抜けるメロウ・ブルーなバンド・サウンドのゆるやかな大波小波は、果たしてリスナーをどこへ誘うのか? フロントマンのサイトウ“JxJx”ジュンに話を訊いた。

YOUR SONG IS GOOD Extended KAKUBARHYTHM(2017)

求めるものを満たすフォーマットはレゲエだった

――3年前にリリースされた前作『OUT』は、JxJxさんがムーンバートンからトロピカル・ベース、そこからディスコやハウス、テクノに魅了されていく過程で生み出されたアルバムでしたよね。

「そう指摘されると我ながら、変な変遷ですね(笑)。振り返ると、ムーンバートンにハマっていた時期は、エクスクルーシヴな音源がデータで飛び交っている現象にパンク的なものを感じていて、そもそもムーンバートンを編み出したデイヴ・ナダはもともとワシントンDCでハードコアをやっていた人だったし、そこに自分との共通点を見出しておもしろがっていたんです。そうした流れを経て『OUT』以降は、毎週レコード・ショップに入荷する新譜をチェックするようになるんですけど、そのきっかけとなったのが、NYのレーベル、ミスター・サタデイ・ナイト(Mister Saturday Night)でした。そこからリリースされていたアンソニー・ネイプルズやアーチー・ペラーゴのシングルを通じて、アンダーグラウンドなダンス・ミュージックのレコードにパンク、DIY的なものを感じたんですよ」

アンソニー・ネイプルズの2012年のシングル“Mad Disrespect”
 

――そして、JxJxさんがイルリメくんをはじめカクバリズムにダンス・ミュージックの風をもたらすことになったという。

「イルさんはもともとダンス・ミュージックの素養を持っている人でしたが、ミスター・サタデイ・ナイトの話をしたら、彼らがNYでやっているパーティーに1人で遊びに行っちゃって、そこから作品(『The Clay EP』)をリリースするところまで、猛スピードで駆け抜けていったという(笑)。当時、イルさんだったり、もちろんTRAKSBOYSの2人やcero、カクバリズムのスタッフだったり、おもしろさを感じ取ってくれる人たちが周りにいてくれたことも、ダンス・ミュージックへの傾倒に拍車をかけました。レーベルだと、カナダのムード・ハット(Mood Hut)、イギリスのロブスター・テルミン(Lobster Theremin)、リズム・セクション・インターナショナル(Rhythm Section International)、新世代ビートダウン系のマックス・グレーフとグレン・アストロが主宰するドイツのマネー・セックス(Money $ex)、テクノだと、トリロジー・テープス(The Trilogy Tapes)、ベース・ミュージックからテクノにアプローチしたリヴィティ・サウンド(Livity Sound)とか、毎週リリースされるレコードに散財するようになり(笑)、去年にはミスター・サタデイ・ナイトが初来日した東京のパーティーでDJをやらせてもらったりもしたんですよね」

イルリメがJun Kamoda名義でリリースした2016年のシングル『The Clay EP』 収録曲“Physical Graffiti”
ロブスター・テルミンからリリースされたパームス・トラックスの2013年のシングル“Equation”。取材当日のサイトウは同レーベルのスウェットを着用
 

――そして、バンドとしてはライヴ活動を続けながら、2014年から15年にかけて、『OUT』収録曲のリミックスが3枚のアナログでリリースされました。

「『OUT』というアルバムを作ったことでダンス・ミュージックの世界に接続できる土壌を持てたので、せっかくだから、さらに進んで12インチ・シングルのリミックス盤を出してみよう、と。そこでセンパイ、瀧見(憲司)さんと神田(朋樹)さんによるBeing Boringsに、ニュージーランドのロード・エコー、そして、昔からの友達であるDJ KENTがやっているForce Of Natureに声をかけました」

――それらリミックス音源は新作アルバムの初回盤にまとめられていますが、ダンス・ミュージックのプロデューサーが『OUT』の楽曲を解体、再構築したリミックスはYSIGに何をもたらしましたか?

「『OUT』というアルバムは、ずっとバンドをやってきた人間がダンス・ミュージックのアイデアに触発されたものなんですけど、リミックスにはYSIGが次に進むべき道のヒントを期待していたところもあって、その目論見通り、実際に上がってきたものを聴いたら、バンドになかったグルーヴ、BPM、温度やテンションを体験することができたし、そうしたリミックスは自分たちの出した音が元になっているだけに、ダンス・ミュージックの構造をより深く知ることができたんですよ」

2013年作『OUT』収録曲“The Cosmos ”
 

――そこからどんなヒントが得られました?

「どのリミックスも原曲よりテンポをゆったりさせていたので、次なる可能性としてはテンポを落としたアプローチを追求するのもありだなって。その一方でリミックスは、自分たちがバンドで表現するダンス・ミュージックと打ち込みのミニマルなダンス・ミュージックの違いを再認識するきっかけにもなったんですよね。例えば、『OUT』に入っている“Dripping”はアルバムのなかで一番ミニマルな要素で構成されていて、演奏していて楽しい曲だったし、自分のなかで発展する可能性を感じてはいたんですけど、自分の性格上、ミニマリズムをとことん極めないと気が済まなくなりそうだし、それをやっちゃうとバンドがおかしなことになってしまうかもしれないな、と」

――以前対バンされていた3人組のにせんねんもんだいと違って、大所帯のYSIGがミニマリズムを極めたら、確かにバンドとして破綻しかねないですよね。

「そう思い直して、一端、冷静になりました。同じ時期に、ディスコ・リエディットのおもしろさにも気づいたんですよ。ディスコの美味しい部分を切り取って、反復させたり、編集で構成を組み替えたり、より踊れる曲に仕立て上げるアプローチを応用したら、『OUT』以前にやってきた音楽、『OUT』や12インチ・シングルで体得したこと、それ以降の気づきや新しいアイデアを全て折り合いが付けられるんじゃないかなと思った」

――そして、ニュー・アルバム『Extended』に先駆け、昨年9月に12インチ・シングルで新曲“Waves”がリリースされましたが、この曲がアルバム制作の指針になったということなんでしょうか?

「そうですね。曲自体が出来たのは、2015年の年末くらいなんですけど、この曲を作っていく過程で、バンドで表現できる範囲内のミニマルなフレーズとこれまで培ってきたオーセンティックなバンド・サウンドの折り合いをつけようと試行錯誤するなかで、よくよく考えたら、レゲエが自分たちの求めるものを満たすフォーマットであることに気が付いたんですよ。オーセンティックな音楽であると同時にベース・ラインは特定のパターンをループさせているし、上音も究極のミニマルなフレーズが裏打ちで鳴らされている」

――そして、レゲエは、『OUT』のリミックスから着想したゆったりしたテンポの曲のアイデアにも合っていますもんね。

「そうなんですよ。当初、“Waves”はもっとテンポが速かったんですけど、スタジオで音を合わせているときにテンポを落として、演奏にレゲエのマナーを織り込んでみたら、全てのピースがぴったりハマったんです。YSIGはもともとパンク・バンドとして始まったバンドなので、曲のテンションの設定が最初から高かったりするんですけど、この曲ではそういうアプローチではなく、緩くもあり、同時に力強くもあるレゲエのグルーヴと共に低空で進んでいくような曲のおもしろさを形にすることができて、2、3年続いていた試行錯誤の状態からバンドが大きく前進するような、そんな手応えを感じたんです」

――そもそも、リミックスという手法はダブ・ミックスが元になっているわけですし、フランソワ・Kが手掛けたD・トレイン“Keep On”のダブ・ミックスやラリー・レヴァンの『Padlock』、ディスコ・レゲエの名曲、リスコ・コネクション“Ain't No Stopping Us Now”、ダブ・テクノの流れを生み出したベーシック・チャンネルなど、ダンス・ミュージックとレゲエ、ダブは昔から密接な関係にありますもんね。

「そうです、そうです。そして、レゲエはパンク、ハードコアとも近い関係にあるし、そのことに気づいて、あれ?って思いました(笑)。そして何より重要だったのは、そのアイデアを頭で考えたわけではなく、バンドでこねくり回した末に辿り着いたということ。だからこそ、その手応えがバンドの大きな推進力になったんだと思います」

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