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上間綾乃『タミノウタ~伝えたい沖縄の唄』 唄者(うたしゃ)としての沖縄民謡集

上間綾乃『タミノウタ~伝えたい沖縄の唄』 唄者(うたしゃ)としての沖縄民謡集

唄者としての沖縄民謡集

 沖縄の若手唄者を代表する上間綾乃が、新境地ともいえる作品集『タミノウタ~伝えたい沖縄の唄』を発表した。タイトルからもわかる通り、沖縄民謡、もしくは沖縄をテーマにした楽曲のみが選ばれている。そして、三線の弾き語りをメインにオーソドックスなアレンジでていねいに歌い込まれているのだ。彼女がここまで正面切って沖縄に向き合ったのは、メジャー・デビュー以来初めてではないだろうか。

上間綾乃 タミノウタ~伝えたい沖縄の唄 Columbia(2017)

 上間がメジャー・デビューしたのは、2012年のこと。すでに地元沖縄ではそれなりにキャリアはあったが、ポップスやロック、歌謡曲にいたるまで様々な音楽性を果敢に導入しながら、沖縄のシンガーに対する画一的なイメージを少しずつ押し広げてきた。そして、そういった変遷を経て生まれたのが、今回の『タミノウタ~伝えたい沖縄の唄』だ。ここに並んでいる楽曲は、いわゆる沖縄の唄ばかりで、新しい可能性を探るような奇抜さは見られない。曲名だけ眺めていると、非常に保守的な方向に進んでしまったかのようにも思える。

 しかし原点回帰ともいえるこの選曲には、彼女なりの深い意味がある。例えば、ウチナーグチ(沖縄言葉)に翻訳された《島唄》などはまさにその想いがつまった楽曲だ。誰もが知るTHE BOOMの名曲をあえて方言で歌うことにより、沖縄の歴史や文化に目を向けてもらうきっかけを作ろうとしている。また、《PW無情》や《ひめゆりの唄》などからは、昨今の穏やかでない社会情勢に対する考えや平和の願いなどが汲み取れるはずだ。そして、民謡を歌っていても、ポップスを歌い込んできた経験が生かされ、非常にシンプルで聴きやすく、何十年も前の古い歌なのに、まるで彼女のために新たに書き下ろされたような感覚になる楽曲も多い。これは、この数年で培ってきたキャリアの賜物だろう。

 本作はこれまでの上間綾乃の集大成であると同時に、新しいチャレンジのひとつでもある。今後どのように展開していくのかを楽しみにしながら、じっくり噛みしめるように聴きたい一作だ。

 


LIVE INFORMATION

5th album発売記念 上間綾乃ツアー2017~タミノウタ
○8/7(月)18:30・21:30開演(2ステージ) 会場:大阪・Billboard Live OSAKA
○8/9(水)18:30・21:15開演(2ステージ) 会場:名古屋・NagoyaBlueNote
○9/5(火)18:30・21:00開演(2ステージ) 会場:東京・COTTON CLUB
columbia.jp/uemaayano/

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