面白い人たちとぶつかり合うことで自分の新たな扉が開けていく

 尺八演奏家の藤原道山がデビュー15周年記念のベスト盤、『道』を日本コロムビアから発表した。あえて邦楽奏者として論じると、マリンバのSINSKEからチェロの古川展生(藤原を含むユニット、KOBUDOの一員)、ウィーンのシュトイデ弦楽四重奏団、沖縄のシンガー上間綾乃、三味線の上妻宏光まで多彩な共演者の顔ぶれと、バルトークの名曲〈ルーマニア民俗舞曲〉とスーパー歌舞伎や映画のために書いた楽曲を含む自作(うち3曲は新作)が平然と並ぶ選曲の両面で、驚きを禁じ得ない。

――すっかり作曲家の顔も。

 「10周年以降の5年間の活動の集大成です。長く自分は演奏家であって、作曲家ではないと思っていました。ところがSINSKEさんとの共演が始まると、マリンバと尺八の編成のオリジナル曲がほとんどなく、自分で書かざるを得ない。やがて三谷幸喜さんの芝居やスーパー歌舞伎など舞台の音楽を手がけ、今年は吉永小百合さんが朗読する〈第二楽章 福島への想い〉(ビクター)でアルバム全体の音楽を担当するなど、まさかの展開です。演奏の積み重ねを通じてもだんだん、自分の出したい音、表現への欲求が強まり、それが他では得られない場合、進んで作曲するようになりました」

藤原道山 Columbia(2015)

 ――15周年はオーケストラとの共演です。

 「両親とも大変な音楽好きで、子どものころから様々な音楽に接してきました。中でも生(アコースティック)の楽器の音が重なり合うオーケストラにひかれます。今年8月、サントリーホールでの15周年記念コンサートでは山田和樹さんが指揮する横浜シンフォニエッタと共演し、邦楽器と西洋オーケストラのための楽曲の出発地点である武満徹さんの〈ノヴェンバー・ステップス〉から最新の川島素晴さんの〈尺八協奏曲〉までの作品を一気に再演します。毎年どこかのオーケストラと共演する機会を授かるのは光栄ですし、若さあふれる山田さんのチームとの初共演も楽しみです」

――コラボレーターの幅はますます広く、多彩になります。

 「私が東京芸術大学音楽学部の同期にも弥勒忠史(カウンターテナー)、宮本益光(バリトン)、加藤昌則(コンポーザーピアニスト)ら、色々な分野で面白い仕事をしている友人がたくさんいて、互いに刺激を与え合う。もともと好きなことしかやらないし、時々で興味の関心も移っていく。気分屋なのかもしれません(笑)。とにかく常套手段でないことに挑む共演者と出会い、真摯に向き合う中で、自分の新たな扉が開けていくのは素晴らしいことです」

【参考動画】藤原道山&シュトイデ弦楽四重奏団の2011年のアルバム『FESTA』収録曲“MINORI”

 

LIVE INFORMATION

〈藤原道山 15th Anniversary コンサート〉
○8/24(月) 開場:18:00/開演:18:30
会場:サントリーホール 
出演:藤原道山(尺八)/山田和樹(指揮)/横浜シンフォニエッタ
曲目:
・武満徹:ノヴェンバー・ステップス
・川嶋素晴:尺八協奏曲 他
http://www.dozan.jp/