7つの大輪から選ばれた15枚の花びら~幸田浩子初のベスト盤

 7つの大輪の花、そう呼んでも良いだろう。ソプラノ歌手・幸田浩子がこれまでにリリースした7枚のアルバム。その7枚から幸田自身が悩みに悩んで選んだ15曲が「幸田浩子マイベストセレクション」というタイトルでリリースされた。初のベスト盤である。

幸田浩子 幸田浩子 マイ・ベスト・セレクション Columbia(2017)

 「2008年に最初のモーツァルトの作品集をリリースして以来、これまでに多くの方の応援、協力を得て、この7枚のアルバムを出すことが出来ました。それぞれのアルバムにとても楽しい思い出が詰まっていて、それぞれのアルバムの個性もまた違うので、どうやってベストの選曲をしようか、迷ったのですが、ともかくこれまでのファンの方にも、またこれからのファンの方にも聴いて頂きたい曲を選ぼうと、自分なりに選んだ結果がこの15曲です」

 幸田の声はソプラノの中でも軽めで、役柄で言えば『フィガロの結婚』のスザンナ、『ばらの騎士』のゾフィーのような、いわゆる「娘役」にぴったりの透明感のある声質だ。そして「魔笛」の夜の女王のような技巧的に難しい役も歌えるテクニックを持つ。そうした声の個性を活かした録音が次々とリリースされた。

 「その時点でトライしてみたい音楽の方向性、本当に歌ってみたい作品を取り上げてきました。時代も音楽性も違う感じですが、常に私が全力をかけて歌いたいもの、ということは不変でした」

 モーツァルトから始まり、ヘンデルなどバロック時代の作品を取り上げ、ベルカント時代のイタリア、フランスのコロラトゥーラのためのオペラアリアを歌い、縁のあるウィーンのオペレッタ、そして日本の歌に加え、母の思い出につながる歌まで、彼女の歌の世界はとても広い。

 「今回、改めて過去の録音を聴いてみたのですが、自分のその時その時の気持ちに正直に進んで来た、その結果がこれなんだ、と実感しました」

 意外と思ったのは、長い年月にわたって録音されているのに、彼女の声の質に変化がないことだった。

 「最初の時から常に同じスタッフの方が録音をして下さっているので、私の声の良いポイントを熟知してくれているという要素が大きいと思います。録音の場所はとても様々なのですが。ありがたいことですね」

 と、優しい笑みを浮かべる幸田。歌手としてだけでなく、人間としての彼女の人柄も映し出すようなベストアルバムになったと思う。

 「これまで私の歌を聴いて下さった方々も、きっとまた新しい私を発見してくれる、そんなアルバムになったら嬉しいですね」

 と彼女は付け加えてくれた。

 


LIVE INFORMATION

『ばらの騎士』オペラ全3幕 字幕付原語[ドイツ語]上演
作曲:リヒャルト・シュトラウス 台本:フーゴー・フォン・ホフマンスタール
○7/26(水)18:00開演 27(木) 29(土)30(日)14:00 開演 会場:東京文化会館 大ホール
○10/28(土)29(日)14:00 開演 会場:愛知芸術劇場 大ホール
○11/5(日)13:00開演 会場:iichikoグランシアタ

セバスティアン・ヴィグレ(指揮)リチャード・ジョーンズ(演出)
出演:幸田浩子(ゾフィー)林正子(元帥夫人)妻屋秀和(オックス男爵 小林由佳(オクタヴィアン)他
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