「いちばん美しく心地良いのは声とオーケストラ、舞台と客席のすべてが溶け合い響きあうことです」――幸田浩子、リサイタルを語る

 昨年(2018年)暮れにCDデビュー10周年記念アルバム『ARIA 花から花へ〜オペラ・アリア名曲集』(日本コロムビア=ラルフ・ワイケルト指揮、チェコ国立ブルノ・フィルハーモニー管弦楽団と共演)をリリースしたソプラノ歌手、幸田浩子が同名のリサイタルを2019年7月6日、東京・四ツ谷の紀尾井ホールで開く。ビルボードジャパンの主催だけに、照明から字幕、華道家による舞台装花まで普通の「声楽家独唱会」と全く異なるスタッフ・チームを組む。「客席と一体の〈劇場〉を紀尾井ホールの空間につくります」と、幸田は意気込む。

 「ソロのアリアだけでドラマを理解していただくのも大変でしょうから、それぞれのヒロインの恋や愛、時には憎しみなど色々な感情の相手となる男性役として、テノールのジョン・健・ヌッツォさんをお迎えします」。ヌッツォについては「生まれながらのテノール歌手。今年1月にご一緒したときもリハーサルの段階からテンションが高く、投げキッスのポーズをきめたりしていました。人間力に大きな魅力があり、それがすべて、彼の歌にも現れるので素敵です。オペラティック・リサイタルの醍醐味をお客様に体感していただきたいと思っています」

 改めて今回の選曲に触れ、「10枚目のレコーディングにあたり、これからの10年をともに生きていきたい愛しいヒロインたちのARIAを選びました。素晴らしい指揮者、オーケストラの方々との機会を授かり、ヴェルディの『椿姫(ラ・トラヴィアータ)』から、1幕の“花から花へ”と3幕の“さようなら”のアリアをCDの冒頭に入れました」と、アルバムタイトルの背景を明かす。オペラのカペルマイスター(楽長)として豊かな経験を持つワイケルトとは、過去にR・シュトラウス『ナクソス島のアリアドネ』『ばらの騎士』の舞台を共演、気心知れた仲だったのが幸いした。

 リサイタルでも後半に、その歌い込んだ『椿姫』の2つのアリアと『リゴレット』からのヴェルディを特集する。前半は『ジャンニ・スキッキ』『つばめ』『マノン・レスコー』『ラ・ボエーム』と、プッチーニで固めた。ピアノは藤満健。「作曲とピアノの本業だけでも素晴らしいのに、オペラのアリアも歌えるし、アマチュアオーケストラではヴァイオリンも弾くし……。とにかく、才人です。リサイタルの歌の間をつなぐピアノソロ曲の作曲までお願いしています。ひとりオーケストラの響きをぜひ、ご堪能ください」

 藤満とは2011年、東日本大震災の直後に「私が姉のヴァイオリニスト、幸田さと子と初めて一緒に企画して、共演したチャリティ・デュオコンサートで知り合いました」。さと子は神戸市在住で阪神淡路大震災を経験しているので「今度は東北の皆さんを支援する立場に回ったのだから、10年は続けよう」といい、今年5月12日の神戸新聞松方ホールで第9回まできた。「チャリティを続けるうちに、何かに一歩を踏み出し、そこで得た知識や感覚から次の一歩が生まれる大切さを学んできました」。人と人の心を音でつなぐ音楽の素晴らしさ。「いちばん美しく心地良いのは声と楽器、舞台と客席のすべてが溶け合い、響きあうことです」と、幸田は長いキャリアを通じて実感してきた。

 最後に、「次の世代の聴衆、観客をどう増やしていくか」について尋ねてみた。「私の場合、オペラの舞台でも『魔笛』『ウェルテル』『ヘンゼルとグレーテル』『夜叉ヶ池』『竹取物語』など、子どもたちと共演する作品への出演の多いことが、1つのヒントになります。音楽って楽しいと感じてくれると、他の私の次の公演にも足を運んでくれるのです。中には〈オペラ歌手を目指します!〉と、音楽大学を受験する子までいます。舞台の上で次のお客様も育てられるなんて、歌手冥利です」

 


幸田浩子 Hiroko Kouda(soprano)
東京藝術大学首席卒業。同大学院、文化庁オペラ研修所を修了後、ボローニャ、ウィーンに留学。数々の国際コンクールで上位入賞後、欧州の主要歌劇場へ次々とデビュー。2000年、名門ウィーン・フォルクスオーパーと専属契約。帰国後は、新国立劇場、びわ湖ホール、東京二期会など数々のプロダクションで、「ナクソス島のアリアドネ」のツェルビネッタ、「リゴレット」のジルダ、『魔笛」のパミーナ等を演じ好評を博す。また、幸田をかぐや姫役に想定して作曲されたオペラ「竹取物語」は、2014年の初演以降海外でも公演するなど称賛されている。その他主要オーケストラとの共演や全国各地でのリサイタルなど多彩な活動を展開。二期会会員。

 


LIVE INFORMATION
幸田浩子 THE OPERATIC RECITAL ―ARIA 花から花へ―
~テノール ジョン・健・ヌッツォを迎えて~

2019年7月6日(土)東京・紀尾井ホール
開場/開演:13:30/14:00
出演:幸田浩子(ソプラノ)/ジョン・健・ヌッツォ(テノール)/藤満健(ピアノ)
舞台演出:馬場紀雄
舞台装花:大泉麗仁(華道家)
舞台監督:大澤裕
照明:上杉圭太郎

■演奏曲
プッチーニ:
オペラ「ジャンニ・スキッキ」より“わたしの愛しいお父さま”
オペラ「ラ・ボエーム」より“私の名はミミ” “愛らしい乙女よ”

ヴェルディ:
オペラ「椿姫」より 乾杯の歌“ああ、そは彼の人か~花から花へ”
オペラ「リゴレット」より“女心の歌” ほか

※字幕付
※曲目は変更になる場合がございます。あらかじめご了承ください

http://billboard-cc.com/classics/kouda-nuzzo-2019/