COLUMN

カマシ・ワシントンやクリス・デイヴ、ジェイコブ・コリアーら〈Blue Note JAZZ FESTIVAL〉出演の新世代6組を紹介!

〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2017〉特集:第1回

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  • 2017.08.24

NYで2011年にスタートした一大イヴェント〈Blue Note JAZZ FESTIVAL〉が、今年も日本に上陸。3度目の開催となる〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2017〉(以下〈BNJF〉)が、9月23日(土・祝)~24日(日)に横浜・赤レンガ野外特設ステージで行われる。今年は初の2日間開催と、さらにヴォリュームを増した同フェス。ドナルド・フェイゲン&ザ・ナイトフライヤーズがヘッドライナーとして両日出演することも大きな話題を集めている。

過去2年、Mikikiでは〈BNJF〉を紹介してきたが、今年も全4回に渡る総力特集をお届けしよう。この第1回では、〈新世代〉という切り口で、リアン・ラ・ハヴァス、ムーンチャイルド、カマシ・ワシントン、グレゴリー・ポーター、クリス・デイヴ&ザ・ドラムヘッズ、ジェイコブ・コリアーというフレッシュな感性で時代を開拓していく6組をピックアップ。音楽ジャーナリストの原雅明が、それぞれの魅力やライヴの観どころを考察した。 *Mikiki編集部

 

リアン・ラ・ハヴァス
9月23日(土・祝)/DIZ STAGE

ロンドンで生まれ育ち、ギリシャ人の父とジャマイカ人の母を持つシンガー・ソングライター、リアン・ラ・ハヴァスがアルバム『Is Your Love Big Enough?』でデビューを飾ったのは、2011年、彼女が22歳のときだった。スモーキーでちょっと翳りのある、しかし伸びやかなヴォーカルと、ギターを中心にした生楽器の響きを活かしたプロダクションが彼女の音楽を際立たせていた。時流に流されないタイムレスな魅力と、さまざまな音楽に繋がっていく開かれた音楽性を感じさせた。

その才能は直ぐさま認められ、プリンスは彼女をジョニ・ミッチェルと比較して褒め称え、『Art Official Age』(2014年)の録音にフィーチャーし、 〈Saturday Night Live〉で共演もしている。ファースト・アルバムのツアーを勢力的にこなす頃には、彼女の人気は決定的なものとなった。そのツアーを終えると、彼女はジャマイカを旅して、自身のルーツと向き合い、次のアルバムのインスピレーションを得た。そうして、2015年にリリースされたのがセカンド・アルバム『Blood』である。

2015年作『Blood』収録曲“Unstoppable”
 

このアルバムで彼女はその才能を大きく開花させた。ヴォーカルにはさらに磨きがかかり、プロダクション面ではストリングスの導入など音楽性の幅を大きく広げ、ビジュアルのイメージも刷新して、コンテンポラリーでモダンなソウル・シンガーの誕生を印象付けた。ロバート・グラスパーの新曲“The Cross”でコモンと共演するなど、活動の幅も広げていて、いまもっともライヴを観たいシンガーの1人である。

2015年作『Blood』収録曲“Midnight”のパフォーマンス映像

 

ムーンチャイルド
9月23日(土・祝)/DIZ STAGE

ムーンチャイルドは、名門と言われる南カリフォルニア大学ソーントン音楽学校でジャズを学んでいたアンバー・ナヴラン、マックス・ブリック、アンドリス・マットソンによって、在学中の2012年に結成された。そして、ほどなくセルフ・リリースでファースト・アルバム『Be Free』(2012年)を発表する。ベン・ウェンデルらをゲストに招いたこのアルバムは、かつてネオ・ソウルと呼ばれたサウンドに素直にシンパシーを表明して、クールでソウルフルなサウンドを確立し、少なからぬ注目を集めた。2014年にUKのトゥルー・ソウツからセカンド・アルバム『Please Rewind』をリリースすると、その人気はワールドワイドに拡がっていった。

2014年作『Please Rewind』収録曲“The Truth”
 

アンバー・ナヴランの澄み切ったヴォーカルを軸に、R&Bやヒップホップの影響を受けたハイブリッドで芯のあるサウンドが特徴だが、ロサンゼルスをベースに活動していることもあって、メロウでレイドバックした空気も大切にされている。独特の浮遊感がある空間が作られていくのも、ムーンチャイルドの魅力の一つだろう。

また、それぞれがマルチ・プレイヤーで、管楽器を中心にさまざまな楽器を演奏するので、心地良いなかにもジャズに裏打ちされた確かな演奏スキルが感じられる。特にライヴにおいては、ステージで複数の楽器を操るのはお手のものといった感じに、最小限の編成で(サポート・ドラマーを交えた4人編成になる)、実に豊かなアンサンブルを聴かせる。それは最新作『Voyager』(2017年)でさらに明らかにもなったが、録音物だけではなく、ライヴ・パフォーマンスにおいても突出したものを持っていることを感じとれるはずだ。

2016年7月に行われた来日公演でのライヴ映像

 

カマシ・ワシントン
9月24日(日)/DIZ STAGE

ロサンゼルスのサウス・セントラル出身のサックス奏者カマシ・ワシントンが、2015年にフライング・ロータスのレーベル、ブレインフィーダーから3枚組というヴォリュームのアルバム『The Epic』で登場したことは、大きなトピックとなった。ケンドリック・ラマーの『To Pimp A Butterfly』(2015年)への参加などもあって、カマシと彼の周辺で活動するミュージシャンたちへの関心はどんどん高まっていった。

2015年作『The Epic』収録曲“Re Run Home”
 

だが、カマシは突然登場したわけではない。彼らが〈ムーヴメント〉と呼ぶように、カマシ、サンダーキャット、ロナルド・ブルーナー・ジュニア、キャメロン・グレイヴス、マイルス・モズレーなどは、それぞれがミュージシャンとして腕を磨き、キャリアを重ねていくなかで、自分たちの基盤である〈ジャズ〉をプレイする場を常に大切にしてきた。そして、30日間に及ぶスタジオ・セッションで、カマシたちは170曲もの楽曲を録音した。そこから、『The Epic』などそれぞれのソロ・アルバムが生み出されていったのだ。

カマシの風貌とダイナミックな演奏は、ブラック・ミュージックとしてのパワーを持っていた、60年代から70年代にかけてのジャズを思い起こさせるが、同時にヒップホップやR&Bなど、現在進行形のサウンドをミュージシャンとして演奏してきた経験が、彼の〈ジャズ〉を更新してきた。カマシが極めて現代的な感覚を持った音楽を作り出していることは、XXやFKAツイッグスなどを擁するUKのレーベル、ヤング・タークスと新たに契約を結んだことが象徴しているだろう。大きなフェスへの出演も経てきた、カマシのさらにパワーアップしたステージは必見だ。

2015年作『The Epic』収録曲“The Rhythm Changes”のライヴ映像

 

グレゴリー・ポーター
9月24日(日)/BIRD STAGE

グレゴリー・ポーターは遅咲きの人だ。デビュー・アルバム『Water』を発表したのは、40歳になろうという頃だった。しかし、2010年にリリースしたこのアルバムは、いきなりグラミーの〈ベスト・ジャズ・ヴォーカル・アルバム〉にノミネートされた。ジャズ・ヴォーカルの世界に新しい風を吹き込んだからだ。怪我のために挫折をしたが、アメリカン・フットボールの選手として将来を嘱望されていた恵まれた体格は、圧倒的な声量と豊かな音域を与えた。

その発見されたバリトン・ヴォイスに多くの人々が魅了されることになったが、現ブルーノートのCEOであるドン・ウォズもその1人だ。みずから熱心に契約に動いて、アルバム『Liquid Spirit』(2013年)のブルーノートからのリリースを実現した。そして、見事に翌年のグラミーで待望の〈ベスト・ジャズ・ヴォーカル・アルバム〉を受賞し、名実共にグレゴリー・ポーターは現在のブルーノートを代表するシンガーとなった。

2013年作『Liquid Spirit』収録曲“Liquid Spirit”
 

ポーターは、自身も影響を口にしているマーヴィン・ゲイやビル・ウィザースなどの男性ソウル・シンガーの系譜も受け継ぐだけの技量と才能を持っている。オーセンティックで堂々とした歌いぶりは、ジャズのみならず、ソウルやハウス(代表曲“1960 What?”はクラブでもヒットした)のファンも魅了した。そして、2017年、最新アルバム『Take Me to the Alley』でも再度グラミーに輝いている。

2010年作『Water』収録曲“1960 What?”のライヴ映像

 

クリス・デイヴ&ザ・ドラムヘッズ
9月24日(日)/DIZ STAGE

近年ドラマーへの注目/関心が高まっているが、それはこのクリス・デイヴの活躍から始まったと言っても過言ではない。テキサス州ヒューストンに生まれ、教会で出会ったドラムと、父と一緒に聴いたジャズが彼の将来を決定付けた。大学で学んでいるときにジャム&ルイスに認められ、ミネアポリスのR&Bバンド、ミント・コンディションの録音に参加して以来、ミシェル・ンデゲオチェロ、マックスウェル、ケニー・ギャレット、ロバート・グラスパー、アデル、ディアンジェロなどなど、さまざまなアーティストから声が掛かり、録音やステージを共にしている。

2014年のライヴ映像
 

ユニークなドラム・セットで、J・ディラのよれたビートからアフロ・ビートまでを涼しい顔をして叩き出すプレイは、ドラムという楽器の可能性を広げると共に、そのドラムを媒介にして音楽シーン全体を活性化させているとも言える。彼のメイン・プロジェクトであるドラムヘッズでの活動はまさにそうだ。出自であるゴスペルやジャズから、ヒップホップ、R&B、レゲエやロックまでがシームレスに繋がっていく。ドラムヘッズが今年6月に発表したミックテープ『Drumhedz Radio Show』は、優れたDJミックスがそうであるように、タイプの異なる音楽が次々と展開されていく。しかもラジオ・ショー仕立てで、クエストラヴから始まって、グラスパーやカマシ・ワシントン、DJジャジー・ジェフからジェイソン・モランやドン・ウォズまでがシャウトアウトで登場するという楽しい構成だ。これを聴くだけでも、今回のステージへの期待は高まる。

 

ジェイコブ・コリアー
9月24日(日)/DIZ STAGE

1994年にロンドンで生まれたジェイコブ・コリアーは、2013年にスティーヴィー・ワンダーの“Don't You Worry 'Bout A Thing”のカヴァー演奏を収めた映像をYouTubeにアップして、いきなり有名な存在となった。当時まだ19歳になったばかりの若者が一人でアカペラをし、多数の楽器も弾きこなしてみせる様子は瞬く間に世界に拡散された。その映像は単にアクロバティックなことを見せていたわけではなく、その歌と演奏に飛びきりのセンスと才能があることを示していたからだ。そして、一枚のアルバムもリリースしないまま、その存在をハービー・ハンコックやクインシー・ジョーンズまでが褒め称えるということにまで発展した。

そして、いきなり〈モントルー・ジャズ・フェスティヴァル〉のステージに立つという快挙も成し遂げた。しかも驚くべきことに、彼はライヴにおいても、すべての楽器を1人で演奏し、あのYouTubeの映像をそのまま再現するかのようなワンマン・パフォーマンスを見せた。その仕組みはマサチューセッツ工科大学との共同プロジェクトで開発されたテクノロジーが駆使された。

だが、そうしたセンセーショナルなパフォーマンスだけが彼の音楽性を特徴付けているわけではない。有能なミュージシャンの柔軟性あるコレクティヴとして多方面から注目を集めるスナーキー・パピーが、ジェイコブを録音に招いたように、彼の音楽性はネットだけではなく、リアルな音楽空間においても確実に浸透しはじめている。

ジェイコブ・コリアーの2016年作『In My Room』収録曲“Don't You Know”のライヴ映像

 


〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2017〉
2017年9月23日(土・祝)、24 日(日) 横浜赤レンガ野外特設ステージ
開場 /開演:11:00/12:00
出演:
23日(土):ドナルド・フェイゲン&ザ・ナイトフライヤーズ/デヴィッド・サンボーン&ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラ directed by エリック・ミヤシロ/JUJU with TAKUYA KURODA BAND from NY/ロイ・ハーグローヴ's・RHファクター/リアン・ラ・ハヴァス(ソロ)/ムーンチャイルド ほか
24日(日):ドナルド・フェイゲン&ザ・ナイトフライヤーズ/カマシ・ワシントン/上原ひろみ×エドマール・カスタネーダ/ グレゴリー・ポーター/クリス・デイヴ&ザ・ドラムヘッズ/ジェイコブ・コリアー ほか
各日の料金(税込、1D別):S指定席/24,000円(特典あり)、A指定席/16,000円、スタンディング/11,000円
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