INTERVIEW

オデッザ『A Moment Apart』 現代的なポップ・スタンダードを更新してきたコンビが、新作に込めたオーガニックな進化を語る

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  • 2017.09.08
オデッザ『A Moment Apart』 現代的なポップ・スタンダードを更新してきたコンビが、新作に込めたオーガニックな進化を語る

 「最初のアルバムは、まだ俺たちがお互いを知ろうとしていた感じで、2作目ではソングライターになる勉強をしていた感じ。あの作品ではヴォーカルを起用するようになったしね。で、新作では、そうやって築いてきた持ち味に深みを与えているんだ。曲のフォーマットよりも、サウンドスケープにより力が入っているんだよ」(ハリソン・ミルズ)。

 そう語るハリソンとクレイトン・ナイトによるシアトル発のプロデューサー・ユニット、オデッザ。〈最初のアルバム〉とは自主制作による『Summer's Gone』(2012年)のことだが、カウンターと契約して2作目『In Return』(2014年)を世に出して以降の活躍は、もう説明不要だろう。Spotifyでの総再生数は5億回超、YouTubeでも4億回超えという人気ぶりは言わずもがな、その支持を裏付けに世界各地で行ったショウも、コロラドはレッドロック野外劇場での2デイズ公演(約2万枚のチケットが即ソールドアウト!)をピークに破竹の成功を収めている。バイラルな現象の広がりという点でチェインスモーカーズを思い出す人も多かろうが、実際にダンサブルな昂揚感とベッドルーム的なフィーリングの融和した音世界の多幸性は、チェインスモーカーズやメジャー・レイザー、あるいはコールドプレイやカイゴ、フランシス・アンド・ザ・ライツらがここ数年で一般化してきた多様なフォーミュラを繋ぐものだ。まあ、ドリーミーに煌めく音飾とクランチーなビート処理、アトモスフェリックで聖性を帯びたハーモニー加工……と現代ポップスの標準装備はもう大前提として、およそ3年ぶりとなる新作『A Moment Apart』でオデッザが試みたのは、冒頭の発言にもあるように、前作で習得したソングクラフトの純粋な質的向上だったわけである。

ODESZA A Moment Apart Counter/BEAT(2017)

 

「アイデアはたくさんあったから、着手するのは簡単だったんだ。でも、そこにもう10%の何かを加えて曲をまとめ、完成させるのが大変だった。その10%を考えて、すでにあるアイデアとうまく混ぜ合わせるのにすごく時間がかかったからね(笑)」(クレイトン)。

 「今作は意識していた通りに仕上がったと思うよ。これまでの作風を活かしながら、そこにオーケストラルでシネマティックな要素を採り入れて進化させた感じかな。よりイキイキしたダイナミックで美しい楽器演奏をこれまでの音にうまく加えることができた」(ハリソン)。

 「細かく言えば、ストリングがもっと増えたし、よりオーガニックになった。前作よりもオーガニックになったことは特徴的な変化かな」(クレイトン)。

 〈らしさ〉を立体化する“Meridian”のように雄大なインストも圧巻ながら、前作同様に軸となるのは半数を占めるヴォーカル・トラックだ。前作から一新されたシンガー陣は、プリズマイザー系の疑似クワイアで壮麗な景色を描く“Corners Of The Earth”でのライXをはじめ、“Higher Ground”で儚い美声を披露する新人のナオミ・ワイルド、“Across The Room”にブルージーな熱情を注ぐリオン・ブリッジズ、他にもレジーナ・スペクターやケルシー・バルキン(メイド・イン・ハイツ)など、曲ごとの草案から導き出された声が有名無名を問わず起用されている。

 「基本は自分たちが知っていたり、ファンだったりする人が多いね。曲のイメージが湧いてきたら、それに合いそうなシンガーを考える。でも、イメージ通りのことをやってくれるだけの人じゃなく、そこにまた違う何かを加えてくれそうなアーティストを選んだんだ。今回はデータをやりとりするだけじゃなく、早い段階からシンガーと一緒に曲作りして、より作業に関わってもらった」(ハリソン)。

 そんな傑作『A Moment Apart』を携えて9月からは過去最大規模の世界ツアーも行なうオデッザ。来日公演の有無は未定ながら、まずは彼らがアルバムに込めた、聴き進めるごとに視界が開けていくような展開の妙を体感しておくのが先だろう。

 「俺たちの作品は1つの曲よりも大きな世界の中で成り立つものだからね。ソングリストってだけじゃなく、全体を順番に聴きたくなるような中身のある作品を作りたいし、皆に最初から最後までアルバムを流れで楽しんでほしい。雑念から離れて、ある特定の空間に自分がいるような、そんな旅に出てほしいんだ」(ハリソン)。

 


オデッザ
シアトルを拠点とするハリソン・ミルスとクレイトン・ナイトのユニット。ウェスタン・ワシントン大学で出会った両者が2012年に活動をスタートし、同年にファースト・アルバム『Summer's Gone』をリリース。Hype MachineやSoundCloud、Spotifyを中心に大きな支持を集め、2014年にカウンターと契約する。同年のセカンド・アルバム『In Return』から“Say My Name”“All We Need”などがヒットを記録。並行してシーアやチャーリーXCX、RAC、ポーター・ロビンソンらのリミックスも手掛けていく。今年に入ってからシングル“Corners Of The Earth”も話題を集めるなか、ニュー・アルバム『A Moment Apart』(Counter/BEAT)を9月8日にリリースした。