INTERVIEW

ODESZA 『In Return』

Already Signed Hype~ネット・ネイティヴの絶大な支持を集めるシアトルの2人組が、ニュー・アルバム『In Return』をいよいよフィジカル・リリース。新時代のエレクトロニック・ミュージックはここにあるのか?

ODESZA 『In Return』

 YouTubeでの再生回数が億単位にまで伸びる何かがある一方、同じ系統のように思えてもその数千万分の1しか知られていないものがあったりする昨今。とにかく、すでに知られているものしか知られていかなくなっているという状況は確実にある。で、そんな現状追認に拍車が掛かるばかりなご時世ならではの新進アクトとして脚光を浴びているのが、ハリソン・ミルスクレイトン・ナイトから成るシアトルの2人組、オデッサだ。2012年に自主制作でリリースしたファースト・アルバム『Summer's Gone』収録の“How Did I Get Here”と“iPlayYouListen”がHype Machineのポピュラー・チャートで首位をマークし、SoundCloudのストリーミング数が1500万回以上、Spotifyでの再生回数も750万回以上を誇り、ストリーミング世代からの絶大な支持を得ている(資料より)。ユニット名を聞いてすぐに〈オデッサの激戦〉とか思い出してしまう世代はお呼びじゃないのかもしれないが、彼らは〈コーチェラ〉出演などを通じてライヴ・パフォーマンスでも成功を収め、また異なる層へも人気を拡大しつつある有望株なのだ。

ODESZA In Return Counter/BEAT(2014)

 「シアトルは一般的に、晴れの日が少ない場所なんだ。だから屋内にいる時が多いから、音楽を作る機会も自然と多くなる。太陽が望める期間は一瞬しかないから、みんな、その瞬間を逃さずに捉えようとする。俺たちの音楽にも、そういう、一瞬しかない瞬間を捉えようとする感性があると思う」(ハリソン・ミルス:以下同)。

 その一瞬を表現しているからこそ、とにかく耳を掴むサウンドそのものが万人にとってのトリガーとなり、オデッサの個性として認知されてきたのだろう。ベッドルームに由来するマイルドなイノセンスを備えながら、青天井なスケールにも広がっていきそうな不思議な昂揚感と多幸感が彼らの電子音楽からは溢れてくる。いわば、チルアウトとダンス・ミュージックが多面的に折り重ねられているのだ。

 「もともとその2つのスタイルが俺たちだったんだと思う。俺がチルアウトなほうで、クレイがダンスのほう。俺たちが最初出会った時、作ろうとしていたのはそういう音楽だった。ヘッドフォンでも聴ける音楽で、ライヴで聴いたら踊れるような音楽。以来、そのスタイルが俺たちの音楽の基盤となっていったが、今回のアルバムでは特にそのスタイルをさらに成熟させ、前面に出そうとした。俺たちは昔から映画音楽が大好きだったから映画音楽の特性を真似て、オーケストラ的な要素も入れてみたりした。それと同時にポップ感も出し、ヒップホップの要素も散りばめた。できるだけいろいろなジャンルを取り交ぜ、多様な影響を採り入れながらも一貫性のあるアルバムを作ろうとした」。

 それは今回の『In Return』で見事に実現されている。メロディアスなヴォイス・サンプルの煌めきと、美しくバレアリックなビートの交歓。ザイラシャイガールズといったインディーな美声の輝き。あえて結論めいたことを言ってしまうならば……プラットフォームの話しかされないのは不幸なことでしかない、ということだ。注目作である。

TOWER DOORS
pagetop