INTERVIEW

Ms.Machine インタヴュー―2018年のライオット・ガール

(左から)MAKO、SAI、RISAKO
 

彼女たちのTwitterアカウントのトップには、こんな言葉が掲げられている。〈Ms.Machineは東京の新しいfemale punk bandです〉。そんな大胆不敵な宣言に面食らう者もいれば、〈いったいどんなバンドなんだろう?〉と興味をそそられる者もいるだろう。

Ms.Machineは、SAI(ヴォーカル)、MAKO(ギター)、RISAKO(ベース)、YUSUKE(ドラムス、4月21日のライヴをもって脱退予定)からなる4人組で、2017年には〈FELINE〉というDIYイヴェントを二回主催している。その佇まいからは透徹した美意識が強く感じられるが、それは同時に、どこか近づきがたい雰囲気があるということでもある。ライヴでは、ハードコア・パンクとポスト・パンクとブラック・メタルが渾然一体となったようなショート・チューンを怒涛の勢いで観客に叩きつけ、ヴォーカルのSAIは大半の曲でたった一行の歌詞を繰り返し歌うだけ。短いセットを終えると、MCをするでもなく去っていく……。その刹那的なパフォーマンスは、観る者に強烈な印象を残す。

そんなMs.Machineが、尾角典子によるゴシックなアートワークも印象的なEP、『S.L.D.R』をリリースした。実質的なデビュー作を完成させ、4月21日(土)の〈Mikiki Pit〉への出演も控える彼女たちの実像は、しかし、いまだ謎に包まれたままだ。Ms.Machineとはいったいどんなバンドなのか? その疑問に答えを出すべく、深夜1時過ぎの渋谷で待ち合わせた私たちは、騒々しい居酒屋の小上がりで膝を突き合わせ、始発電車が走り始めるまで語り明かした。楽曲について、バンドのアティテュードについて、パーソナルな思いについて……。2018年のライオット・ガール、Ms.Machineが新しいシスターフッドをパンク・サウンドで定義する――SAI、MAKO、RISAKOの3人に行った以下のインタヴューは、そんな大仰なことを言ってみたくなるほどの希望や興奮に満ちている。

 

Ms.Machineは東京の新しいフィメール・パンク・バンドです

――まず、Ms.Machineが結成された経緯をお訊きしたいです。

SAI「2015年の……」

MAKO「7月です。武蔵美(武蔵野美術大学)のファッション・ショーにSAIがモデルで呼ばれてて、自分は手伝いで行ってたんです。SAIとは面識があったので、〈ひさしぶり〉みたいな感じで。SAIは当時、別のバンドでベースを弾いてたんですけど、〈ライヴが全然できないから、バンド組まない?〉って打ち上げのときに誘われたんです。私はギターをやってたことはあったけど、バンドはやったことがなくて、〈それでもいいなら〉って。そのときのドラマーも武蔵美の友だちでした。ほぼ勢いで組んだ感じですね」

――SAIさんはどうしてバンドをやりたかったんですか?

SAI「高校のときはガールズ・バンドをやってたんですけど、私以外仲が良くて、私だけ浮いてて。で、バンドで揉めたことがあって。ドラムの子が〈私だって目立ちたいのに、ヴォーカルの子ばっかり目立って何よ!〉って言い出して(笑)。渋谷のマックでみんな大号泣しながら(笑)」

一同「(笑)」

SAI「それで、〈ガールズ・バンド、めんどくせー! もう絶対やりたくない!!〉って思って(笑)。でも、やっぱりバンドをやりたいって思って、大学3年のときに早稲田のMMT(Modern Music Troop)に入ったんですけど、パンクをやりたい人がいなくて。

その頃、東高円寺のU.F.O. CLUBが、通ってた女子美(女子美術大学)に近かったので、よく行ってたんです。そこで、いまTAWINGSをやってるメンバーと知り合って、バンドを組んだんです。だけど、パンクっぽくないし、〈曲を作り込んでからライヴをやりたい〉って感じが合わなくて、辞めちゃいました」

2017年7月21日に開催された〈FELINE〉でのライヴ映像
 

――それがTAWINGSの前身バンドだったんですね。SAIさんはどうしてパンクをやりたかったんですか?

SAI「……好きだから、かなあ。私は学校で友だちがいなくて、バイト先でも仕事ができなくて、とにかく自分のことが肯定できなかったんですよ。それで、音楽もネガティヴなほうが共感できるんです。

普段の自分は本音が言えないんですよ。〈それはおかしいでしょ〉って言わなきゃいけない場面なのに、〈そうなんですか〉って飲み込んじゃう自分がいて。そういう日常レヴェルのフラストレーションが溜まりやすいんです。だから、パンク・バンドをやりたかったのは、本音をちゃんと言いたかったからかな」

――Ms.Machineはすごくコンセプチュアルなバンドに映るのですが、バンド名の由来はなんですか?

SAI「私の父親は単身赴任をしていて、ほぼ一緒に暮らしていなくて、母親が働きながら私のことを育ててくれたんですよね。私はADHDだし……タトゥーは入れるわ、ヌード・モデルはするわ、坊主にはなるわで、普通の子より大変だと思うんですが(笑)。だからずっと〈働く母親はすごい〉〈男の人に頼らない女の人はカッコいい〉という価値観で。女子美を進学先に選んだのも、女の人が作るアートが好きだからっていう理由でした。

あと、小説家の嶽本野ばらの作品とか、女の子が主人公のものが好きだったんですよ。彼の小説で『ミシン』っていうのがあって、ロック・バンドのヴォーカルの女の子の話なんですけど。〈Ms.Machine〉って略すと〈ミシン〉じゃないですか。それに、私の本名が〈彩衣〉っていうのもあって、服と関係したものにしたくて」

――なるほど。Twitterの〈Ms.Machineは東京の新しいfemale punk bandです〉という説明がわかりやすくていいなと思うのですが、ロール・モデルになったバンドはいますか?

SAI「私はクリスタル・キャッスルズが好きでした」

MAKO「あと、パーフェクト・プッシーだよね」

SAI「うん。〈女の人がヴォーカルの、カッコいい日本のパンク・バンドっていなくない?〉って話したよね。いないこともないんですけど、アンダーグラウンドすぎて、あんまりおしゃれじゃなくて(笑)」

――ははは(笑)。3人の音楽の好みはどうですか?

RISAKO「私とSAIちゃんは結構似てて、ポスト・パンクとかハードコアが好きなんです」

SAI「MAKOはもっと激しいメタルやハードコアが好きで」

RISAKO「それを組み合わせて良い感じにできないかなって。その中間点がパーフェクト・プッシーだったんです」

SAI「あと、椎名林檎の〈発育ステータス〉って期間限定のバンドがあって、田渕ひさ子がギターでトリプル・ベースなんですけど、あのダウナーな感じも好きでした」

パーフェクト・プッシーの2013年作『I Have Lost All Desire For Feeling』収録曲“I”
 

――結成からいまに至るまでの3年間を振り返ると、どうでしたか?

SAI「病んだ時期があって、バンドを辞めたくなったことが何回もあるんですよ。私はフリーのモデルをしてたんですけど、求められる像がたぶん〈パンクなSAI〉だったんですよね。実際にそれが求められていたのかわからないけど、必要以上にキャラクターを自分のなかで作りすぎてた。

でも、Ms.Machineでの自分やモデルをするときの自分、つまり表現するときの自分と、家やアルバイト先での自分はかなりキャラクターが違ってて。それがすごく辛くなったりしていました。キャラクターを演じるっていうか。攻撃的な自分ももちろん、自分の一面なんですけど」

――そこで齟齬や葛藤があった?

SAI「かなりありましたね。ライヴをやれない時期もありました」

 

どこにも属したくなくて、じゃあ自分でやろうって思ったんです

――Ms.Machineの自主企画の〈FELINE〉にはまだ行ったことがないのですが、どういうことをやろうとしているイヴェントなんですか?

SAI「ライヴには誘われることが多かったんですけど、〈これじゃない感〉がすごくて。それに、どこにも属したくなくて、じゃあ自分でやろうって思ったんです。〈シーンを作る〉みたいな大きなことは考えてないんですけど」

――イヴェント名の意味はなんですか?

SAI「〈ネコ科〉って意味です」

――調べると、〈ずるい〉〈しなやか〉〈人目を盗む〉という副次的な意味もあるようです。

SAI「そうなんですか? そこまでは考えてないです(笑)」

――ははは(笑)。猫が好きだから?

MAKO「猫が好き(笑)」

SAI「MAKOとRISAKOが猫、飼ってるから(笑)」

――〈FELINE〉の打ち出し方からは美意識や緩い連帯感を感じます。〈コミュニティー〉と言うと大袈裟ですが、そういう〈場〉を作ろうとしている意図はあるのでしょうか?

MAKO「企画を始めた当時、SAIが言ってたのは、生活してて生きづらいとか、居場所のなさをすごく感じてて、そういう人は他にもいると思うってことでしたね。私もそういう部分がありましたし。〈FELINE〉がそういう人たちの〈居場所〉じゃないですけど、そんな立ち位置になれたらいいみたいな」

――自主イヴェントの企画や運営をするのは大変だと思うのですが、〈FELINE〉を二回続けられたのは、手応えを感じていたからなのでしょうか?

SAI「一回目は(出演した)TAWINGSや菊地佑樹くんの力もあって、集客は良かったんです。私は普段Ms.Machineのライヴにあまり来ないような人たちに来てほしかったんですよね、おしゃれな若者とか(笑)」

MAKO「〈おしゃれな若者〉、いっぱい来てたね(笑)」

RISAKO「でも、私は一回目で〈やっぱり違うんだな〉と思って。そういう〈おしゃれな若者〉は、例えば、学校のカーストで言ったら、私たちと違うところにいるんじゃないかなって。そういう引け目っていうか、卑屈な気持ちになってきちゃって、ライヴでめちゃくちゃ暴れたんですよ。それで、最高のライヴができて(笑)。で、〈次はちょっと考えよう〉って思って、二回目に繋げた感じですね」

SAI「二回目はKLONNSとMOONSCAPEとスリーマンでやったんです。Ms.Machineの主張はフェミニズムとかで、音も激しいし、拒否反応を起こす人は最初でもうアウトだと思うんですよ。でも、GranuleのHIKARIくんとか、KLONNSのShu Oshimaくんとか、MOONSCAPEのHATEとかと話をしてて、ちゃんと話を聞いてくれて、信頼置けるなって思ったんです」

2017年10月17日に開催された〈FELINE II〉のトレーラー
 
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