Mikiki編集部のスタッフ4名が〈トキめいた邦楽ソング〉をレコメンドする週刊連載、〈Mikikiの歌謡日!〉。更新は毎週火曜(歌謡)日、新着楽曲を軸に私的マイブームな音楽を紹介していきますので、毎週チェックしてもらえると思いがけない出会いがあるかもしれません。紹介した楽曲はSpotifyとYouTubeのプレイリストにまとめているので、併せてお楽しみください! *Mikiki編集部

★〈Mikikiの歌謡日!〉記事一覧

Spotifyのプレイリスト
 
YouTubeのプレイリスト

 


【酒井優考】

COPTER4016882 “この気持ち”

この連載、新曲だけじゃなく〈私的マイブームな音楽〉も紹介していいらしいですね。なんだ〈私的マイブーム〉って、〈頭が頭痛〉か?

僕は〈ネオ渋谷系〉という音楽のジャンルにガツンとやられた世代のひとりで、でもネオ渋谷系のブームは一瞬で終わってしまって、あの頃のことをたびたび思い出しては〈あの時代はもう来ないのか〉って胸が苦しくなります。それぐらい優れた音楽がたくさんあって、シーンみたいなものが出来上がろうとしていました(けど消えちゃった)。

そのシーンの中心にいた中田ヤスタカ(当時はcapsule、いまはCAPSULE)のいまの活躍ぶりは言わずもがな。もうひとり、Plus-Tech Squeeze Boxのハヤシベトモノリもほとんど人前には出なくなっちゃったけどちょこちょこ名前は見かけるし、最近Twitterを始めてビックリしました。そしてCOPTER4016882は、個人的にcapsule、PSBと並ぶ3大ネオ渋谷系アーティスト。他の二者はいまでも語られることは多いけど、COPTER4016882だけはあまり知られていないし、3人のメンバーのその後がわからないのがどうにもこうにも寂しい。彼らの音源を聴く術も、(CDは売ってなくはないみたいだけどほとんど見かけないし、)ストリーミングではApple Musicにアルバムが2枚あるだけ。キラキラしててオシャンなコード満載のネオ渋谷系のなかでは、すごく素朴で、お母さんの手作りクッキーみたいな感じ。でも遊び心や変テコなサンプリングが満載で、すごく楽しくもある。一度だけ観たライヴでは、サポート・ベースのtozzanさんがウッドベースを弾きながら破壊してたなあ(笑)。

そういえばCOPTER4016882が活動しなくなってから、一度だけメンバーのウカイさんに連絡を取ってお手紙をいただいたことがありました。いまは何してるのかな。2000年代前半のことなのに遠い遠い昔のようです。

なぜこんなことを書いたかと言うと、編集部の田中さんを含め、社内やコレを読んだ人のなかにCOPTER4016882に近しい人がいるんじゃないか……という作戦です。誰か近況をご存知でしたらぜひお知らせください。いま聴いても最高だよ。こんな感じで今週の歌謡日スタートです(笑)。

 

chelmico “Balloon”

あー今回はハイじゃなくてロウな方のchelmicoだー! こういう曲でまみちゃんってラップだけじゃなく歌とラップを行き来するようなやつをやりがちで、それがめちゃくちゃカッコいいし、あ、ラップにも音程ってあるんだなって分かる(もちろんレイチェルもカッコいいよ!)。

 

蓮沼執太 “CHANCE feat. 中村佳穂”

独自の世界観を持っていて一見他を寄せ付けないような二人なのに、組んだら組んだでやっぱり合う!

 

SAKANAMON “矢文”

アップライトベースだしシンプルなジャズワルツみたいな曲かと思ったら、間奏で二胡が登場するあたりSAKANAMONらしいな~。くうーいい曲!

 

CLOW “同じ電車”

力強い歌声と細かなヴィブラートと表現力とかわいいMV。フルで聴きたい。

 

石井竜太 “ギターになりたい”

元ふくろうずのギタリストが今月リリースした初音源(+絵本)の試聴用音源が公開に。全然関係ないけど、子供の頃に見たキレイな夕焼けを思い出しました。

 

奥田民生 “超カンタンカンタビレ~与える男~”

このシリーズ、おもしろくてたまに観ています。ユニコーンの名曲の秘密を、作曲者自ら何でもかんでもあけすけに話してくれるのが最高。

 

stico “変な棒”

チャップマンスティックって楽器をご存知ですか? そうそうキング・クリムゾンの“Elephant Talk”のアレです。Base Ball Bearの関根詩織さんがチャップマンスティックで新バンドを組んだと聞いた時は驚きましたが、プログレ好きだし、同時に納得もしました。で、上がってたライヴ動画がメチャクチャおもしろい。まだまだ未開拓であろうチャップマンスティックの可能性を広げていってほしいです。にしても、曲名が“変な棒”とか“チャップマンスティックの正しい使い方”って(笑)。

 

【天野龍太郎】

Ms.Machine “Vår”

2018年、Ms.Machineに取材した記事は思っていた以上に多くの方に読んでいただけました。多屋澄礼さんによるインタヴューがi-Dに掲載されるなど、その後も注目され続けていた彼女たちから突然届けられた新曲は、これまでのパンク・ソングとは一線を画す、重たく、冷めたサウンド。最近、ヴォーカルのSAIはとにかく北欧モードらしく、スウェーデン語詞にも挑戦しているとか……(曲名の〈Vår〉といえば、アイスエイジのエリアスがやっていたインダストリアル系のバンド名。アイスエイジはデンマークだけど)。ここしばらくライヴを聴きに行けていないので、〈2nd EPの音よりもスロウでダウナーな曲を演奏して〉いるという現在のバンドを、この動画から部分的にでも知ることができてよかったです。次はライヴに行きます!

 

dodo “nothin”

GOODMOODGOKUのように、dodoは彼にしかできないサウンドとラップのスタイルを作り上げていると感じます。〈けど俺らは大丈夫〉。リリックもとにかく最高。

 

MCビル風 “young”

捨て鉢でやけっぱち。なのに韻の踏み方が巧みでかっこいい!

 

NNMIE “地平線を抱きしめて”

ライヴでも聴き馴染んだ、アルバム『Growing Fainter』でいちばん好きな曲。んミィさんのメロディーメイカーとしてのすごさを改めて強く感じる一曲です(んミィさんの作るベースラインがすごく好きです)。

 

蛍光灯 “現実逃避”

Local Visionsの捨てアカさんが発見し(?)、局所的に流行っている謎の音楽家〈蛍光灯〉。シティ・ポップと無邪気に呼ぶにはためらいを感じる、ミューザック~vaporwave的でオルタナティヴなセンスにクセの強さを感じます。“雨の夜に”も必聴。

 

mori_de_kurasu “連続体”

Local Visionsのコンピレーション『Oneironaut』にも参加していたmori_de_kurasuさんによる、ドリーミー・アンビエント・ポップ。まるで〈何か〉の待合室で延々とループされているかのような、なんともいえない匿名的で〈家具的〉な音。控えめに鳴らされているトラップ風のハイハットに惹かれます。

 

【田中亮太】

Hi, how are you? “冷凍らいち”

シャムキャッツ主宰のレーベル、TETRAから8月28日(水)にリリースされるハイハワことHi, how are you?の新作『Shy,how are you?』より。今回も良いメロ/微熱サウンド/夢見がちリリックといつもながらの3拍子を揃えた良曲ですが、縦横無尽なキーボードが利いていてフェルトみたい。

MVもサムネから最高ですね。ヴォーカル/ギターの原田くん&女子高生役のばるちさん(彼女は何者?)のツーショット作品かと思いきや、ピアニカのまぶちさんもちょいちょい映り込んでいます。それにしても、ライヴを観ると一目瞭然ですが、原田くんの身体性の高さといったら! 映画「海街diary」の広瀬すずに匹敵する、しなやかな動き、肉体へのリズムの宿し方に視線釘づけです。運動神経の面でも、この人はもっと評価されていい。

 

【高見香那】

NTsKi “Labyrinth of Summer 〜真夏のラビリンス〜 (DJ Melania 666 & Alt-Jpop "CASTLELIZATION")”

田我流の最新アルバム『Ride On Time』にフィーチャーされていたことをきっかけに、いま気になっているシンガー・ソングライター/プロデューサーです。アップされている曲がどれも良く、中でもお気に入りのひとつである“真夏のラビリンス”(2018年)のリミックスが発表されていいたのでご紹介。DYGLのギタリスト・下中洋介が参加したダブっぽい原曲に比べ、リミックス版は妙な日本っぽさを感じさせるサウンドでおもしろいです。リリース元の1898musicは台北のレーベルのようで(?)、リミックスを手掛けたのはどちらもプエルトリコのアーティストのようなのですが(?)、何者なのでしょう?