Mikikiで特集中の大人気カルチャー・フェスティヴァル〈GREENROOM FESTIVAL ’18〉が、いよいよ約2週間後の2018年5月26日(土)、27日(日)に開催される。特集第1回では1日目のヘッドライナーを務めるレゲエの先駆者、ジミー・クリフをフィーチャーしたが、ここでは続く2日目の大トリを務めるサブライム・ウィズ・ロームにフォーカス。90年代を代表する存在であり、ここ日本のミュージシャンにも巨大な影響を与え続ける伝説のスカ・パンク・バンド、サブライムは、運命のいたずらで活動を休止した後、メンバー・チェンジを経た新体制でサブライム・ウィズ・ロームとしてリスタート。そんな彼らが長きにわたってレジェンドとして君臨する理由、そしてもちろん今回のステージが観逃せない理由を、音楽ライターの山口智男が解説した。 *Mikiki編集部

★第1回:ジミー・クリフ、70歳迎えた生ける伝説が愛され続ける理由とは?
★第3回:Nulbarich、水カン、GRAPEVINE、WONKら出演陣へ3つの質問!〈GREENROOM FESTIVAL ’18〉の観どころは?


 

ファンを大いにがっかりさせた来日キャンセルから7年、サブライム・ウィズ・ロームがついに日本にやって来る。その彼らに2日目のトリという最高のシチュエーションを用意したところに、〈GREENROOM FESTIVAL ’18〉から彼らへのリスペクトが窺えるが、そもそもは南カリフォルニアのビーチおよびボード・カルチャーから生まれたバンドだ。改めてその存在を日本のリスナーにアピールするにあたって、〈GREENROOM〉ほどふさわしい舞台はなかっただろう。

フェスの翌日に東京・恵比寿LIQUIDROOMで行う単独公演だって、もちろん観ごたえあるものになるに違いない。しかし、南カリフォルニアのビーチ・カルチャーを、その清濁の区別なく体現してきたサブライム・ウィズ・ロームの音楽は、やはり彼らの音楽が生まれたビーチに(物理的にも精神的にも)近い、より解放されたシチュエーションで楽しんでこそ。もしかしたら、根っこにパンクを持ち、曲によってはゴリッとした音を鳴らす彼らの存在は、今回の顔ぶれの中では異色かもしれない。しかし、パンクに留まらない彼らのサウンドは間違いなく、〈GREENROOM〉のファンの耳にも馴染むはずだ。

ヴェテランの域に達していることもあり、なかには彼らのことを知らない若いリスナーもいると思うので、その理由を、ちょっとややこしい彼らのキャリアを、今一度振り返りながら紹介してみたい。

 

キャリアのスタートは88年。ブラッドリー・ノウェル(ヴォーカル、ギター)とエリック・ウィルソン(ベース)、バド・ゴウ(ドラムス)の3人がロングビーチで前身バンドのサブライムを始めたことだった。自分たちが大好きだったパンク・ロックとスカとレゲエ、そしてそのミクスチャーを、地元のクラブやパーティーで演奏していたサブライムは地元のボーダーたちの支持を背景に人気を集めていき、やがてそれが92年に自主リリースしたファースト・アルバム『40 Oz. To Freedom』収録の“Date Rape”のラジオ・ヒットにつながった。

サブライムの92年作『40 Oz. To Freedom』収録曲“Date Rape”

そこから彼らの快進撃が始まり、『40 Oz. To Freedom』、94年にやはり自主でリリースしたセカンド・アルバム『Robbin’ The Hood』のヒットをステップにメジャー・レーベルと契約。バットホール・サーファーズのポール・レアリーをプロデューサーに迎え、パンク、スカ、レゲエにヒップホップ(のサンプリング)、ジャック・ジョソンンに通じるレイドバックしたアコースティック・サウンドをごた混ぜにしたユニークなサウンドに磨きを掛けたメジャー・デビュー・アルバム『Sublime』(96年)を完成させた彼らは、人気を決定的なものにするはずだった。

しかし、アルバムのリリースを待たずにブラッドリーがドラッグのオーヴァードーズで急死する悲劇が起きる。その2か月後に『Sublime』はリリースされ、全米13位を記録。プラチナ・レコードに認められる大ヒット作になったものの、フロントマンを失ったバンドは活動をストップするしかなかった。

サブライムの96年のライヴ動画

サブライムの96年作『Sublime』収録曲“What I Got”

スカンキンな曲をレパートリーに持っていたサブライムは時折、スカ・パンクと呼ばれることもあるが、その一言では何にも囚われない彼らの自由奔放なサウンドは語りきれない。その意味では、彼らのサウンドは文字通りミクスチャーだったと思うのだが、いわゆるミクチャー・バンドほどマッチョではなく、パンク由来の性急さも持ちながら、レゲエの影響か、ほどよくゆるいところもあったところは、まさに唯一無二だった。

フォロワーは枚挙に暇がないが、その存在の大きさがゆえに、彼らを超えたバンドはまだいないし、たぶん、これからも出てこないだろう。メロコアをはじめ、ここ日本のバンド・シーンに与えた影響も絶大で、僕自身、インタヴューの場で何人のバンドマンからサブライムの名前を聞いたことか。その影響がいかに大きかったかは、キャンセルになってしまった2011年の来日が〈AIR JAM 2011〉に招かれたものだったことからも窺えはしないだろうか。