COLUMN

Ryu Matsuyama『Between Night and Day』 ROTH BART BARON的な高揚感、そこはかとない官能性など新機軸見せたメジャー初作

Ryu Matsuyama『Between Night and Day』 ROTH BART BARON的な高揚感、そこはかとない官能性など新機軸見せたメジャー初作

イタリア生まれイタリア育ちのRyu(ピアノ/ヴォーカル)が、自らの本名を冠して結成した3ピース・バンド、Ryu Matsuyamaによる初のフル・アルバム『Between Night and Day』が完成した。昨年、タワーレコード内のレーベルよりリリースされた8曲入りのミニ・アルバム『Leave, slowly』では、ポスト・ロックやインディーR&B、ポスト・クラシカルといった要素を取り入れつつも、日本人の琴線に触れる切なくも美しいメロディーを織り交ぜながら独自のサウンドスケープを構築してきた彼ら。本作では、その〈歌〉の部分にさらにフォーカスを当てることにより、これまで以上にソング・オリエンテッドな作品に仕上がっている。

Ryu Matsuyama Between Night and Day VAP(2018)

Ryu Matsuyamaは、Ryu、Tsuru(ベース/コーラス)、Jackson(ドラム/コーラス)の3人組。トム・ヨーク(レディオヘッド)に憧れて曲を作り始めたというRyuは、20年間イタリアで暮らした後に日本に移住。エイティアやAun beatzのメンバーとしても活動するなど多忙な日々を送っている。Tsuruは10代前半からベーシストとしてジャズやR&B、ファンクなどの音楽を経験、18歳で上京しRyuと出会って意気投合する。そしてJacksonは、スティーリー・ダンに影響を受けバークリー音楽大学に留学し、在学中はヒップホップ・バンド、エンデンジャード・スピーチズ(Endangered Speeches)のメンバーとして全米ツアーにも参加。帰国後は、アレンジャー井上鑑率いるアレンジャー集団〈鑑組〉に所属し、その一方でハンドパン演奏家としても活動している。つまり、3人が3人ともすでに相当なキャリアを持っているのだ。

※バーニー・ウォーレル・バンドやスラム・ヴィレッジなどの前座も務めた、総勢10名以上で活動するボストンのバンド

前作同様、インスト曲で幕を開ける本作『Between Night and Day』を聴いてまず驚いたのが、サウンドの広がりや奥行きが、これまで以上に大きく感じられるようになったことである。例えば“Footsteps”は、美しくも荘厳なストリングスを大々的にフィーチャー。この曲は、スーパー戦隊シリーズの主題歌や挿入歌などを数多く手がけてきた作曲家、亀山耕一郎がプロデュースを担当しているという。Ryuの歌声も、これまで以上に力強いものになった。

また、“City”ではシンセサイザーを大々的に導入し、ヴォーカルにはオートチューン〜ヴォコーダー的なエフェクト処理を施すことで、エレクトロなアプローチにも挑戦している。さらに、ラヴェルの〈ボレロ〉を彷彿とさせるマーチング・ドラムに、ホーン・セクションが徐々に重なる“That Mad Rad Tale”も彼らにとって新機軸と言えるだろう。ライヴではシンガロング必至のリフレインも祝祭的な高揚感をもたらしている。ちなみにこの曲は、ROTH BART BARONが持つ高揚感とも共振するものを感じた。

歌詞の面では、特に“Istante”にハッとさせられた。Ryuの綴る言葉はこれまでも、〈自問自答の末の自己受容〉といった内容のものが多 く、今作でもそれは“City”の 〈Don’t lie to yourself(和訳:自分に正直でいるんだ)やりたくないものだらけ「好きなこと、好きなこと成して死ね」〉や、“That Mad Rad Tale”の〈“Don’t worry, let’s go”(和訳:「心配いらないさ、さあ行こう。」)〉といった歌詞にも引き継がれている。が、丁度アルバム中盤の“Istante”は例えば〈重なり合う視線 加速する鼓動〉〈gouging deep into the meat(和訳:身体の中を 深くえぐる)〉といったフレーズに、これまでの彼の歌詞にはなかったエロティシズムを、そこはかとなく感じるのだ。しかも、 “City”や“Istante”はこのバンドにとってほぼ初挑戦となる日本語詞で、それが歌われているところにも注目したい。

※2015年作『Grow from the ground』収録曲“Taiyo”で一部日本語詞を使用

そして、アルバム後半もソングオリエンテッドな楽曲が続く。例えば、イエロー・マジック・オーケストラの“君に、胸キュン。”を彷彿とさせる“Simply, Something”のとびきりポップなメロディーや、まるでギター・ポップのような“Landscapes”のシンプルで力強いメロディーからは、Ryuのコンポーザーとしての飛躍的な進歩を感じることができる。ここに行き着くまでに、様々な試行錯誤があったことを想像させる。

アルバム・タイトルとなった〈Between Night and Day〉という言葉からイメージするのは、夜明け前の一番深い闇の色。しかし、本作を聴き終えた時に目の前に広がるのは眩いばかりの光の色。そう、本作は、闇夜をくぐり抜けた者だけが知る〈希望の光〉に満ちたアルバムなのだ。

 


Live Information

〈Ryu Matsuyama TOUR "Afterglow"〉
2018年10月13日(土)大阪・CLAPPER
共演:avengers in sci-fi
2018年10月14日(日)愛知・伏見JAMMIN'
共演:PRIMITIVE ART ORCHESTRA 、The Hey Song
2018年10月20日(土)北海道・PROVO
共演あり
2018年10月27日(土)東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGE
共演あり
2018年11月18日(日)宮城・retro Back Page
共演:KUDANZ
2018年12月7日(金)東京・TSUTAYA O-WEST
ワンマンライヴ

〈Ryu Matsuyama Special Show Case〉
2018年6月24日(日)福岡県 brick

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