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TT『LoveLaws』 ウォーペイントのテレサ・ウェイマンがソロ・アーティストとして向き合う自身の音楽的ルーツ

TT『LoveLaws』 ウォーペイントのテレサ・ウェイマンがソロ・アーティストとして向き合う自身の音楽的ルーツ

 いまから約4年前、ウォーペイントは岐路に立たされていた。2013年リリースの2作目『Warpaint』が高い評価を浴び、彼女たちは結成から10年近くを経て確固としたポジションを確立。しかしハードなスケジュールが祟って人間関係に黄信号が灯り、1年休みを取ることを選んだという。2016年9月にインタヴューした際、テレサ・ウェイマン(ギター/ヴォーカル/キーボード)とエミリー・コーカル(ギター/ヴォーカル)はその頃の状況を次のように率直に話してくれたものだ。

 「私たちは疲れ果てていたわ。音楽をプレイすることに、みんなで一緒にいろんな決断をすることに、毎日のように4人で過ごすことに。それらが積もり積もって耐えられなくなり、しばらく距離を置く必要があるって結論に辿り着いた。それぞれ個人的なプロジェクトに取り組むべきだと感じたの。クリエイティヴな解放感を満喫し、妥協なしにやりたいことをやろうって。バンドから一歩離れて、他のことに目を向ける時期が来ていたのよ」。

 そこで2015年を通じてメンバーは思い思いの活動に打ち込み、先陣を切ってジェニー・リー・リンドバーグ(ベース)がソロ作品『Right On!』を送り出したわけが、ここへきてテレサも当時から制作していたアルバムをいよいよ発表。TTの名前で本格的なソロ活動をスタートする。

TT LoveLaws LoveLeaks/HOSTESS(2018)

 『LoveLaws』と題されたそのアルバムを完成させるまでに時間を要した理由は、言うまでもなくウォーペイントが再始動したことにある。心機一転して3作目『Heads Up』に着手した4人は、以前のようにジャムで曲を作るのではなく、各自がラフな音源を持ち寄るという形を取り、なかでもテレサは“By Your Side”ほか、往々にしてエレクトロニック寄りの曲を提供していた。何しろ彼女は腕の立つギタリストでありながら、コンピューター上での作業を愛する人。プロデューサーのダン・ケアリーらと結成した課外バンドのBOSSもエレクトロ・ポップ志向だし、若い頃に多大な影響を受けた作品としてエイフェックス・ツインの“Come To Daddy”(97年)、ビョークの『Debut』(93年)、ポーティスヘッドの『Dummy』(94年)を挙げている。そんなテレサにとって『LoveLaws』は、音楽的なルーツに回帰する一枚なのだ。

 だからここで鳴っているのはトリップ・ホップに通じるような、ダウンテンポでムーディーでセンシュアルなシネマティック・ポップ。ダンやウォーペイント本隊からステラ・モーツガワ(ドラムス)のサポートに加えてあのマニー・マークの参加も得ているものの、大半のパートを彼女みずから演奏し、兄アイヴァンと共同プロデュースして、自分の色で全編を染め上げることを選んだ。エレクトロニック・ビート、サンプル、ハーモニウムからクラリネットに至る生楽器など、選び抜いた音の数々を丹念に加工し、リヴァーブで陰影を加えた歌声と共にレイヤーした精緻な仕上がりは、時間をかけただけある。

 ただ、リリシストとしてはバンドの曲と同じく内省的な言葉を綴っていて、〈愛の法則〉を意味するタイトル通り、本作はずばり愛に関するアルバムだ。10代の息子を持つシングルマザーのテレサ、母として、女性として、さまざまなアングルから愛を論じている。なかでも興味深いテーマは、女性の声で語られることがあまりない〈ツアーに明け暮れるミュージシャンの孤独〉かもしれない。「私は人と出会う機会が頻繁にあるわけじゃないし、出会ったとしても、相手は私の世界に属する人じゃない。その瞬間だけ接して、それでおしまい。そういう一過的な恋愛生活――より正確に表すならば、自分の頭のなかで成立させられる恋愛生活に、満足しなくてはいけないのよ」と彼女。距離に隔てられた関係を憂い、時間の限られた刹那的関係を否定せず、もう一方では、無条件な愛で結ばれた息子との関係を讃えて、どれも自分のリアリティーとして受け入れているテレサのモノローグは、濃密なリスニング体験となること必至だ。

 


TT
本名テレサ・ウェイマン。80年生まれ、オレゴン州はユージン出身のシンガー・ソングライター/女優。両親の影響で9歳からギターを、10歳からピアノを始める。LAに移住後、2002年に映画「The Rules Of Attraction」へ出演。2004年にウォーペイントを結成し、ギターとヴォーカルとキーボードを担当する。同バンドとして2010年作『The Fool』以来、これまでに3枚のアルバムを発表。2013年にジェイムズ・ブレイクとの交際を公表し、2015年にはダン・ケアリーやホット・チップのサラ・ジョーンズらとサイド・プロジェクトのBOSSを始めたことも話題を集める。このたびTT名義による初のソロ・アルバム『LoveLaws』(LoveLeaks/HOSTESS)をリリースしたばかり。

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