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上坂すみれ 『ノーフューチャーバカンス』 担当Pが語る〈上坂すみれという人間の生き方〉

上坂すみれ 『ノーフューチャーバカンス』 担当Pが語る〈上坂すみれという人間の生き方〉

上坂すみれ、3枚目のアルバム 『ノーフューチャーバカンス』のリリースを記念して、タワーレコードではフリーマガジン〈TOWER PLUS+〉の臨時増刊号〈別冊TOWER PLUS+〉を発行! タワーレコード全店で7月31日(火)より店着次第、配布スタートいたします。ここではその中面に掲載された、上坂すみれ担当プロデューサー、須藤孝太郎氏による原稿を掲載いたします。
※別冊TOWER PLUS+の配布開始時間は店舗によって異なります。(タワーレコードオンラインは除く)
※別冊TOWER PLUS+は無くなり次第終了となります。

上坂すみれ ノーフューチャーバカンス キング アミューズメント クリエイティブ(2018)

 

上坂すみれ担当プロデューサー須藤孝太郎による、自分にとってのノーフューチャーバカンスと、上坂すみれさんの生き方についての独り言──。

飽きっぽい性格の自分が、正直同じ人間と丸5年以上一緒に仕事をしてきたというのは奇跡に近いと思う。よく、上坂さんってどんな人ですか?と聞かれることがあるが、その返答にいつも迷ってしまう。恐らく、長く仕事をした人間であればあるほど、迷ってしまうような気がする。ただ、1つ間違いなくこうであろうと言えるのは、〈面白いことに貪欲〉ということだろう。

通常、このアーティストはこういった曲をよく歌うイメージであったり、ビジュアルも大体は固定されていることが多い。それはそれで正解であると思う。ただ上坂さんに関しては、毎回曲もバラバラでアートワークも様々である。そういった枠組みに捕らわれないからこそ、飽きっぽい性格の自分も5年以上続けていられるのかもしれない。

デビューした当時、上坂さんはまだ大学生であり、声優としてもデビューしたばかりで、歌は勿論、踊りもやったことがなかった。ただ、どこかで〈面白いことに貪欲〉な部分が見えたからこそ、声を掛けたのだろう。しかし、実は当時自分もプロデューサーではなく、曲作りは勿論、撮影からLIVEに至るまで全くの初心者であった。それなのに何故声を掛けたかというと、やはりそこには自分にも〈面白いことに貪欲〉という部分が本質的あり、取り敢えずなんか面白そうな人と一緒に仕事がしたい、という欲だけであったと振り返って思う。

そういった意味では、お互いに良い意味で、他のアーティストがどうやって作品を作りあげていくか過程を知らないので、ほぼ我流のようなやり方でここまでやってきたことになる。

だからこそ、迷う部分もたくさんあるが、そんな時1つ大事にしていることがある。楽曲やプロデュースをする際に、特定の層に向けて発信をしないように心掛けているということだ。傲慢な言い方かもしれないが、自分達が作っているものは絶対に面白い、と半ば洗脳に近い、強い思い込みを持って仕事をしている。

ただ勘違いしてはいけないのは、レコード会社のプロデューサーというのは、〈何も出来ない人〉が就く仕事であると思っている。あくまでも、上記で書いた傲慢さも持ちつつではあるが、自分は作詞、作曲は勿論、歌を歌うことも出来ないただの平凡な人間であるということは強く意識しないといけない。凄いのは周りのクリエイターであって、自分が何か出来る訳では決してない。

また、自己プロデュースが出来る人間というのは、自分からすると全く別次元の人間であり、上坂さんはまさに自己プロデュースが出来る人間であるので、その近くで仕事をさせてもらっているのは、凄く幸せなことなのかもしれない。

自分が好きなゲームで「龍が如く」というものがある。このゲーム中に出てくる真島吾朗というキャラクターがいるが、そこに〈俺は決めたんや。何が正しくて 何が悪いか分からんこの街で誰よりも楽しく、誰よりも狂った生き方、したるってな。〉というセリフがある。上坂さんがどう思うか分からないが、自分はそんな真島吾朗の生き方に上坂さんを勝手に重ねている。そして自分もその生き方に凄く影響を受けた気がする。だからこそ、これからも上坂さんには、上坂すみれという人間の生き方に執着して欲しい。

最後に、毎回CDがリリースする度に、〈もうこれ以上のものは出来ない〉と言っているような気がするが、彼女がアーティスト活動を続けていく限り、自分はあと何回同じセリフを吐くことになるのか、想像してみると、そこにはパソコンのモニターに映るなんとも言えない、無表情に限りなく近い含みを持った笑いの自分の表情があった。

どうやら、まだまだ自分の『ノーフューチャーバカンス』は続くようだ。

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