INTERVIEW

音楽はもっと自由であるべきだ! 西山瞳がデーモン閣下と語る、 メタル × ジャズなNHORHMのカヴァー作最終章

NHORHM『New Heritage Of Real Heavy Metal III』

音楽はもっと自由であるべきだ! 西山瞳がデーモン閣下と語る、 メタル × ジャズなNHORHMのカヴァー作最終章

へヴィメタル、ハードロックの名曲をピアノ・トリオ編成でジャズ・カヴァーする異色のグループ、NHORHM。ジャズ・ピアニストの西山瞳を中心に織原良次(ベース)、橋本学(ドラムス)からなるこのプロジェクトの第3弾アルバム『New Heritage Of Real Heavy Metal III』がリリースされた。

2015年の第1作目2016年の〈IIに続くシリーズ最終章と位置付けられた本作には、毎回1曲収録される西山のオリジナル楽曲(“Top of the Babylon”)を含む全10曲を収録。“Madhouse”(アンスラックス)、“What Do You Do For Money Honey”(AC/DC)、“Duality”(スリップノット)のほか、唯一の国内アーティストでは、彼女自身が敬愛してやまない聖飢魔IIの“EL. DORADO”が収められている。

今回は、へヴィメタルへの深い愛情に貫かれた本シリーズの完結(?)を記念して、西山瞳とご存じ元・聖飢魔IIのヴォーカリスト、デーモン閣下の対談が実現。秋雨のぱらつく10月の某日、タワーレコード本社までお越しいただいた。長年のファンゆえに終始緊張ぎみの西山と、多忙極めるなかいつも通りの悪魔姿でさっそうと登場した閣下。“EL. DORADO”のカヴァーの話を軸にしながら、両者のヘヴィメタルとジャズに対する想いや見解などについて語り合ってもらった。

NHORHM New Heritage Of Real Heavy Metal III APOLLO SOUNDS(2018)

 

この楽曲が聖飢魔IIにおいて、どういう位置にあるかも知っているということだな(デーモン閣下)

――今回NHORHMがカヴァーした聖飢魔IIの“EL. DORADO”に対してデーモン閣下が大絶賛コメントを寄せていましたが、改めて、このカヴァーについての印象を聞かせていただけますか?

デーモン閣下「基本的にはそこに書いてある通りなのだが(笑)、これまで聴いた聖飢魔IIのどのカヴァー・ヴァージョンに比べても〈へー!〉という驚きがもっとも強かったのだ。ハードロック、へヴィメタル系のアーティストのカヴァーは原曲と著しく変わることがあまりないが、NHORHMのは完全にジャズになっていて、それがとても新鮮だった。こういうアレンジは、自分でやろうと思ってもやれないからな」

西山瞳「ありがとうございます。今回のアルバムは3部作のラストになるのですが、以前から〈最後の曲は“EL. DORADO”にしよう〉と決めていたんです。聖飢魔IIの作品はずっと聴かせてもらってますが、選曲に関しては“EL. DORADO”一択でした」

デーモン閣下「ということは、この楽曲が聖飢魔IIにおいて、どういう位置にあるかも知っているということだな」

西山「はい。〈ミサ〉のクライマックスで演奏されることが多いですし、99年解散黒ミサの最後の曲なので、解散といえば“EL. DORADO”というイメージがありました。もちろん曲自体も好きです」

デーモン閣下聖飢魔IIはいつから聴いていたのだ?」

西山「気合いの入った信者さん(聖飢魔IIの信奉者)にはとても及びませんけど、小学校の頃から聴いてましたね。音楽番組に聖飢魔IIが出演するのがすごく楽しみで。音楽も大好きだったし、トークも楽しいし、音楽もトークも両方好きでした。〈ドアノブカヴァー〉の話とか、めちゃくちゃおもしろくて」

デーモン閣下「それは〈HEY!HEY!HEY!〉だな(笑)。へヴィメタルを聴きはじめたのは?」

魔暦紀元前01[’98]年8月放送回で、ルーク篁参謀(ギター/バックヴォーカル)がダウンタウン・松本人志に、被っていたニット帽がドアノブカヴァーに似ていると言われたエピソード

西山「高校2年くらいですね。最初はイングヴェイ・マルムスティーンから入って、遡ってリッチー・ブラックモアなどを聴くようになって。特にイギリスのメタルが好きでした」

デーモン閣下「ニューウェイブ・オブ・ブリティッシュ・へヴィー・メタルというやつか」

※70年代後半のイギリスで勃発した音楽ムーブメント〈NWOBHM〉で、NHORHMはこれをもじっている。NWOBHMの代表的なバンドはアイアン・メイデンやデフ・レパードなど

西山「はい。LAメタルはちょっと苦手でしたね」

デーモン閣下「なるほど。……で、それがなぜ、ジャズ・ピアニストに?」

西山「そうなりますよね(笑)。もともとはクラシック・ピアノを一所懸命やってたんですが、コンクールで失敗して、イヤになってやめちゃったんですよ。その反動もあってメタルを聴きはじめたところもあったと思うんですが、あるときにジャズを聴いてみたら、〈かっこいいな〉と感じて。メタルはエクストリームな音楽だと思いますが、ジャズにも別のエクストリームさがあったというか。そこからですね、ジャズ・ピアニストを目指すようになったのは」

デーモン閣下「ここに来て、ジャズとメタルが融合したわけだな」

西山「一周して戻ってきました(笑)」

――西山さんにとって、ヘヴィメタルの音楽的な魅力とはなんなのでしょう?

西山「まず、楽器が上手いということですね。クラシックをやってるときは〈ロックなんか大したことない〉と思っていたんですが、イングヴェイの演奏なんて、すごいことをやってるじゃないですか。それともう一つは、メタルをやっている方々の言動のおもしろさですね」

デーモン閣下「ほほう言動……」

西山「メタル専門誌のインタヴューなんかを読んでると〈あいつは俺の元嫁を寝取ったからクビだ〉みたいな発言してる人がいたり(笑)。真面目にクラシックをやっている人たちとはまったく違うメンタリティーだし、キャラクターが強い人が多いじゃないですか、こちらの世界は」

デーモン閣下「メタル、ハードロックをやっている人間は概しておもしろいヤツが多いと(笑)。そうかもしれないな」

選曲の段階でメロディーがしっかりしているものを選ぶようにしているんです。メタルの曲は〈ドドドドドド〉〈ミミミミミミ〉みたいに音程があまり動かない曲もけっこうあって(西山瞳)

――逆に、閣下はジャズという音楽に対してどんなイメージを持っていますか?

デーモン閣下「〈難しい音楽〉というのが第一印象だな。ロックとジャズでは曲の構成方法、小節の概念も違うではないか。ロックの場合は4拍子、8拍子が多いし、〈概して4の倍数小節演奏をしたら、次のパートに行く〉というのがハッキリしているのだ。ジャズはもっと自由度が高いし、どういう発想で音楽を作っているのかよくわからないところがあるからな。

NHORHMのアルバムを聴いていても、どんな思考回路でアレンジしたらこうなるのか、全然わからなかった(笑)。“EL. DORADO”のカヴァーのことでいえば、原曲のメロディーラインはしっかり弾いてくれているのだが、譜割りがだいぶ違う。吾輩は歌っているので、よくわかるのだ」

西山「そうですよね(笑)」

デーモン閣下「〈ここで半拍あけるのか〉〈ここは一拍分遅らせているな〉というところがたくさんあったしな。譜割りを変えるとどこかではみ出すはずなのだが、それはまったく感じない。おそらく、そうやって聴かせるテクニックがあるのだとは思うが」

西山「まず、選曲の段階でメロディーがしっかりしているものを選ぶようにしているんです。メタルの曲は〈ドドドドドド〉〈ミミミミミミ〉みたいに音程があまり動かない曲もけっこうあって……」

デーモン閣下「そうだな(笑)」

西山「そういう曲はアレンジ的な肉付けが難しいんですよ。メロディーがはっきりしていれば、それを素材として使うことができるんですよね。“EL. DORADO”もそういう考え方でアレンジをさせていただきました。まず、リズムを5拍子にしていて」

デーモン閣下「え、5拍子なの? 気づかなかった」

西山「流れるようなリズムにして、はっきり5拍子だとわからないようにしているんです。原曲のメロディーがとても強いので、4拍子のままだと演奏しているときにフェイクが入れづらかったんですよね。なので5拍子にさせてもらって、自由度をキープして」

デーモン閣下「なるほど、そういうことか」

西山聖飢魔IIの“EL. DORADO”にはいろいろなヴァージョンがありますが、私は『地獄より愛をこめて』(魔暦前13[’86]年)に収録されているヴァージョンが好きなんですよ。〈この瞬間にしか実現できなかった演奏だな〉と思うし、サビのパートでメロディーが上がっていくところもすごくいいなと。その雰囲気は壊さないようにしたいなと思っていました」

※大教典(聖飢魔IIの悪魔用語で言うアルバム)『地獄より愛をこめて』、小教典(同シングル、魔暦前12[’87]年)『EL・DO・RA・DO』、極悪集大成盤(同ベスト盤、魔暦前11[’89]年)『WORST』、『本家極悪集大成盤 1999 BLACK LIST』(魔暦01[’99]年)、大教典『悪魔 NATIVITY "SONGS OF THE SWORD"』(魔暦11[’2009]年)と、スタジオ録音だけで5ヴァージョンある

デーモン閣下「確かにこのカヴァーのキーも(『地獄より愛をこめて』収録の“EL. DORADO”と同じ)Eだったな。後半で転調するアレンジもおもしろかった」

西山「ジャズのインストで同じことを2回やっても飽きそうなので、半音上げました。メロディーの儚さが増すかなと思って」

デーモン閣下「大サビを2回繰り返すのも原曲とは違うところだな。本家である吾輩が〈なるほど、こういうアレンジもあるんだ〉と思えるのがおもしろいな、と。他のカヴァー曲も、かなり大胆にアレンジしているよね。原曲を知っていても、曲目を確認しないと何の曲かわからないものもあって。1枚目でカヴァーしているレインボーの“銀嶺の覇者(Man On The Silver Mountain)”なんて、もともとはギターのリフで押している曲なのに、それが最初から崩壊しているからな(笑)。よく聴くと、ところどころにリフのフレーズが入っているのだが」

西山「そうなんです。“銀嶺の覇者”のアレンジは自分でも気に入っていて、それは原曲のギターのフレーズをすべて逃さず入れられたからなんですよ。曲によってはフレーズの要素を捨てなくてはいけないこともあって。それもやっぱり、ジャズにとって大事な自由度を維持するためなんですよね。

デーモン閣下「なるほど、わかってきたぞ。U.K.の“In The Dead Of Nnight”もかなりジャズに寄せているな。これも原曲の形をほとんど留めていない」

西山「コンテンポラリー・ジャズに近づけると、どうしてもわかりづらくなるんですよね。逆に冠徹弥さん(THE冠)に歌ってもらったエクストリームの“Decadence Dance”(『New Heritage Of Real Heavy Metal II』収録)は、スウィングのリズムにしただけで、あとは原曲に近かったり」

デーモン閣下「歌モノはそうなるだろうな。そもそも、ほとんどの原曲にはヴォーカルが入っているではないか。歌があれば歌詞の内容で1番、2番の変化が付けられるのだが、インストゥルメンタルになるとそれができない。2コーラス目には少しは違う展開が必要なので、そこは大変だろうな」

西山「そうですね。2コーラス目はアドリブが増えることが多いです」

デーモン閣下「まったく同じことを繰り返すのもなんだからね。1曲カヴァーするにも、何種類かのアレンジを考えなくてはいけないわけか」

――ドラムの橋本学さん、ベースの織原良次さんもへヴィメタルに精通しているそうですね。

西山「私と同世代ですからね。私たちが楽器を始めた90年代は、へヴィメタルのミュージシャンがヒーローだったので。聖飢魔IIも絶対に通るじゃないですか」

デーモン閣下「絶対とは限らないと思うけどね(笑)」

NHORHM。左から西山、織原良次、橋本学
 

西山「橋本と織原はRXがめちゃくちゃ好きなんです。橋本なんて『CHEMICAL REACTION』(魔暦前08[‘91]年)、ぜんぶ口ずさめますから(笑)」

聖飢魔IIの構成員であるライデン湯沢(ドラムス)、ゼノン石川(ベース)、サポート・メンバーだった松崎雄一(キーボード)によるユニット

デーモン閣下「ほぼインストゥルメンタル曲なのに(笑)。そういえば〈このアレンジ、RXみたいだな〉と思った曲もいくつかあったな。おそらく、ドラムのフレーズがライデンに似ているのかも」

西山「そうだと思います。完コピしていたみたいなので」

デーモン閣下「RXはリズム・セクションが聖飢魔IIの構成員だが、音楽的にはプログレ・フュージョン。へヴィメタルのファンだけではなく、フュージョンを好きな人もかなり聴いていたからな」

西山聖飢魔IIの『有害』(魔暦前09[‘90]年)にもそういうアプローチの曲がありましたよね」

デーモン閣下「確かにそうだな。『有害』のちょっと前あたりからハードロック、へヴィメタル一辺倒ではなく、間奏がジャジーだったり、違った要素を取り入れていたので。ちなみに『THE OUTER MISSION』(魔暦前11[‘88]年)に入っている“RATSBANE”の間奏はハードロックとジャズを順番に繰り返す構成になっているぞ」

西山「聴き直してみます!」

ジャズは本来、クラシックに対して〈音楽はもっと自由であるべきだ〉というところから生まれてきたはずだろう(デーモン閣下)

デーモン閣下「このメタル・カヴァー・シリーズは、最初から3部作にするつもりだったのかね?」

西山「いえ。1作目が思いのほか好評だったので、レーベルのディレクターが〈3部作にしよう〉と言い出しまして」

デーモン閣下「なるほど(笑)。2枚目からは選曲が難しかったんじゃないか? こういうプロジェクトは、1枚目でやりたい曲をかなりやってしまうものだからな」

西山「その通りですね(笑)。なのでNHORHMはライヴのたびに新しい曲をカヴァーしていたんです。ライヴで演奏して、出来が良かったものを収録しようと思って。”EL. DORADO”を披露したときは、お客さんにすごく喜んでもらえました」

デーモン閣下「えっ、ジャズ・ファンも“EL. DORADO”を知っているのか?」

西山「NHORHMのライヴにはメタル・ファンの方もけっこういらっしゃるんですよ。最初はライヴの所作がわからなかったみたいですが……」

デーモン閣下「〈所作〉ね(笑)」

西山「ジャズのピアノ・トリオのライヴに来たことがない方も多かったので、〈どんなふうに観ればいいんでしょうか?〉みたいな(笑)。〈どういう服を着ていけばいいですか?〉と訊かれたこともありました」

デーモン閣下「ドレスコードがわからなかった、と。メタルのコンサートは、黒いTシャツを着てればOKだから(笑)」

西山「最近はメタルTシャツを着ている方が多いですね。上着を着ていても、中はメタルTシャツだったりとか。パッと(上着を)開いてこっそり見せてくれるんですよ」

デーモン閣下「ヘンタイみたいじゃないか(笑)。ライヴでは演奏する前に曲の説明はするのか?」

西山「普段のジャズのライヴではあまり話さないんですが、NHORHMのときは曲の説明をすることが多いですね。ジャズ・ファンの方はへヴィメタルのことがわからないだろうし、みなさんに楽しんでほしいので。これは私の印象ですが、ジャズ・ファンのなかにはメタルに対する偏見を持っている方もいらっしゃると思うので……」

デーモン閣下「不思議な話だな。ジャズは本来、クラシックに対して〈音楽はもっと自由であるべきだ〉というところから生まれてきたはずだろう。それがいつの間にか古典のようになり、〈こうでなくてはいけない〉という権威付けがされてしまった。特に日本人はその傾向が強い気がするな」

西山「そうだと思います。私自身は〈楽しいものが多いほうが楽しい〉とシンプルに考えているんですけどね。」

デーモン閣下「もっと音を楽しめばいいじゃないか、と。その通りだな」

――このシリーズは、ジャズのリスナーには賛否両論があるかもしれませんが、へヴィメタルのファンには好意的に受け入れられていますよね。

西山「何がどうしてこうなった?という感じですね(笑)。こうして閣下とお話させてもらっているのも、すごく不思議ですし。最初は〈メタルの名曲をこんなふうにカヴァーして、怒られないだろうか?〉と心配していたんですが、けっこう大丈夫でした」

デーモン閣下「原曲に対するリスペクトが感じられるからだろうな。カヴァーの難しさは、まさにそこだと思う。原曲のファンが少しでも〈このカヴァーは原曲を茶化してる〉と感じたら、そこでおしまいだから。聖飢魔IIの楽曲も何度かカヴァーされたことがあるが、ファンから何の反応もないことがあるからね(笑)。NHORHMの“EL. DORADO”は大丈夫だと思うぞ」

西山「ありがとうございます。最近、私のSNSをフォローしてくれる信者さんが増えたんですよ。みなさん、アイコンが閣下とかの顔なのですぐにわかるんです」

デーモン閣下「フハハハハ(笑)」

――閣下も『GIRLS’ ROCK』シリーズをはじめ、数多くのカヴァー作品を発表されていますよね。

西山「アレンジはどなたが担当しているんですか?」

デーモン閣下「スウェーデン人のアンダース・リドホルムに任せることが多いね。こちらから〈こういうアレンジがいいのでは?〉という提案もするが」

※グランド・イリュージョンのメンバーでもある、閣下関連作を多数手がけるサウンド・プロデューサー

西山「“魅せられて”(ジュディ・オング)のカヴァー、アレンジがめちゃくちゃおもしろいですよね。とにかく音圧がすごくて」

魔暦12[2010]年発表『GIRLS' ROCK Best』収録、“魅せられて”カヴァー
 

デーモン閣下「そうだな。フレーズ自体はまったく同じなのだが、完全にへヴィメタルのサウンドなのでね。Winkの“愛が止まらない”(魔暦10[2008]年発表『GIRLS' ROCK √Hakurai』収録)もそうだが、〈どうしてこの曲をメタルにする必要があるのか?〉というカヴァーもけっこうあるぞ(笑)。もちろん中島みゆきの“地上の星”のように〈メタルにするとこんなにカッコよくなるのか!?〉という成功例もあるがな。原曲の個性を活かすという意味では、NHORHMと同じような作業だと思うぞ」

魔暦11[2009]年発表『GIRLS' ROCK 〜Tiara〜』収録、“地上の星”カヴァー
 

西山「そうですね。アレンジに関しては、なるべく重複しないようにしていて。これ以上増やそうと思ったら、アレンジの勉強をやり直さないといけないですね」

デーモン閣下「そもそもヘヴィメタルの曲には、似たようなテンポ、似たようなキーの曲がたくさんあるからな」

何? もう1回言って(笑)(デーモン閣下)

――今作の唯一のオリジナル曲“Top of the Babylon”についても聞かせてください。

デーモン閣下「それは吾輩も気になっていたのだ。1枚目、2枚目にも〈Babylon〉という言葉が入ったオリジナル曲が収録されているが、なぜそこまで〈Babylon〉にこだわっているのだ?」

西山「本当は“バビロンの城門(Gates Of Babylon)”(レインボー)をやりたかったんですけど、いいアレンジが思いつかなかったんですよ」

デーモン閣下「なるほど。“バビロンの城門”自体、変わった曲だからな。ハードロックらしいギターのコードがほとんど出てこないだろう?」

西山「そうなんです。展開も少ないし、この曲をカヴァーするのは難しいなと思って。あの曲のメロディーは〈ハーモニックマイナー・パーフェクト5thビロウ〉というスケールが使われているんですが……」

デーモン閣下「何? もう1回言って(笑)」

西山「〈ハーモニックマイナー・パーフェクト5thビロウ〉です。1枚目と2枚目に収録されているオリジナル曲(“The Halfway to Babylon”、“Mystery Of Babylon”)はどちらもそのスケールを使っているんですよ」

デーモン閣下「楽曲から影響を受けてオリジナル曲を作ったというわけか」

西山「はい。ただ、今回の“Top of the Babylon”は“バビロンの城門”は関係なくて。この曲はギタリストのSAKIちゃん(Mary’s Blood)に弾きまくってもらうために作ったんです。どうしても彼女にギター・ソロを弾いてもらいたかったので」

デーモン閣下「〈こういうソロにしてほしい〉という注文はしたのかな?」

西山「いつも通りに弾いてほしいとお願いしました。ジャズに寄せたり、アコースティックを意識するのではなく、好きなようにやってほしかったんですよね。全部で3テイクくらい録ったんですが、最後のテイクでは〈ふざけてると思われるくらい、いろんなテクニックを入れてみてください〉とお願いして、結局、そのテイクを採用しました」

デーモン閣下「ピアノ・トリオと一緒にギター・ソロを弾くのは、かなり難しかっただろうね。実際、前半はノリづらそうに弾いていて(笑)。後半はバックの音に関係なく弾きまくっていて、その違いがおもしろかったぞ」

西山「私もそう思います。他の楽曲もそうですが、ピアノとドラムとベースは一発録りで、ドンカマ(テンポのガイドになるメトロノームのような信号)も使ってないんです。テンポも揺れているし、そのあたりはどんぶり勘定ですね」

デーモン閣下「そこもメタルとジャズの違いだな。ハードロック、ヘヴィメタルの場合、特にテンポが速い曲はドンカマを使わないと練習していない曲は崩壊してしまうので」

――NHORHMの作品にエレクトリック・ギターが取り入れられるのは、この曲が初ですよね。

西山「はい。“Top of the Babylon”については、とにかくジャズ・ファンにへヴィメタルのギターを聴いてほしいという気持ちがあって。私はふだん、ジャズをやってるわけですが、そっちが好きなお客さんから(へヴィメタルのカヴァーに対して)〈そんな不真面目なことをやって〉と言われることもあるんです(笑)。私としては〈好きなことをやって何が悪い!〉と思ってやってるんですが、そういう方にもへヴィメタルの良さを知ってほしいなと」

デーモン閣下「似たようなことはロックの世界にもあるぞ。聖飢魔IIは最初の大教典(魔暦前14[‘85]年発表『聖飢魔II~悪魔が来たりてヘヴィメタる』)から〈こんなのはヘヴィメタルではない〉と言われていたからな(笑)」

西山「そうですよね(笑)」

デーモン閣下「〈これから世に出ようとするバンドなんだから、もうちょっと寛容に受け止めてくれてもいいじゃないか〉と思ったりもしたな(笑)。ただ、2作目(魔暦13[‘86]年発表『THE END OF THE CENTURY』)で売れてしまったから、その後は誰が何を言おうが関係なくなったがな。フハハハハ!」

――売れることも大事ですよね。西山さんもそうですが、聖飢魔IIの存在が世に広まったことで、へヴィメタルに興味を持った人も多いはずなので。

デーモン閣下「そうだな。最近はCMやTVの情報番組、ときには官公庁でのお堅い仕事もあるのだが、〈担当している人間が信者だった〉ということが非常に多いのだ。〈私、ずっと閣下の『オールナイトニッポン』を聴いてました〉とかな。日本がいよいよ悪魔に征服されつつあることを実感するね(笑)。そして今回、ついにジャズ界にもその影響が及んだというわけだな……」

――NHORHMは今回のアルバムが3部作の最終章、ラストということですが……。

西山「それがですね、実はもう〈第2期〉の構想がありまして。すでにライヴでも〈第2期はメンバーが変わるかもしれません〉とお客さんにカマをかけて遊んでいます(笑)」

デーモン閣下「え、そうなの(笑)?」

西山「はい。次のツアーで、聖飢魔IIの別の曲をカヴァーさせていただこうかなと考えていまして」

――コメントで〈1曲だけではなくあと数曲カヴァーしてくれないかな〉ともおっしゃっていましたが、閣下から〈この曲をカヴァーしてほしい〉というリクエストはありますか?

デーモン閣下「それは言わないでおこう。どうしてこの曲を選んだのか?と推測する楽しみを取っておきたいからな。信者も期待していると思うので、大いにやってほしい」

西山「ありがとうございます!」

 


Live Information

●NHORHM

10月16日(火)横浜 Dolphy
11月27日(火)新宿 Pit inn
11月29日(木)名古屋 Star Eyes
11月30日(金)大阪 Mr.Kelly’s
12月1日(土)枚方 メセナ枚方会館多目的ホール〈HIRAKATA LOVE JAZZ 2018〉
12月2日(日)岡山 サウダーヂな夜

●デーモン閣下

デーモン閣下コンサート「THE "BIRTHDAYS" ROCK TOUR」
11月10日(土)Zepp Tokyo
11月22日(木)川崎CLUB CITTA'(オールスタンディング)
12月1日(土)メルパルク大阪
12月3日(月)Zepp Nagoya
出演:デーモン閣下(Vo.)/雷電湯澤(Drs.)/石垣愛(Gt.)/原田喧太(Gt.)/大桃俊樹(Bass)/MIYAKO(Key,BGV.)/ayumi(BGV.)
★詳細はこちら

「デーモン閣下と一噌幸弘が贈る能楽入門コンサート『幽玄悪魔』」
11月17日(土)長野市芸術館
★詳細はこちら

「デーモン閣下&岡本知高の『悪魔の森の音楽会』」
12月8日(土)福島・棚倉町文化センター
★詳細はこちら

「デーモン閣下の邦楽維新Collaboration『新春地獄絵図 ~芥川龍之介を詠み謳う~』」
魔暦21[‘19]年1月27日(日)東京・練馬文化センター大ホール
★詳細はこちら

「デーモン閣下の邦楽維新Collaboration『妖気月下の陰陽師 ~夢枕獏を詠む~』」
魔暦21[‘19]年3月9日(土)、3月10日(日)神奈川・横浜市 みなとみらい(小)ホール
★詳細は後日発表

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