INTERVIEW

Taiko Super Kicksは〈個〉の4人の集まり

伊藤暁里が語る、シングル『感性の網目/bones』に込めた意図

Taiko Super Kicksは〈個〉の4人の集まり

2月にリリースされたTaiko Super Kicks(以下、タイコ)のセカンド・アルバム『Fragment』は、じわじわとその聴き手の層を広げつつある。前作『Many Shapes』(2015年)同様、醒めた熱を湛えたレコードは、確実な深化を遂げたバンドの姿を静かに捉えたドキュメントとなっていた。

それから約9か月。新作として発表されるのは、CINRA.NETと東洋化成との共同制作となる7インチ・シングル『感性の網目/bones』だ。ここに来てバンドはまた、新たな方向性を模索している。

タイコの音楽に耳を傾けていて思うのは、彼/彼女らには、歌うべき言葉があるということだ。〈スーパーカーのいしわたり淳治の歌詞は、歌うべき言葉はないという前提に立っていた〉とは僕の友人の言だが、タイコはそうした虚無感から距離を置く。タイコは、伊藤暁里は、いま歌うべき言葉を掴み取ろうともがいている。

前置きはこのくらいにして、〈Mikiki Pit〉への出演も控えるタイコの最新インタヴューをお届けしよう。ヴォーカル/ギターの伊藤との対話から、バンドの2018年の姿を捉えた。

Taiko Super Kicks 感性の網目/bones Taiko Super Kicks(2018)

Taiko Super Kicksは、みんな我が強いっていうか、変なんです

――『Fragment』リリースのタイミングで取材できなかったことが残念でした。なので、『Fragment』から今回のシングルまでのことをお伺いできればと思います。

「『Fragment』の取材は詞について訊かれることが多くて、音楽的なことにあんまり触れてもらえなかった気がします。意図が伝わっていないという、力量不足もあると思いますし」

――『Fragment』は、バンド・アンサンブルを大事にしていると感じました。

「その意識で作ったんです。〈4人である〉っていうことを、いちばん重要視して作ったので」

――タイトで引き締まってて、無駄がない演奏という印象です。例えば、Corneliusのサウンド・デザインのような。

「新しいアルバム(『Mellow Waves』)は参考にもしましたね。音を並べていく、敷き詰めていく感じというか」

2018年作『Fragment』収録曲“のびていく”
 

――具体的にはどういうことをしたんですか?

「まず、基本的にはオーヴァー・ダビングをしないっていうのがひとつ。楽器の音の配置も基本、全曲同じです。〈ここでこれが鳴ってる〉っていうのをわかるようにしました。あと、これまでは〈樺山(太地)のギターがいい〉という評価も多かったので、メンバーみんなの個性を出そうって考えて。

去年1年間、メンバーで〈月刊タイコスーパーキックス〉っていうフリーペーパーを作ったんですけど、みんな我が強いっていうか、変なんです。サークルの後輩にも〈この3人とバンドをやるのはなかなか難しいですよ〉って言われたり」

――まとめるのが難しいんですね(笑)。

「まとめられてないから、逆にいいと思うんですけど。例えば、ベースの大堀(晃生)さんは、バンドが全然続かなかったんですよ(笑)。本人も自虐で〈バンドクラッシャー〉って言ってるくらいで。

のぞみん(こばやしのぞみ/ドラマー)も自分を持ってる人で、簡単には自分を曲げないタイプ。樺山もそう。だから、音楽的な理由というより、人間味とかキャラクターとか、そういうのを作品に出したほうがいいなって思って。

タイコはワンマン・バンドじゃないんです。新曲を作ってても、みんながノるまでに時間がかかったり、〈この曲はよくわからない〉っていう空気になったりすることもある。だから、みんなの納得するポイントを、ちゃんと取らなきゃいけないバンドなんです」

 

〈ルーツ〉って、いろいろな捉え方ができると思うんです

――他に『Fragment』の音楽的なテーマはありましたか?

「まさに訊かれなかったことなんですけど、ミニマルがやりたかったんです。特に“バネのように”と“遅刻”は、自分たちなりのミニマル・ミュージックを意識しました。“遅刻”については当時、清水靖晃さんの『案山子』(82年)にすごくハマってて、ああいうポップ感があるミニマルをやりたかった。“バネのように”は、ジュリアス・イーストマンの“Stay On It”(73年)っていう曲がリファレンスで。〈♪テッテレレレッテッテーレ〉っていうフレーズで展開していく曲なんですけど。

あと、自分がギターで、コードじゃなくフレーズを弾くっていうのもテーマでしたね。『家族ゲーム』(83年)って映画があるじゃないですか? 最後、家族4人が横並びで食卓についてる画が有名な。レコーディングする前に、あのイメージでやろうって言ってたんです」

ジュリアス・イーストマンの73年の作品『Stay On It』
 

――それはおもしろいですね。あの画を音にするという。では、『Fragment』のリリースから今回のシングルを発表するまでの9か月間、バンドの状態はどうでした?

「ライヴの本数も多くはなかったですし、どちらかというと曲を作ることに専念してました。今回のシングルは、形が見えてくるまでに何か月間か、うまくいってないなっていう期間もあったんですよ。何回も曲を作り直しましたし。メンバーの間には〈この状況、何なんだろう?〉って気持ちもあったんだろうなって……」

――閉塞的だった?

「そういう時期もありましたね。でも、樺山が〈頑張りましょう! 暁里さんがビシッと締めないと駄目ですよ〉って言ってくれたりして。なので、曲の作り方を変えて、デモを作り込むようにしたり。でも、“感性の網目”が出来て、〈いい曲が出来た〉っていう空気になりましたね。とりわけ歌は、これまでとは違う、ハートウォーミングな感じになったんじゃないかと(笑)」

――確かにそうですね。

「あと最近、タイコはルーツがわかりやすいタイプのバンドじゃないっていうことを意識しはじめたんです。〈ルーツ〉って、いろいろな捉え方ができると思うんですけど、そんなとき、たまたま『インドア・ポップ・サイクル』(99年)っていう本を買って。〈ジャンル名はないけど仲間だよね〉っていう、通じ合うアルバム100枚が紹介された本で」

※「ミュージック・マガジン」増刊。宮子和眞監修。ヴァン・ダイク・パークスやニック・デカロから、90年代のオリヴィア・トレマー・コントロールまで、相通ずる多彩な音楽が紹介されている
 

――わかりやすい影響関係ではなく、音楽的に距離はあるけど、何か補助線があると、その距離がグッと縮まるみたいなことでしょうか?

「まさにそうです。それを教えてくれる本で、自分にもそういうルーツはあるなって。例えばそれは、僕が大学に入学した2010年頃によく聴いていた、ブルックリンのバンドかもしれませんし」

――アニマル・コレクティヴ、グリズリー・ベア、ダーティ・プロジェクターズとかですね。

「そうですね。具体的にどのバンドがというわけではないんですけど、そういうもののなかに自分の第2のルーツ、それこそ補助線のようなルーツがあるんじゃないかなって考えて、それで“bones”を作りはじめたんです。メンバーにも〈なんでいま音楽をやってるのかを考えてみない?〉って問いかけてみたりしましたね。そういう期間でしたし、いまも考え続けてます」

 

“感性の網目”の演奏は、1人だけでは成立しないんです

――今回は2曲とも『Fragment』の音楽性とはちょっと違いますよね。

「『Fragment』にはJ-Popっぽさがなかったなと思って、ポップス感を出したかったんです。前からシングルを出したかったので、ポップス感のある曲を作ろうって。あと、『Fragment』に“汗はひき”って曲があるんですけど、〈ドラムのパターンがおもしろい〉って感想をよく聞いたんです。実は、よくあるドラム・パターンの、ハイハットをずらしただけなんですけど。今回のシングルはそれを押し出していこうと思って、2曲ともドラムがちょっと変な感じなんです」

――確かに“bones”のドラムは変わっていますね。

「あのドラムは、ロバート・ワイアットのソロ作を参考にしました。『Fragment』を作った後、のぞみんとロバート・ワイアットの話をよくしてて。『Nothing Can Stop Us』(82年)っていうアルバムとかですね」

ロバート・ワイアットの82年作『Nothing Can Stop Us』収録曲“At Last I Am Free”
 

――歌い方の変化という話もありましたが、親密さを感じる、優しい発声になっています。

「『Fragment』のエンジニアの中村(公輔)さんが〈伊藤くんは声を張り上げないほうがいい〉ってディレクションをしてくれたんです。『霊感』(2014年)の頃は〈ヴォーカルっていうのはマックスで歌うものなんだ〉っていう考えだったんですけど(笑)、中村さんは〈ちょっと遠いところで静かに歌ってるくらいでいいよ〉って言ってくれて。

あと、今回はキーが低い。特に“bones”は、かなり低くて。だから、わりとしゃべり声に近い。それと、“感性の網目”の歌のテイク選びでは、イノセンスなほうを選びました。すごく綺麗に録れたのもあるんですけど、納得がいかなくて。もっと素の感じっていうか」

――演奏やアレンジの面ではどうでしょう?

「『Fragment』はそれぞれのフレーズだけで成立してるものにしたかったんですけど、“感性の網目”はそれでは成立しないんです。〈自分1人だけでは練習できない〉って、メンバーみんなが言ってました」

――他の音がないと駄目?

「1人で演奏するとコード感もわからないし、ギリギリの絶妙な感じで。それと、大堀さんに言われて〈そうだな〉って思ったんですけど、良いか悪いかは別にして、引っ掛かりがない2曲ですね。録音も、〈あんまり気張らずにやろう〉って感じでやりました。『Fragment』はもうちょっと硬い、緊張感のある感じでしたが、今回は、わりとルーズかもしれないですね(笑)」

――“bones”は、シンセサイザーが入っているのが印象的です。

「さっきの補助線的なルーツの話に戻りますが、〈2000年感〉のようなものも自分にとって重要だと思って。マウス・オン・マーズとかフォー・テットとか、90年代の終わりから2000年代の初めくらいのIDM/エレクトロニカが好きだったので、その感じを出したいなと。元々ピアノをやってて、大学生の頃はシンセで他のバンドに参加してたこともあったので、バンドに導入したいと思ってたんです」

 

戦ったり逃げたりするんじゃなくて、守ってくれる何かのほうが大事だと思って

――“bones”はどのようにして生まれた曲なんですか?

「ああでもない、こうでもないとこねくり回して、現状こうなってるのが“bones”なんです。元々は、『Fragment』のツアーが終わって、4月頃に“友達(仮)”っていう曲を作ったんです。でも、あまりスタジオで演奏してもハマりませんでした。さっき言った、うまくいってなかった期間というのはこの頃です。

そんなときにbutajiさんのワンマン・ライヴが(東京・神保町の)試聴室であったんですけど、そこで“秘匿”を聴いたときに感じ入るものがあって。その直後に詞を書こうと思い立って、すぐ外に出て、コンビニの前で20分くらいかけてスマホのメモに詞を打ち込んだんです。次の日に、それでメロディーを作って。やっぱり、自分にとって大事な歌詞が出来ないと、何も始まらないなと思いました」

――もちろん“bones”もですが、“感性の網目”は、とりわけ素晴らしい歌詞ですね。

「自分で言うのも恥ずかしいんですけど、この2曲の詞は、かなりいいものが書けたと思ってるんです。詩としての良さがありつつ、歌詞にもなってるっていうところに近づけてきてるのかな」

――“感性の網目”の詞はどうのようにして書かれたのでしょう?

「最近、すごくやかましい話が多いなって思いませんか? 何か発言をすれば、すぐに〈いや、そうじゃないんですよ〉みたいなことを言ってくる人がいる。それはTwitterとか、SNS上でだけのことかもしれないんですけど、最近、特にそういう気がしてて。同じことを感じてる人の発言もよく見ますし、たぶん、時代の空気感としてあると思うんです」

――SNSの息苦しさ?

「息苦しさが増してませんか? 僕は噂が嫌いなんですけど、結局、SNSで流れてくるのって噂なんですよね。どこに確証やルーツがあるかもわからないことを、どこの誰かもわからない人が言ってて、どこの誰かもわからない人がそれに反応してる……」

――フェイク・ニュースとポスト・トゥルースが蔓延している世界。

「そういう空気が強まってきてることが、“感性の網目”のテーマです。でも、そこで戦ったり逃げたりするんじゃなくて、そういったことから守ってくれる何かのほうが大事だと思って。〈Twitterやりません〉っていうのも難しいし、〈スマホ持ちません〉っていうのもできない。そのときに自分を守るものとして、〈網目〉っていう言葉はすごくいいな、しっくりくるなって、朝5時くらいにコンビニの前で思ったんですよ(笑)。つまり、〈壁〉じゃないんです」

――網目だったら、通すものもあれば、ブロックするものもあると。

「そうです。網目に囲まれたなかにいれば、他人と隣り合ってても、その間にちゃんと線が引かれてる。〈それでちゃんと守られてるんだよ〉っていうことを言いたかったんです」

――一方でフィルター・バブルという言葉もあって、インターネットには自分の都合のいいものしか見えなくなるという機能もあります。網目には、そういう環境も作れてしまう側面もある。

「だけど、壁よりは絶対にいいと思ったんですよね」

――壁に囲まれると周りは何も見えないけど、網目だったら向こう側が見える。

「網目くらいでいいと思うんです、僕は。〈自分はこう思ってる〉っていうことに、みんなが〈確かにそうだね〉って賛同してくれる世界のなかで生きてる人たちのことも、僕は否定できないんです」

――ある人がエコー・チェンバーのなかにいるとしても、それを否定できない?

「それを乗り越えて、わざわざ否定してしまうのが問題だと思うんです。網目に守られていることすらも許されないような状況で」

――だから、〈すれ違う人に手を振って〉という歌詞なんですね。

「それは逃げかもしれないですし、間違ってるかもしれないんですけど、僕のいまの気持ちはそうなんです。〈他者と向き合って話そうよ〉っていう人もいると思うんですけど、向き合った結果、ただ争いになって終わることも多いと思います。だったら……」

――〈迎え撃つ声を留めて〉。

「そういうふうに、いまは思うんですよね」

 

Taiko Super Kicksは4人という総体ではなく、個の4人の集まりなんです

――いまは〈正義と不正義〉〈僕が正しくて、君が間違っている〉というような二項対立になりがちですよね。

「〈0か100か〉で、中間的な存在が認められないんですよね。本当はグラデーションがあるのに。二項対立の世界が嫌なので、〈そうじゃないところに行こうよ〉〈40でも、50でも、60でもいい〉っていうのが、この曲のテーマなんです。そういう場所があって、それは認められるべきだよねって」

――政治で言えば、〈保守対リベラル〉という単純な対立構造になりがちだけど、本当は、ひとりひとりに〈感性の網目〉で出来た立場がある。

「そうです。その感覚はいま、みんなあると思うんですよね。ちょっとびっくりしたんですけど、“bones”の1行目の歌詞が〈沈黙は語る〉で、GEZANの新作のタイトルも『Silence Will Speak』なんです。きっと何か、そういう同時代的な感覚があるんだろうなって」

――“bones”の〈沈黙は語る〉というラインはどうやって出来たんですか?

「黙っていることもできない、ただ自分が自分でいることすらも難しいという感覚があるんです。その一方で、何かを言ったら意味が変わってしまう、発言が意図したものとは違うものになっていくこともあると思うんですよ。語れば語るほど、自分が言いたいことから遠ざかるような気持ちがある。LINEやメッセージでもそうです」

――では、〈吐きだした骨が/貝殻のように交換される〉というラインでは、〈骨〉は言葉の暗喩なんですね。

「そうですね。本当は肉という豊潤なものがあるはずなのに、他人に伝えるときはしゃぶり残した汚い骨だけになってしまってて、それにみんながうっとりしてるみたいなイメージです。言語って意志疎通のためのものなのに、表現しきれていないものが多すぎると思って」

――自分のなかにある思いと言葉との間に齟齬がある。

「乖離があるんです。おいしい肉の部分が削がれちゃって、骨だけが残されてる」

――結局、歌詞の話になっちゃいますね(笑)。

「やっぱりタイコは詞が見られてるんだなって。だからそこを伸ばしていこうと思って(笑)、今回は頑張りました。歌詞の〈詞〉って、現代詩の〈詩〉と違ってて、結構離れてるんです。でも、その2つを近づけていこうという気持ちはありますね」

――CINRA.NETのインタヴューで暁里くんが、荒川洋治の詩は理想論っぽくなくて、現実的なものだから惹かれたと言っていたのが印象的です。

「その一方で、“感性の網目”の詞は理想論的だとも思ってるんですよね」

――でも、『Fragment』の歌詞が現実と対峙したものだとしたら、今回のシングルはその先を見ているように思います。

「『Fragment』の詞が、自分が対峙してる苦難に向き合ってるものだとしたら、そうかもしれないですね。でも、ストーリー性があったり、ミステリー的な答えが用意されているものは、僕は好きではなくて、それは詩ではないとさえ思ってるんです」

――いま、世界的にラップ・ミュージックが主流になりつつありますが、それには個の表現であることや言葉の力が関係していると思うんです。その点、タイコの詞は強みになる。でも、バンドのメンバーでいることは、ラッパーと違って個ではいられない。大袈裟に言うと、バンドというひとつの社会の成員になるわけですよね。

「その通りですね。バンドは社会です」

――だからこそ、おもしろい表現ができると思うのですが。

「それこそがバンドがバンドである理由なんですよ。だから僕らは、タイコはワンマン・バンドにはなれない。それは、“感性の網目”で歌ってることとは逆のことかもしれないんですけど。でも、タイコには〈1か100か〉じゃない人たちがたまたま集まってるので、それを最大限活かしたいっていう気持ちはありますね。4人という総体ではなくて、個の4人の集まりなんです」

 


Live Information
〈Mikiki Pit Vol. 6〉

11月17日(土) 東京・下北沢 BASEMENT BAR
出演:ayU tokiO/CAR10/Taiko Super Kicks/Potomelli
フード:三軒茶屋 クジラ荘
開場/開演:12:00/12:30
終演:15:00(予定)
料金:前売り 1,500円/当日 2,000円/学割 1,000円
※いずれもドリンク代別。学割をご利用の方は入場時に学生証をご提示ください

>>チケットのご予約は
Twitter(リプライ、DM):https://twitter.com/mikiki_tokyo_jp
Facebook Messenger:m.me/mikiki.tokyo.jp
メール:mikiki@tower.co.jp もしくは ticket3@toos.co.jp まで
LINE@:
友だち追加


※各出演者でもご予約を承っております

関連アーティスト
pagetop