INTERVIEW

トム・ヴォルフ監督が語る映画「私は、マリア・カラス」――今さらだけど、こんなマリア・カラス、はじめて!

トム・ヴォルフ監督が語る映画「私は、マリア・カラス」――今さらだけど、こんなマリア・カラス、はじめて!

今さらだけど、こんなマリア・カラス、はじめて!

 未だ多くの謎に包まれた、53歳の早すぎる死から41年……遺された絶頂期の録音から既に60年余りを経てもなお、オペラ・ファンの心を捉えて離さない歌姫、マリア・カラス。幅広い音域とそれを自在に操ることのできるテクニックと音楽的な知性、加えて美しい舞台姿に女優としての完璧な演技力まで備えていた不世出のソプラノ。しかし、エキセントリックな性格で完璧主義ゆえに孤独で、特にステージでの不調が顕著になってきた1950年代後半からは各地で興行主とのトラブルも絶えなかったし、家族との確執もあった。そしてギリシャの大富豪オナシスとの大恋愛と破局。その波瀾に満ちたライフ&アートはこれまでにも幾度となく劇場やテレビでドラマ化され、舞台や記録映像を集めたドキュメンタリーも公開されるなどして、DIVAの伝説は最早コンプリートされたかに思えたが、没後40年にして何と新たな発見があった!

トム・ヴォルフ (c) Kelly Williford

 ロシア生まれ、フランス育ちのジャーナリスト系監督トム・ヴォルフが3年にわたるリサーチによって、彼女の未完の自叙伝やこれまで封印されてきたプライヴェートな手紙や秘蔵映像・音源などを入手。それらを元に、今までに無かった新しい視点の記録映画『私は、マリア・カラス』を完成させたのだ。

 「私はそれ程熱心なオペラ・ファンではなかったのですが、カラスの歌う『ランメルムーアのルチア』の狂乱の場面を聴いて、すっかり虜になってしまいました。もちろんその後、残された舞台映像を観て、彼女のステージにおける佇まいにも魅了されましたが、心を掴まれるのにはあの声だけで充分でした。どうやったら歌でこんなにも見事に役を演じることができるんだろうと感銘を受け、もっと詳しく知りたいと思うようになって、真のマリア・カラスを探求するプロジェクトに着手したというわけなのです」

 実に劇中の50%以上が“初公開”素材という衝撃。始まってすぐに登場する『蝶々夫人』のカラーによる舞台映像からマニアの目は釘付けだろう。自宅や友人の家でリラックスする素顔や豪華クルーズを楽しむ姿はもちろん、1964年にオナシスと休暇で訪れたレフカダ島で『カヴァレリア・ルスティカーナ』の《ママも知るとおり》をサプライズ歌唱する様子や、1965年3月に7年振りにメトロポリタン歌劇場に復帰して『トスカ』を歌った時のバックステージや客席から見た舞台姿など、貴重な“初出し”が盛り沢山。Blu-rayで市販されている1958年パリ・デビューのガラ・コンサートや1962年&1964年のロンドンはコヴェント・ガーデン王立歌劇場でのステージも(ごく短い時間ながら)、鮮明なHDクオリティのカラー映像でスクリーンに映し出される。

 「世界中を回って親しかった人たちを訪ね、8ミリや16ミリに収められた私的なフィルムを借り、関係者が所有していた素材や熱狂的なファンが無許可で撮影したパフォーマンスなどを入手しました。有名な市販映像についてもオリジナルをみつけてデジタル化し、写真を参考に適切な着色を施したのでBlu-rayよりも画質がいいし、カラーなので観客になって劇場にいるような臨場感を味わっていただけると自負しています」

 しかも、本作の真価はそれだけではない。自叙伝や未公開の手紙の中に遺されたテキストを、2002年の映画『永遠のマリア・カラス』(フランコ・ゼフィレッリ監督)でカラス役を好演したフランス人女優のファニー・アルダンが命を吹き込むようにして朗読する声や、1970年12月に英国人の人気番組司会者、デビッド・フロストがニューヨークで行ったロングインタヴュー(※当時放送されて以来、40年振りに発見されての再公開)の肉声がふんだんに散りばめられ、全編がカラス本人の言葉だけで綴られた“真実の告白”で構成されている点こそが、ヴォルフ監督が今回成し遂げた、最大の功績なのだ。

 「彼女を知る数え切れない程の人々に面会しましたが、カラス自身の言葉ほど強く、印象的な証言はなかったのです。彼女の視点で最初から最後まで描くこと以外、あり得ないと思った。これまで数々の偉大な音楽家や作家にインタヴューを行ってきましたが、私がマリア・カラスに会って訊きたい質問とその答えの全てがこの映画には詰まっているはず。それくらい渾身の想いを注ぎ、フィルムを繋いで作り上げたものが本作なのです」

 特に注目すべきは終盤あたりで描かれている、これまでスキャンダルかつ悲劇的に語られてきたオナシスとの関係についての意外な新事実かもしれない。コアなファンにとっては当然の必観映画であることは今さら言うまでもないが、プロフェッショナルとして信念を貫き通し、愛を切望するひとりの女性として、苦悩しながらも全てを受け入れようと変化していくその姿は、観る者全ての心を掴むに違いない!

映画「私は、マリア・カラス」
監督:トム・ヴォルフ
朗読:ファニー・アルダン
出演:マリア・カラス
劇中に登場するセレブリティ:アリストテレス・オナシス(海運王)/バティスタ・メネギーニ(実業家・夫)/エルビラ・デ・イダルゴ(ソプラノ歌手・恩師)/ジャクリーン・ケネディ(元米国大統領夫人)/ヴィットリオ・デ・シーカ(俳優・映画監督)/ピエル・パオロ・パゾリーニ(映画監督)/ルキノ・ヴィスコンティ(映画監督)
配給:ギャガ (2017年 フランス 114分)
©2017 – Elephant Doc – Petit Dragon – Unbeldi Productions – France 3 Cinema
gaga.ne.jp/maria-callas
◎12月21日(金)TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー!

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