COLUMN

噂のポップ・バンド、Orangeadeって何者?

大沢建太郎(北園みなみ)、佐藤望、黒澤鷹輔からなるトリオを解剖

(左から)大沢建太郎、佐藤望、黒澤鷹輔

 

Orangeadeって知ってる? 『Broccoli is Here』って聴いた?

昨年末に待望のファースト・ミニ・アルバム『Broccoli is Here』をリリースし、同作を携えたツアーも決定するなど、いよいよ本格的に動き出したOrangeade。

彼らは現在のところ、YouTubeやSoundCloud、主流化しつつあるサブスクリプション・サーヴィスなどに一切楽曲を公開していない。にも関わらず、口コミ伝いに作品・楽曲への評価は高まるばかり。噂を聞きつけたリスナーが『Broccoli is Here』を店頭で手に入れ、〈話題の作品を手に入れた〉とCDの写真をTwitterやInstagramに投稿する――ほとんど無名の新人バンドが音楽の力とその評判だけで、そんな状況を作り上げているのだ。

Orangeade Broccoli is Here Orangeade(2018)

謎めいたバンドとはいえ、実はOrangeadeには現在の国内音楽シーンきっての才能がひとつに集結している。本稿では、そんなメンバーそれぞれのキャリアを振り返りながらOrangeadeというバンドの魅力を探り、この話題沸騰中のトリオに迫っていこうと思う。

2017年12月28日、佐藤望は〈Orangeade〉という名のユニットで下北沢のモナレコードに出演。メンバーは非公表だったが、謎めいたバンドの噂はSNS上でじわじわと広がっていった。そして2018年2月11日、佐藤はOrangeadeの結成を正式に発表。その報せは瞬く間にネット上を駆け巡り、耳の早いリスナーたちを騒然とさせることになる。なぜならそのメンバーが北園みなみ、黒澤鷹輔、そして佐藤の3人だったからだ。

 

謎多き北園みなみ、改め〈大沢建太郎〉

北園みなみといえば、まず思い出されるのは2012年に発表された“ざくろ”。この曲を筆頭にSoundCloud上で公開された一連の楽曲がきっかけとなり、北園みなみという作家の噂はネット上で一気に広がりはじめた。

90年生まれ、長野県松本市在住。一方でその素顔は明かさず、ライヴも一切行わない北園は、謎めいた存在のまま2014~2015年に『promenade』『lumiere』『Never Let Me Go』という3枚のミニ・アルバムをリリースしている。

ジャズやブラジル音楽などを含む、豊富なリスニング体験に裏打ちされたソングライティング。そしてほぼすべてのパートをみずから演奏した、その極めてウェルメイドな音作り。北園の音楽は名だたる同業者たちに衝撃をもたらし、Negiccoや花澤香菜の楽曲において編曲を担うなど、アレンジャー/マニピュレーターとしても活躍の場を広げていく。

 

婦人倶楽部やカメラ=万年筆で活躍する佐藤望

佐藤望は、そんな北園に早くから称賛の声を送ってきた同世代アーティストの一人だ。

2010年、彼は同じ昭和音楽大学の佐藤優介とともにユニット〈カメラ=万年筆(caméra-stylo)〉を結成。坂本龍一のトリビュート・アルバム『Congratulations on your 60th Birthday Dear skmts』(2012年)への参加などを経てリリースされた彼らのファースト・アルバム『coup d'État』は、鈴木慶一と野宮真貴がゲスト・ヴォーカルを務めるという、まさに破格のデビュー作となった。同作にはリリース当時、同窓の澤部渡(スカート)も賛辞を寄せた

カメラ=万年筆の2012年作『coup d'État』トレイラー
 

その後、佐藤はCM音楽の制作などを手がける傍、ムッシュレモン名義で新潟・佐渡島の主婦たちによる謎のユニット〈婦人倶楽部〉をプロデュースし、RYUTistの楽曲を手掛けるなど、職業作曲家としても幅広く活躍。アカデミックな方法論も用いながらポップ・ミュージックの型を崩していく、その緻密かつ大胆な作風で注目を集め続けている。

婦人倶楽部の2016年作『フジンカラー』収録曲“たらい舟に乗って”
 

 

Orangeadeのフロントマン、黒澤鷹輔

そして、黒澤鷹輔。そもそもOrangeade結成は北園が黒澤に話を持ちかけたのがきっかけだったという。

黒澤は2016年までポートレイツというデュオのヴォーカリスト/ギタリストとして活動していたミュージシャンだ。ポートレイツはネット・レーベル、Ano(t)raksのコンピレーション『plus one』(2015年)への楽曲提供などを経て、2016年にファースト・アルバム『背伸び』をリリース。往年のシティ・ポップを想起させるスムースで洗練された楽曲が話題となった。

ポートレイツの2016年作『背伸び』収録曲“さようなら日曜日”
 

また、ポートレイツの2人はかつて佐藤望を中心に一夜限定で結成されたバンド〈オレンジ〉にも参加しており、どうやら佐藤と黒澤もOrangeadeを組む前から互いに信頼を置く間柄だったようだ。

こうして3人のキャリアをざっと辿ってみるだけでも、Orangeadeが破格のソングライター・チームであることは十分に伝わるだろう。そんな期待を受けて昨年2月に限定販売された3曲入りのファースト・シングル『Orangeade』は、即座に完売。そのうち2曲は7インチ盤として再リリースされている。

ちなみに、北園みなみはOrangeadeの結成を機に上京。もちろんライヴにも参加し、さらにはアーティスト名義を〈大沢建太郎〉に改名している。その真意は本人のみ知るところだが、少なくとも彼がOrangeade始動を音楽活動の転機として捉えているのは、まず間違いなさそうだ。

 

底なしのポテンシャルを秘めた、不世出のポップ・トリオ

実際、『Orangeade』『Broccoli is Here』という2つの既発音源を聴けば、彼らの本気ぶりは如実に伝わってくる。

管楽器や弦楽器を惜しげもなく配した、その華やかなオーケストラル・サウンドは、ヴァン・ダイク・パークスの仕事を引き合いにしたくなるほどに緻密で重厚。なおかつその繊細な音像は全盛期の10ccを想起させるようなストレンジさも秘めている。さらに両作にはピアノの独奏による静謐なインストゥルメンタルも収録されている。そのように彼らの楽曲はとにかくヴァリエーション豊かだが、あくまでもそれが開かれたポップスに仕上がっているのがたまらない。

佐藤望と大沢建太郎という当代きってのソングライター2人がお互いの曲を持ち寄り、黒澤鷹輔は主にシンガーとしてバンドのフロントマンを担うーーどうやらOrangeadeにおける彼らの役割はこのような分担になっているようだ。とはいえ、もちろんこうした担当分けは決まりきったものではなく、きっと彼らは現在進行形で様々なアプローチを試しているはず。

それぞれの類いまれなスキルと知識を最大限に発揮し、ぶつけ合いながら、Orangeadeはこれからも素晴らしい音楽を我々に届けてくれるだろう。アカデミックな音楽的素養と底なしのポップ・ポテンシャルを秘めた不世出の3人組、Orangeade。全国4か所を回るツアーの開催も控えているいま、このバンドをチェックしない手はない。

 


Live Information
Orangeade presents『Broccoli is Here』Release Tour & Party

3月25日(月)京都 SOLE CAFE
開場/開演:19:00/19:30
前売り:¥2,800円(当日券の販売予定なし)
ゲスト:シンリズム
出演:Orangeade-1
黒澤鷹輔/佐藤望/U(ドラムス)

3月26日(火)名古屋 K.Dハポン
開場/開演:19:00/19:30
前売/当日:2,500円/2,800円
ゲスト:シンリズム
出演:Orangeade-1
黒澤鷹輔/佐藤望/U(ドラムス)

3月30日(土)新潟 北書店
開場/開演:17:30/18:00
前売/当日:2,500円/2,800円
ゲスト:月の満ちかけ
出演:Orangeade-1
黒澤鷹輔/佐藤望

4月6日(土)東京・江古田 BUDDY
開場/開演:18:30/19:15
前売/当日:3,000円/3,500円
出演:Orangeade Band Set
黒澤鷹輔/大沢建太郎/佐藤望/松本一哉(ドラムス)/大石俊太郎(サックス)
フロア・ミュージック:魚返明未トリオ
魚返明未(ピアノ)/小牧良平(ベース)/吉良創太(ドラムス)

プレイリスト
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