NegiccoのKaedeが、ファースト・ソロ・アルバム『今の私は変わり続けてあの頃の私でいられてる。』から約9か月ぶりとなるミニ・アルバム『秋の惑星、ハートはナイトブルー。』を9月8日(火)にリリースする。今作は、初の試みとしてプロデューサーにLampの染谷大陽とウワノソラの角谷博栄を迎え、染谷と角谷のほかに、永井祐介(Lamp)、榊原香保里(Lamp)、いえもとめぐみ(ウワノソラ)、田中ヤコブ(家主)など、豪華ミュージシャンが集結したコンセプチュアルな作品に仕上がった。そんな今作について南波一海が、Kaede、染谷、角谷の3人にリモート・インタビューで話を訊く。

Kaede(Negicco) 『秋の惑星、ハートはナイトブルー。』 T-Palette(2020)

 

自分たちにすべてを頼むなんてかなりのチャレンジャーだな

――染谷さんと角谷さんのタッグで本作をプロデュースすることになった経緯からうかがいたいと思います。

染谷大陽「Kaedeさんのファースト・ミニ・アルバムで僕が1曲提供させていただいたときに(『深夜。あなたは今日を振り返り、また新しい朝だね。』収録の“あなたは遠く”)、角谷くんの家でヴォーカル録音を行なったんです。そのときに雪田さん(EHクリエイターズのディレクター雪田容史)が同行されていて。これは僕の予想なんですけど、そのときの僕と角谷くんの作業の様子を見ていて、そういうアイデアが浮かんだのかなと」

2019年作『深夜。あなたは今日を振り返り、また新しい朝だね。』収録曲“あなたは遠く”

――角谷さんはNegiccoに“土曜の夜は”を提供されているという繋がりがあって。

Negiccoの2016年作『ティー・フォー・スリー』収録曲“土曜の夜は”

角谷博栄「そうですね。Kaedeさんとconnieさんも去年、僕たち(ウワノソラ)がやったライブ(「7 YEARS LIVE」)に来てくださって。そのときのパンフレットに染谷さんとの対談も載っていたので、僕らの関係性を感じていただいたり、面白そうだなと思ってくださったのかなと」

――今回は最初から曲単位でのオファーではなく、まるっとミニ・アルバム1枚プロデュースという話だったんですよね。

染谷「そうです。あとから最初と最後に短い2曲を足したという経緯もあったんですけど、最初は5曲のミニ・アルバムでお願いしますという話で。僕と角谷くんの感想としては、正直、自分たちにすべてを頼むなんてかなりのチャレンジャーだなと(笑)。角谷くんと僕が任されたイコール、あまり仕事的な感じでやるっていうことではないのかなと。もともと僕も角谷くんもそういうのが好きじゃなかったですし、やるからには爪痕を残したいというのもありました」

――Kaedeさんは、今作のきっかけとなった “あなたは遠く”をレコーディングしたときはどんな感想を持ちましたか?

Kaede「そのミニ・アルバムを作ったとき、“あなたは遠く”が一番難しくて。初めての二人とのレコーディングだったんですけど、緊張もあってなかなかうまく進まなくて、すごい苦戦したなという記憶があります。いままでのソロ曲のなかで一番時間がかかったと思います」

――では、この布陣でミニ・アルバムとなるとそれなりの緊張感がありました?

Kaede「いや、そこはそんなに身構えなかったです。ただ楽しみだなという感じでした」

――作品の方向性はどのように決めていったのでしょうか。

染谷「これまでのKaedeさんの作品を聴いて、流れを見て、どういうものが来たら面白いのかというのは角谷くんと毎日のように長電話しました。せっかく僕たちに全部任せてもらっているならちょっと変わったことがやりたいねということで話を進めていって。いままでは色んなミュージシャンの方が1~2曲提供して、それを集めたものがアルバム作品になっていたわけですけど、今回は僕たちだけに5曲任せてもらっているので、そのやり方でしかできない幅の出し方は色々考えられると思いました。ほかの作品を悪く言うわけではなく、自分たちで今回の作品を捉えたときに、寄せ集めではないような感じに、という方向性は最初に考えたことです」

角谷「例えばですけど、いまある流行りものを僕たちでやる意味というのはない気がして。もちろんそういうのも好きで聴いてはいるんですけど。あまり派手さはないかもしれないけれど、10年後、20年後もたまに聴いてみたくなるような。Lampや僕の音楽もそういうことが前提にあって作っているので、Kaedeさんのもそういうものを作りたいとは思っていました」

――お二人でこういう形の共同作業をしたことはあったのでしょうか。

染谷「全然なかったですね。僕はほかのミュージシャンともほとんど交流がないので、こういったがっつりの共同作業というのは初めてでしたね。ただ、それぞれが曲を作るので、そこにどうこう口出ししていくことはなかったんですけどね。ベーシック録りは同じミュージシャンを使って同じ日に行なっているので、そういった面、ミュージシャンを決めたりとかの共同作業の部分で刺激をもらいました」

――参加ミュージシャンの選出はどうやって決まっていったのでしょうか。それぞれのバンドのサポートをしている方が多いとは思うのですが。

染谷「結果的にはウワノソラとLampのサポート・ミュージシャンが大体半分ずつになった感じなんですけど、二人でこの人のいいところはこういうところで、苦手なところはこういうところというのを話していて。実際に曲が上がってきたときに、じゃあどうするかという情報を共有しながら1パートずつ選んでいきました。できあがった曲と照らし合わせながら決めるという感じですね」

――ドラマーの橋本現輝さんはほかのサポート・ミュージシャンの方々とは異なる文脈だと思うのですが、決まった経緯というのは?

角谷「橋本さんは僕のほうから声をかけさせていただきました。ベースの熊代崇人くんと一緒に回っていることもあって面白そうだなと。僕自身、橋本さんとの音楽制作は初めてだったんですけど、以前、すごく意気投合した飲み会みたいなのがあったんです(笑)。それでサウンドを聴いて、どんな感じになるか挑戦してみたかったんですよね」

――ジャズやブラジルの要素が出た演奏になっているのかなと感じました。

角谷「そこはジャズとかポップスというのはあまり考えずに、自分たちが表現できることを実現させてくれるようなメンバーにお願いした感じです。ジャンルは気にせず作っていきました」

『秋の惑星、ハートはナイトブルー。』収録曲“ジュピター”