いまどうしても歌いたいアリアを集めて

 2008年に『モーツァルト・アリア集』でメジャーデビューをしたソプラノ幸田浩子が、そのデビュー10周年を記念してアルバム『ARIA 花から花へ~オペラ・アリア名曲集』をリリースする。

 「今だからこそ、どうしても歌いたい10人のヒロインのアリア、その11曲を選びました」

 と幸田が語るように、彼女の“現在”が詰まったアリア・アルバムとなっている。ヴェルディの『椿姫』のヴィオレッタ(2曲のアリア)に始まり、プッチーニ『ラ・ボエーム』のミミとムゼッタ、ベッリーニの『夢遊病の女』『ノルマ』、ドヴォルザークの『ルサルカ』、香月修の『夜叉ケ池』など、ひとりのソプラノ歌手としての多様な側面が表現されている力作である。

 「すべてのヒロインに共感していますし、それぞれの違った愛の形を表現したいと思い、挑戦しました。それぞれのオペラの中で、どうしてこのアリアが歌われているのか、その持つ意味も表現したかった。また香月修さんの『夜叉ケ池』の百合のアリアと子守歌はこの録音のために新たに編曲されたものです」

幸田浩子 ARIA 花から花へ~オペラ・アリア名曲集 Columbia(2018)

 名匠ラルフ・ワイケルトの指揮、チェコ国立ブルノ・フィルハーモニー管弦楽団との共演で、録音はこの夏、ブルノで5日間にわたり行われた。

 「マエストロとはリヒャルト・シュトラウスの『ナクソス島のアリアドネ』と『ばらの騎士』で共演させて頂いたことがあり、とても信頼していたのですが、今回改めて知ったのは、その音楽的な懐の深さと経験の豊富さでした。様々なアドヴァイスをして頂き、これまでのオペラの経験を注ぎ込んで下さいました」

 アルバム・タイトルの『ARIA』にもこだわりがある。

 「オペラ・アリアは単なる“song”ではありません。そのオペラの描いている状況、背景(時には悲劇的な)があり、その中心にアリアがある。アリアには様々な広がりがあります。そのヒロインの心情、愛の形だけでなく、彼女の置かれている状況や、その作品の世界観までも反映しています。だからこそ、アリアの中のひとつの言葉がとても重要な意味を持つことになります。その言葉がどうしてそこで発せられたのかに注目して欲しいですし、それをこのアルバムの中で一緒に味わって頂けたら幸いです。水谷彰良さんによる素晴らしい日本語訳もブックレットにありますので、ぜひ読んでください。オペラの世界が広がると思います」

 ブルノのコンサートホールでの録音だったが、このホールはウィーンのムジークフェラインの設計者が設計したもので、建設時期もムジークフェラインの直後だということだ。そのアコースティックも10人のヒロインの愛の形を浮かび上がらせる。

 


TOWER RECORDS INFORMATIN

『ARIA  花から花へ~オペラ・アリア名曲集』発売記念ミニライヴ&サイン会
○1/19(土)15:00~
会場:タワーレコード渋谷店 7Fイベントスペース
columbia.jp/artist-info/koudahiroko/