ファジル・サイの音楽を特徴づけるモチーフ、メロディと複合リズムはその基本的な性格や構造がいくつもの自作品の中で共有されており、彼の創造のドメインを星座のように浮かび上がらせる。その音楽の色彩は繊細であり、律動は強固である。一方、それはファジル・サイという人の個性を通じてあらためて聴こえ出したトルコ及びその周辺地域の音楽のケーデンスと言えそうな代物である。今回本人の演奏で録音された《トロイ・ソナタ》でも、メソポタミア交響曲に現れたモチーフと響き合い、弦楽四重奏など多くの作品にも援用されている複合リズムがサイという固有の領域を響かせる。
ファジル・サイ 『ピアノ・ソロ2』 その音楽の色彩は繊細であり、律動は強固である
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