INTERVIEW

Drop's 『HELLO』 Part.1

ロックンロールへの憧れを小さな胸に抱え、猛々しくブルースを鳴り響かせてきた札幌在住の5人組が、ジャパニーズ・スタンダードをヒントに得たポップネスとは!?

Drop's 『HELLO』 Part.1

Drop'sなりの〈ポップ〉

 ミッシェル・ガン・エレファントThe Birthdayなどをきっかけにしてロックンロールに魅せられた中野ミホ(ヴォーカル/ギター)を中心とする5人組ロック・バンド、Drop'sガレージ感のある生々しいロックンロール・サウンド、そして、ブルース・フィーリングを感じさせるヴォーカルによって熱い支持を得てきた彼女たちから、2枚目のフル・アルバム『HELLO』が届けられた。5月にリリースされたファーストEP『コール・ミー』のタイトル・チューンを含む本作について中野は、「より多くの人に聴いてもらいたいと思ったし、自分たちなりに〈ポップなもの〉をやってみたかった」という。Drop'sにとってのポップとは何か?というテーマに向き合うなか、彼女は70年代歌謡曲ニュー・ミュージックにヒントを見い出すことになる。

Drop's HELLO STANDING THERE,ROCKS(2014)

  「『コール・ミー』で荒井由実さんの“卒業写真”をカヴァーさせてもらったんですけど、70年代のポップス、歌謡曲ってすごく素敵だなって思ったんですよね。山口百恵さんの曲もイイなと思うし、歌詞に関しては、はっぴいえんども好きなので、松本隆さんが特に素晴らしいなって。70年代の曲って、極端に明るい感じでもなく、リズムでグイグイ押す感じでもなくて、きれいなメロディーと切ない歌詞がずっと残るんですよね。そういう感じを自分たちの音楽にも取り入れられないかなと思って。結果的に、いままでよりもポップな曲が増えたと思いますね」(中野ミホ:以下同)。

 70年代の音楽からの影響をナチュラルに反映させることで中野は、みずからのソングライティングの幅を大きく広げてみせた。“コール・ミー”の叙情的なメロディーライン、「ひたすら甘い感じの曲にしたかったんです。昭和のキャバレーで歌ってるようなイメージもありました」という“ためいき”、ドラマティックかつエモーショナルな旋律を軸にした“星の恋人”などを聴けば、ソングライターとしての成長を実感してもらえるはずだ。また、どこか懐かしい雰囲気を感じさせる歌詞も、本作の聴きどころのひとつ。そこにも〈聴き手に寄り添える楽曲を作る〉という意識が働いていたようだ。

  「いままでは自分のなかにあるモヤモヤした気持ちを吐き出すような感じで書くことが多かったんですけど、今回は〈発信する側として、どんなことが出来るか?〉ということを考えるようにしていました。(歌詞のテイストが)懐かしい感じというのは、私自身、そういうものが好きだからかもしれないです。洋服も映画も、古いものに興味を惹かれるので。あとは、最近聴いてるフォーク・ソングの影響もあるかもしれないですね。友部正人さんとか、高田渡さんとか。萩原朔太郎の詩も好きですし。ただ、昔の感じをそのままやるだけでは、いまバンドをやってる意味がないと思うんですよね。私ひとりでやってたら、もっと自分の趣味が出ちゃう気がするんですけど(笑)、5人でやることでいまのDrop'sの音になるというか。それは自分たちの強みだと思います」。

 

カッコイイと思うことをやれている

 楽曲のテイストの広がりとともに、バンド全体の表現力も大きく向上している。まずは中野の歌。従来の性急で荒々しいヴォーカルに加え、〈歌をしっかりと届ける〉という意識が強まっているのだ。

 「昔の歌謡曲を聴いていると、じつはサラッと歌っていることもあって、それがすごく良かったりするんですよね。私はいままで〈自分の感情を込めればいい〉とか〈気持ちが盛り上がっていればいい〉と思ってたところもあったんですけど、あえてサラッと歌うことで、聴き手のなかに入っていきやすくなることもあるんだなって。そうやって客観的に考えられるようになってきたんだと思います、少しずつ。もちろん、ブルースっぽいフィーリングも大好きなんですけどね。バンドを始めたときから、自分が歌うんだったら、ブルースのフィーリングは絶対にあってほしいと思っていたので。そのうえで、日本的なメロディーも歌えるようになりたいんですよね」。

 また、メンバーひとりひとりのプレイヤーとしての成長によって、バンドのアンサンブルも深みを増している。鋭利でシンプルなギター・リフを中心にしたロックンロール・ナンバー“DRY DRIVE”、濃密なブルースをたっぷりと含んだ演奏が印象的なミディアム・チューン“どしゃ降り”、切なくも愛らしい恋愛模様を描いた歌に寄り添いながら、豊かな情感に満ちたサウンドを体現した“行方”、モータウン的なリズム・アレンジとカラフルかつポップなメロディーがひとつになった“かもめのBaby”。オーセンティックなロックンロールを基軸にしながら、より芳醇な表現を備えた音楽へと結びつける──そんな彼女たちのトライは、本作によって大きな成果を上げていると言っていいだろう。

  「“かもめのBaby”はまさに、あのリズムをやってみたくて作ったんですよ。モータウンは意識してなかったんですけど(笑)、みんなで合わせたら楽しかったし、〈こういう感じもアリかもしれないな〉って。いいメロディーを付けられたと思うし、Drop's的にも新しいことがやれたんじゃないかな。“行方”の間奏にもすごくこだわりました。歌がない部分でも、感情をしっかり表現したいと思って。曲の元になるアイデアは私が持っていくことが多いんですけど、メンバーのアイデアやニュアンスも、いままで以上に入ってると思います。メンバーに任せられる比重も増えたし、それをまとめる力も付いてきたし……。そういうところもいまのDrop'sの強さなんじゃないかって」。

 Drop'sはこの後、『HELLO』の楽曲を中心としたライヴを展開していく。みずからのルーツ・ミュージックをさらに深く吸収しつつ、よりポップなテイストを加えた本作は、このバンドにとってもひとつのターニング・ポイントになりそうだ。

  「ポップなこともやってるし、いろいろと新しいことにもチャレンジしたんですけど、自分たちがカッコイイと思うことをしっかりやれているし、ロックンロールなアルバムだと思います。好きなことをやりながら、〈王道〉とか〈スタンダード〉と言われるような曲を作って、長く愛されるバンドになる。それが自分たちの目標ですね」。

 

▼関連作品

Drop'sの2014年のEP『コール・ミー』(STANDING THERE, ROCKS)

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