(左から)futami(ベース)/川畑大輔(ドラムス)/ウツモトカナ(ヴォーカル/ピアノ)、Gen(ギター/コーラス)
 

九州・宮崎から現れた注目すべき新鋭を紹介しよう。彼らの名前は、sayonarablue(サヨナラブルー)。2016年に結成され、このたび作品としては4作目となるミニ・アルバム『feel a faint your mind』を自主レーベル〈nnbn〉から発表した4人組のバンドだ。

バンド、とは言っても所謂オーセンティックなロック・バンドのそれではなく、彼らが鳴らすのはエレクトロニクスを主体としたモダンなビート・ミュージック。それこそ『feel a faint your mind』をお聴きになっていただければわかるように、sayonarablueがここで体現しているのは、たとえばXXなどに代表されるような、極めて2010年代的なバンド像なのだ。

全編に漂う湿ったアンビエンスと気だるげなフィメール・ヴォイス、あるいは深いリヴァーブのかかったピアノや澄んだギター・サウンドに00年代以降のドリーム・ポップを重ねつつ、そのミニマルなビート・メイキングからポスト・ダブステップ以降の感性が見いだせる新作『feel a faint your mind』。この作品と彼らの実像に迫るべく、Mikikiでは彼らとの書簡インタヴューを敢行した。その音楽性についてはもちろん、拠点とする宮崎の状況やバンドを取り巻く人脈についても語ってもらったので、『feel a faint your mind』のサブテキストとして楽しんでいただければ幸いだ。

sayonarablue feel a faint your mind nnbn(2019)

 

楽曲制作するときに目指す視覚的イメージは、どの作品でも統一している

――まずはここまでの歩みをすこしだけ振り返っていただけたらと思ってます。皆さんはどのような経緯でsayonarablue結成に至ったのでしょうか? この4人はどのようにしてつながったのか、バンドを結成するうえで意気投合したポイントなどを教えてほしいです。

Gen(ギター)「sayonarablueは僕とドラムの川畑が前身となるインスト・バンドのin the ironyを活動休止した後、ピアノが欲しいという理由で以前から僕らのバンドのファンだったウツモトを勧誘してスタートしました。ウツモトの声に魅力を感じていたので楽曲に取り入れたいと考えていましたが、結成当時は同期を使ったピアノ・インスト・バンドとして活動していました。また、同年にサポート・ベースであったfutamiが正式加入し、現体制となりました。

シンプルに好きな音楽の話で盛り上がったことが結成のいちばんのポイントで、ほかにも楽曲制作の上でイメージが共有、共感できたことも大きいです。自分たちが聴きたい音楽を自分たちで作ろうという、少しひねくれたような考えの人が集まったのかなという印象ですね」

in the ironyの2015年のライヴ映像
 

――バンドにとって、何かしらロール・モデルとなった存在はいますか? sayonarablueの音楽性を形作るうえで参照したものがあれば教えてください。

Gen「ロール・モデルは特にいません。よくポスト・ロック/シューゲイザーとして括られる事があるのは、元々マイ・ブラッディ・ヴァレンタインやドーターなどが好きだったこともあるかと思います。実際、結成当初は電子音楽的要素は少なかったです。楽曲に歌が入ってからは、キアスモス、フォー・テット、ジオティック、ガーデン・シティ・ムーヴメントなどのような、電子音楽的な要素や環境音楽の要素を意識するようになりました。

今作においては、ブリアルなどのポスト・ダブステップに、メルボルンのデュオ、クロー(Kllo)やライなどのR&Bサウンドの影響も受けました。その時々で聴いている音楽が楽曲に反映されることは多いです。そういう特性上、いままでの4作品で異なる印象もあるかもしれませんが、楽曲を制作する際に目指す視覚的なイメージはどの作品も統一していて、そこが自分たちの音楽のアイデンティティーとなっているのかもしれません」

クローの2019年の楽曲“Back To You”