INTERVIEW

Negicco『ティー・フォー・スリー』は過去最高の出来栄え! 坂本真綾やOKAMOTO'Sら迎えた珠玉のポップ・アルバムを語る

Negicco『ティー・フォー・スリー』は過去最高の出来栄え! 坂本真綾やOKAMOTO'Sら迎えた珠玉のポップ・アルバムを語る

そして、3人は、何を思い、何を歌う あなたへ、そして、私へ

 いつも予想を上回ってくるNegiccoではあるものの、あらかじめ言っておくと、これは過去最高の出来映えです。そんな『ティー・フォー・スリー』は、3人にとって3枚目のオリジナル・アルバム。評判を呼んだ昨年の『Rice&Snow』が色とりどりのアレンジをチャレンジとする多彩な一枚だったとするなら、今回のニュー・アルバムは3人の歌によりフォーカスしてポップ・アルバムとしての品格を素朴に磨き上げたマスターピースと言っていいでしょう。

 昨年夏には池田貴史レキシ)によるシングル“ねぇバーディア”のヒットに前後して日比谷野外大音楽堂での公演を成功させ、年末にはNEGiBANDのリアレンジによる限定シングル“圧倒的なスタイル -NEGiBAND ver.-”もリリース。今年に入ってからはバンドを従えたセカンド・ツアー〈Negicco Second Tour "The Music Band of Negicco"〉を駆け抜けてきた彼女たちですが、アルバムはそれと並走する形で制作を進めてきたそう。結果、土岐麻子×さかいゆうのペンによるボサノヴァ調の先行シングル“矛盾、はじめました。”でも仄めかされていたように、アルバムの雰囲気はグッと大人な佇まいに……というか、年齢相応の陰陽を備えて、20代女性の等身大な歌心を伝える内容になっています。

Negicco ティー・フォー・スリー T-Palette(2016)

 

改めて気付かされたこと

Nao☆「アルバムが出るたびにたくさんの方に注目していただけるようになって、自分たちでも毎回〈前作を超えられるのかな?〉って思うんですけど、見事に、すごく、いろんな人の思いが詰まった一枚が出来ました」

Megu「特に私たちと同世代の女性を元気づけるような作品、っていうテーマがあって、共感してもらえるような歌詞があったり、大人っぽい曲調が多くなっていて、今のNegiccoの年齢にも合った内容になったなと思います」

Kaede「今回もまたいろんな方向性の曲があって、それぞれ色が強くて、どれも難しかったです。でも、いままでだと無理だったかもしれないっていう曲もみんなどんどん歌えるようになってきてるというか、表現の幅も広がってきてるのかな……って、アルバムを通して聴いて思いました」

Nao☆connieさんも〈これはNegiccoに歌いこなせるのかな?〉って思ってた曲も、実際にレコーディングしてみたら〈ものにできてる〉って感じてくれたみたいで。特に“矛盾、はじめました。”は女性の方から評判が良いんですけど、でもそれって、私たちが高校生の頃に歌っててもそうは言ってもらえなかったと思うので、本当に今のNegiccoを見て詞や曲を作っていただいていることの良さっていうのが、より強く出せたのかなと思います。今回はジャケットもNegiccoの等身大をイメージして撮っていただいてるんです」

 その言葉通り、例えばこれまでのアルバム3枚のジャケを見比べただけでも、その歌世界の変化はわかりやすく伝わるかもしれません。キラキラした可愛いアイドル像を体現してみせたような『Melody Palette』から、カジュアルな姿を切り取った『Rice&Snow』ときて、今回の『ティー・フォー・スリー』が映すのはナチュラルな3人の姿。実際に各曲の描く風景も、スケールの大きいことを歌うのではなく、日常の思いや普遍的な心情を投影したものになってきています。プロデューサーのconnieを中心に豪華なアーティストたちが詞曲の提供や編曲に携わる布陣は不変ながら、今回の際立った特徴としては女性の作詞家を多く起用していることが挙げられるでしょう。

Nao☆「作家さんはconnieさんとユッキー(T-PaletteのA&R)が相談して決めているんですけど、例えば坂本真綾さんは私がすごい好きっていうことをきっかけにお願いできたりとか、MEGさんはもともとぽんちゃ(Megu)がファンだったり、堂島孝平さんはかえぽ(Kaede)が好きだったり、それぞれ自分たちの憧れてたアーティストさんとお仕事できる機会をいただけるのも励みになっていますね」

 新進の顔ぶれも含め、初顔合わせとなる作家陣とのフレッシュな成果も多数。ただ、今回はカラフルなアレンジでヴァラエティー感や驚きを演出することよりも、作品のテーマに沿って至高のポップスを紡ぎ出すことに意識が傾いていたように思えます。また、野音から密に関係を築いてきたNEGiBANDとのツアーがレコーディング期間に重なったことも、3人の意識の変化には大きく作用したようで。

Nao☆「アルバム制作とバンドとのツアーを並行してやっていくことで、自分たちが気付くこと、改めて気付かされたこと、たぶんみんなあったと思います。私はボイトレを入れてから自分の声の特徴やクセを知ったり、自分の声がどういうパートにどういうふうに反映されるかとか意識するようになって。NEGiBANDツアーも毎回ライヴを録音するようにして、聴いては反省しての繰り返しでした。専門の機材で録音したツアーの音源を聴くことによって、いままで気付けなかった自分の歌の粗とかがわかって落ち込んだりもしたんですけど、自分の中で自分の声をハッキリ捉えることで、ちゃんと一曲一曲こういうふうに歌いたいなとか、この曲は自分のこの部分を活かせるなっていうことがわかってきたのは大きかったです。前は2人の良いパートを聴いたら、自分も同じように歌いたいと思ってしまったりして、違いを受け止められない部分があったんですよ(笑)。それがちゃんと自分の歌の役割がわかるようになったので。ワーッて歌うだけじゃなく、寄り添うパートではうまく寄り添うことを考えられるようになりました」

 

 

等身大ってこういうことかな

 そうして生まれたのが薫り高い『ティー・フォー・スリー』。全体の曲順は「1日の流れを2回繰り返してるっていう」(Megu)感じで、緩やかに〈2日間〉の時間の経過を織り成すように構成されています。野音の風を思い起こさせる“ねぇバーディア”で賑やかに幕を開けると、NEGiBANDの面々が叩き出すブライトなシティー・グルーヴ“RELISH”へ。これは折しも作詞生活35周年を迎えた岩里祐穂(新潟出身!)に作詞を依頼したナンバー。岩里といえば膨大なヒットを書き下ろしてきた説明不要の大御所ですが、このページ的に説明するなら、Negiccoがカヴァーしたこともある坂本真綾の“プラチナ”や、かの今井美樹“雨にキッスの花束を”を書いた人、ということになりましょう。

Nao☆「もともとconnieさんが大ファンでお願いしたんですけど、〈RELISH〉って岩里さんの中で温めていた言葉をNegiccoのために使ってくださったそうです。いろんな素敵なことを味わっていこうっていう女性目線の応援ソングになっていて、〈こんな世界が君を待ってたなんて 素敵だと思わない?〉って、connieさんもよくそういうことを言ってくれるんですけど、岩里さんが世の女性や私たちにも言ってくださってるような歌詞だなって」

Kaede「等身大ってこういうことかな、って最初に詞を見た時に思いました」

 続く“マジックみたいなミュージック”はconnieのペンによる詞曲を、昨年ツーマンで共演も果たしている気鋭のMagic, Drums & Loveブラコン風味のアレンジ/演奏で仕立てたかっこいい一曲。どこかEspeciaを思い出す人もいそうな、洒脱なアーバン・テイストがキマっています。

Megu「これはディスコ・サウンドの楽曲なんですけど、歌詞に〈どこかで聞いたDisco Music〉ってあるように、connieさんのオマージュしてるものも込められていて、そういう遊び心もあるし、身体を揺らして自然に楽しめるかっこいい曲ですね」

 さらに“恋のシャナナナ”は、connieが作詞・作曲・編曲を丸ごと手掛けたという意味では、“フェスティバルで会いましょう”(2014年)以来となるポップなパーティー・チューン。connie自身のコーラスも久々にたっぷり交えつつ、トキメキのNegicco節を届けてくれます。

Megu「確かに、なんか“フェスティバルで会いましょう”に通じるとこない?」

Kaede「なんか歌詞がどこかで聞いたことあるなと思ったら、本人も自覚してるみたいで(笑)。〈心 解き放つよ〉とか〈It's All right!〉とかよく聞くし、〈金曜の夜は Friday Night〉〈土曜の夜はSaturday Night〉って、そのままのことを繰り返す、みたいな(笑)」

Nao☆「connieさんのポジティヴさが出てる曲だよね、って話してて。歌ってても安心感があります」

Megu「この曲に関してはディレクションとかもなく、〈DJといったらMeguさんなんで、Megu節でお願いします!〉ってことでした。明るいニュアンスで弾ける、みたいな」

 そんな明るい雰囲気をグッと落ち着いた夜の帳で包むのが、続く“Good Night ねぎスープ”です。こちらはNEGiBANDの一員でもあるmabanuaがconnieと共同でプロデュースを手掛けたもの。ネギ料理をモチーフにした楽曲としては実に“ねぎねぎRock”(2010年)以来となる一曲で、さりげなくイン・マイ・ルームな生活感を織り上げたG.RINAの歌詞が温かいメロウ・グルーヴに溶け込んでいます。

Nao☆「G.RINAさんはお会いしたらすごく素敵な方でした。ねぎって実際に料理の中に入れても味や匂いが強調されるし、言葉としてもけっこうパンチがあるけど、これは歌詞の中にねぎをサラッと入れてもらってて、何の違和感もなく、お洒落に聴けるねぎソングっていう感じがします。mabanuaさんはNEGiBANDで“カナールの窓辺”のオケを作る段階のレコーディング風景を見た時に、どんな楽器も一人で弾いててスゴいなと思いました。今回は実際にディレクションもしてくださったんですけど、〈俺のこのビートをよく聴いて歌ってほしいな〉って、mabanuaさんも凄く気合いが入ってたのを覚えています」

 真夜中のクールな疾走感のある“江南宵唄”は、いかにもSpangle call Lilli lineのプロデュースらしいポスト・パンク的なダンス・トラック。メンバーの大坪加奈が乗せた独特の仮歌にconnieが言葉を当てはめる形で作ったという詞も独特の情緒を醸し出しています。

Megu「新潟に江南区という区がありまして、そこにある曽野木という地名も出てくるんです」

Nao☆「最初は英語の曲みたいに聴こえて、無理!って思いましたね(笑)。どの曲も毎回デモの段階でインプットして、作った方の表現したいものを私たちも表現できるようにやってるんですけど、これは実際に大坪さんが歌ってるニュアンスとかをどう解釈して歌うのかが難しくって。ちゃんとできてて良かったって言ってもらえてホッとしました」

 

 

経験したことのある思い

 そして夜が明けて次の一日。“圧倒的なスタイル -NEGiBAND ver.-”のカップリングに入っていた長谷泰宏ユメトコスメ)作の“カナールの窓辺”にて光る朝日を感じた後は、Meguもお気に入りなLUCKY TAPESKai Takahashiがアレンジと演奏を手掛けた鮮やかな“虹”へ。詞曲を書いた平賀さち枝の、明るくも寂しくも響く淡々とした味わいが不思議な印象を残します。

Nao☆「この歌が一番歌えない!って思って、出来上がるまでいちばん不安だった曲です」

Kaede「難しかったです。メロディーがうまく入ってこなくて。表現というよりはまっすぐ歌うっていう感じでした」

Megu「不思議な歌詞ですよね。箇所箇所にすごいいい言葉が散りばめられていて。これは平賀さんワールドだなって思いました」

 続いては、昨年の〈NEGiFES〉にも招いたOKAMOTO'Sハマ・オカモトのプロデュースによるモータウン・ジャム“SNSをぶっとばせ”。途中のスウィンギンな展開にもニヤリとさせられますし、表題からイメージされる〈SNS批判〉みたいなノリとは真逆の歌詞もユニークです。

Nao☆「そこは堂島孝平さんらしい詞というか。笑いもあって」

Megu「こういう、今の時代の日常に普通にあるような、タイムリーな内容っていいなと思います」

Nao☆「今の人は“トランシーバーをぶっとばせ”とか言わないもんね」

Kaede「トランシーバーって(笑)。昔なら“ポケベルをぶっとばせ”とか……」

Nao☆「時代が経ったら〈昔はSNSとかあったよね~〉って言ってるのかな、って。そういう意味でも今の時代の曲です」

Megu「かえぽも友達の結婚をFacebookで知ったことがあったって言ってなかった?」

Kaede「友達というか同級生が結婚してた、みたいなのはありましたね」

Nao☆「わ! そういえば私もだいぶ前に、中学の部活で好きだった子が結婚してたっていうの、友達に見せてもらったことがありました。堂島さんもこういうことあったのかな?って気になりますね(笑)」

 そこからリード・シングルの“矛盾、はじめました。”に続くのが、限定7インチも先行カットされた“土曜の夜は”。言わずもがなのナイアガラシュガーベイブ作法を麗しいストリングスも絡めて届けるのは、作・編曲を担当したウワノソラ角谷博栄であります。

Nao☆「かえぽがもともとウワノソラさんを好きで、決まった時は喜んでたよね」

Kaede「ウワノソラさんのルーツにあるような音楽って私は詳しくないんですけど、〈シュガーベイブっぽいね〉って言われることがやっぱり多くて。曲が途中で途切れたり、バンドっぽい仕上がりというか、お洒落な楽曲をいただけたなと思います」

 こうしてスロウに傾いていく後半~終盤のゆったりした流れは間違いなく作中のハイライト。続く“おやすみ(Album Ver.)”はシングル“ねぇバーディア”のカップリングに収まっていた長谷泰宏プロデュースのメロウなミディアムを、さらにシンプルなピアノ&ストリングスのバラード調にリアレンジ&新録したもの。ツアー中のアコースティック・コーナーで曲と歌が育ったこともあって、今回はさらにテンポを落としての再録に挑んだのだそう。

Megu「それぞれ眠ろうとする時のリアルな雰囲気を作ってレコーディングしました(笑)」

Nao☆「ぽんちゃは座って、私は抱き枕を持ってきて、暗くしてもらって。かえぽは携帯をこうして手に持ってね」

Kaede「午前2時に眠れない時ってどうしてるだろう?と思ってスマホを持って……結局は無理で普通に歌いましたけど(笑)」

 そして……そこからの流れを受けてアルバムを締め括るのが、真藤敬利(NEGiBAND)の静謐なピアノのみで送る“私へ”。Nao☆の尊敬して止まない坂本真綾が提供した歌詞も、まるで3人の実像と一体化するかのような深みを帯びて、静かな余韻を残してくれます。

Nao☆「書いていただく前に内容についてお話ししたわけではないんですけど、これは真綾さんが知ってくださっているNegiccoでもあり、真綾さん自身のことでもあるのかなって感じました。未来の〈私〉へ手紙を書いた、タイムカプセルみたいな歌です」

Kaede「歌詞にすごく〈わかるわかる〉っていうところがあって。〈あのね 私最近落ち込んでる だれも気づかないけど/ひとりになると心の声が少しずつ大きくなる〉っていうのは自分でも経験したことのある思いだし、誰にでもあることなんじゃないかと思います」

Nao☆「ピアノ一本だから声もよりハッキリ前に出てるし、もう真綾さんの仮歌がすごくて、〈泣きそうなんで止めていいですか?〉って何度も止めながら録りました(笑)。真綾さんの語りかける感じ、囁く感じを意識したので、ヴォリュームを上げて耳元で聴いてほしいです」

 

 

3人の一体感

Nao☆「前作は制作のペースが早すぎて、思うように行かないまま空回りして終わっちゃってた部分も、自分ではあったんです。曲を貰ってすぐ録音するとか、その曲に追いつけないまま録らなきゃいけない状況もあったりして。もちろんその時の精一杯でやるんですけど、今回はみんなが曲の世界をインプットできてて、ちゃんとそれを表現もできてるから、3人それぞれの良い部分もより出てるのが聴いててわかるんですね。ぽんちゃだったら“恋のシャナナナ”のすごく可愛いニュアンスとかパンチの効いてるところが出てるなとか、かえぽだったら“SNSをぶっとばせ”で他2人が可愛く歌った後にガラッと雰囲気を変える感じとか、かえぽの声質だからこその良さが出てたり……たくさんあるので、好きなところを挙げていったらキリがないんですけど(笑)」

Kaede「私も『Rice&Snow』が出来た時に、自分の歌を聴いて〈こんなにダメなんだ……〉と思ってしまったところはあったんですけど。今回は出来上がりを聴いた時に成長できたのかな、って思えたので、この13曲をここからさらに高めていきたいです」

Megu「聴き終えて思ったのは、3人がよりまとまってるというか。もちろん楽曲もすごくいいんですけど、今回は3人の歌に一体感があって、すごく聴きやすい、良い流れのあるアルバムだなって。これをきっかけにNegiccoを知ってもらうのに良い一枚になったと思います」

Nao☆「アルバム用の新曲ももちろんですし、注目していただけた“矛盾、はじめました。”や、池ちゃんに作ってもらえた“ねぇバーディア”みたいな良いシングルも収録されていて、これはもう自信作です。本当に聴き応えがある一枚なので、音楽ファンの人にももっと広がっていったらいいなと思っています」

 この後のNegiccoは、デビュー時の思い出の場所でもあるNHKホールにて、結成13周年を祝う単独公演〈Negicco 13th Anniversary『Road of Negiiiiii ~ TADAIMA~ 2016 Summer at NHKホール』supported by サトウ食品〉を控えています。また、すっかり恒例となった〈TOKYO IDOL FESTIVAL〉に前後して、8月6日には念願だったという地元・新潟の〈日本海夕日コンサート〉にも出演が決定。そんな季節のサウンドトラックとして、たとえそうでなくても誰しもの日常に寄り添うに違いない、珠玉のポップ・アルバム『ティー・フォー・スリー』を以て、3人は新しい可能性を開きました。そして、また道は続いていきます。

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