オペラのスーパースターでありながらシューベルトの歌曲やマーラーの“大地の歌”など歌曲的楽曲にも積極的に取り組むカウフマンの『至福のとき』は27曲の珠玉の歌曲を収録したアルバム。コロナ禍のなかでミュンヘンのカウフマンの自宅にて録音されたというもので、ベートーヴェンとグリーグの2曲の“君を愛す”やシューベルト、シューマンの名曲の間にショパンの“別れの曲”の歌曲版をはさむなどプログラムにも凝っている。カウフマンのテノールながら低めの深みのある唯一無二の歌唱に名伴奏ピアニスト、ヘルムート・ドイチュが加わった2人だけのホームコンサート的な親密な雰囲気に癒しさえ感じるアルバム。