ビジネス上のトラブルに巻き込まれたバンドがデイヴ・グロールに励まされ、完成させたという美しいエピソードを持つ8枚目のアルバム。スティーヴ・アルビニと組み、原点に回帰した前作から一転、新境地を求めた反動が痛快な意欲作になっている。まるでテレヴィジョンがマージー・ビートを演奏しているみたいだ、という例えは若い読者にはピンと来ないかもしれないが、オルタナ的な歪み、痙攣、反響をふんだんに使いながら(リー・ラナルドも1曲参加!)、持ち前のメロディー・センスに60sを思わせるノスタルジックな味わいが加わったのは、ちょっとびっくりかも。ビーチ・ボーイズ風のハーモニーも飛び出すが、アルバム全体を通して楽器すべてが歌っているような演奏がいちばんの聴きどころだ。