エッシェンバッハのブラームスを集大成する充実の深化。読響コンマスも兼任している日下紗矢子を擁するベルリン・コンツェルトハウス管首席指揮者就任初シーズンの里程標としてまさにふさわしい。例えば第1番終楽章に聴くホルンや木管のふくよかな響き。弦管のブレンドが醸成する一体感の心地よさ。第2、3番で堪能できるのは、深い呼吸感に支えられたまろやかで絶妙な質感を湛えた弦。ブラームスの響きを空間に快く広げる。第4番冒頭での響きを飽和させず透かし彫るように強弱を丁寧に創る筆致は玄妙の限り。時は経ても受け継がれた伝統とたゆみなく更新される修練の賜物が美しく調和した極上の逸品だ。