矢沢永吉のライブベスト映像作品「ALL TIME BEST LIVE」のリリースを記念して​、タワーレコードでは〈TOWER PLUS+ 矢沢永吉特別号〉を発行! ここではその中面に掲載されたコラムを掲載いたします。TOWER PLUS+ 矢沢永吉特別号は、タワーレコード全店にて配布中です!
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矢沢永吉 『ALL TIME BEST LIVE』 GARURU RECORDS(2022)

様々な時代の選りすぐりのライブ映像を選出し収録。時間と場所を行き来しながら構成されたライブ映像作品だ

デビュー50周年を迎える矢沢永吉のライブ映像作品「ALL TIME BEST LIVE」(3枚組+特典Disc)が届けられた。1984年の大阪城ホール公演(「E' LIVE 1984」より)から2017年の日本武道館公演(「TRAVELING BUS 2017」より)まで。東京ドーム、日産スタジアム、横浜スタジアムなどを含むライブ映像50ステージを厳選し、矢沢自らがリミックス、リマスターまで全てを監修した本作。〈すべて本物。すべて伝説。すべて生(ライブ)〉というコメント通り、全身全霊でライブに挑んできた矢沢永吉の軌跡をダイレクトに体感できる作品に仕上がっている。

年代順や時系列でまとめるのではなく、様々な時代のライブ映像をランダムに収録しているのが、本作の特徴だ。たとえばDisc1の1曲目は1990年の“鎖を引きちぎれ”(「Rock'n' Roll Army '90 BUDOKAN」日本武道館)ではじまり、エンディングは2012年の“SOMEBODY'S NIGHT”(「40th ANNIVERSARY LIVE BLUE SKY」日産スタジアム)。つまり時間と場所を行き来しながら構成されているのだが、違和感はまったくなく、〈まだ誰も見たことがない新しいライブ〉のように感じられる。それを可能にしているのはもちろん、アーティスト・矢沢永吉の芯の強さ。鋭利なロックンロール、叙情的・官能的なバラード、ホーンセクションを交えたド派手なスタジアムロックまで、音楽の幅は広いのだが、矢沢がステージに立ち、アクションを決め、唯一無二のヴォーカルを鳴らせば、〈これぞ、永ちゃん!〉と叫びたくなる空間を出現する。年齢でいうと30代から60代までの映像なのだが、しなやかでワイルドなパフォーマンスはまったく変わっていない(というか、年を重ねるごとに凄みを増している)。そんなアーティストはまちがいなく、矢沢永吉だけだ。

全編がクライマックスというべき本作だが、それぞれのDiscの見どころを紹介したい。

Disc1で強く印象に残るのは、90年代前半のライブ映像だ。白のスーツ(上半身は裸にジャケット)、〈E.YAZAWA〉タオルを背負ってパフォーマンスされた“レイニー・ウェイ”(「Big Beat STADIUM」1991年 横浜スタジアム)におけるギラギラした表情。広島、香港の会場とリアルタイムでつながりながら、熱狂的なコール&レスポンスで盛り上がる“Rolling Night”(「JUST TONIGHT」1995年 横浜スタジアム)。日本最高峰のロック・ヴォーカリストとして君臨しながらも、さらなる高みを目指す矢沢の姿は、今観ても最高にカッコいい。

Disc2のハイライトの一つは、“アイ・ラヴ・ユー,OK”(「TONIGHT THE NIGHT! ~ありがとうが爆発する夜~」1999年 横浜国際競技場)だ。50歳のバースデーを記念して行われたライブで名曲をじっくりと歌い上げているうちに、感極まって歌えなくなってしまう矢沢。その姿を見て、観客も涙を浮かべ……それは彼のキャリアにおいても〈名場面〉と呼ぶにふさわしいシーンだと思う。“YES MY LOVE”(「40th ANNIVERSARY LIVE BLUE SKY」2012年 日産スタジアム)におけるオーディエンスの大合唱も最高だ。

そしてDisc3は、ダイナミックなステージングがたっぷり。“ワン・ナイト・ショー”(「ROCK IN DOME」2015年 東京ドーム)では、ムービングステージに移動し、観客の目の前でキレキレのロックンロールを披露。“止まらないHa~Ha”(「TONIGHT THE NIGHT! ~ありがとうが爆発する夜~」1999年 横浜国際競技場)では間奏パートでバイクに乗ってスタジアムに登場し、アメ車のオープンカーでステージに戻るという豪快にしてゴージャスな演出も。エンターテイナーとしての魅力を存分に発揮している。

さらに2021年に行われた全国ツアー「I'm back!! ~ROCKは止まらない~」のファイナル、12月25日の横浜アリーナ公演の模様を収めた特典ディスクも必見。収録カメラが入っていない公演だったが、映像化を求める声が数多く寄せられ、急遽、ライブヴィジョンカメラの映像などを加えて編集されたダイジェスト版だ。コロナ禍のなかで、万全の準備と対策のもとで行われたツアーの最終公演だけあり、矢沢本人、そしてオーディエンスからも〈ここに来られてよかった〉という思いが溢れている。〈全国ツアー31回の山を越えたあの瞬間本当に“やった”と思えた。〉からはじまるメッセージにも強く心を揺さぶられた。

2022年8月、9月にデビュー50周年を記念した全国スタジアム&ドーム・ツアー「MY WAY」を敢行。有観客で新国立競技場の単独公演を行う初めてのアーティストとなる。今もなお攻める姿勢を貫く矢沢永吉は言うまでもなく、日本が世界に誇るロック・アーティストだ。本作「ALL TIME BEST LIVE」をたっぷりと味わった後はぜひ、生の永ちゃんを体感してほしい。そして、最後に。この世に矢沢永吉を送り出してくれた、ロックンロールに感謝しようぜ!