INTERVIEW

ALESSANDRO GALATI 『Seals』

みたされない欲動のシンメトリー

ALESSANDRO GALATI 『Seals』

 日本人の叙情的、耽美的なピアノトリオの偏愛は、ある意味常軌を逸した感がある。こんな国だからこそ比較的簡単にレベルの高い演奏やアルバムに出会うことができるのだろう。アレッサンドロ・ガラティはイタリアのジャズ・ピアニストで、これまでケニー・ウィラーエンリコ・ラヴァといった様々なミュージシャンと共演を重ね、アルバムをいくつもリリースしている素晴らしい演奏家である。今回、メンバーを一新、トリオのアルバム『Seals』をリリースした。「ジャズならではのフレーズの早弾きなんて興味ありません。ひとつひとつの音が響き合うことの結果が創り出すサウンド、音楽にたどり着くことが目標です」

ALESSANDRO GALATI TRIO Seals VVJ(2014)

 今回彼らが取り上げたスタンダードには、そういう彼ならではのアプローチがよく現れている。「《チェロキー》は誰もが最速で演奏するスタンダードですが(笑)、あるときスローで演奏することを思いつき、そのテンポに見合うハーモニーを施して演奏してみました」

 ピアノソロの《ソー・イン・ラブ》は、カエターノ・ヴェローゾが歌う演奏を思わせる。「この曲の素晴らしいメロディを味わうように演奏してみいたい、これは万人に共通の想いなんじゃないでしょうか。私もいい曲を書きたいのですが、想像の世界にあるものを現実の世界に固定するのは非常に難しいですね。いつも何かが足りないと感じるのです。しかしハーフ・フルというこの満たされない状態があるからいつもピアノに向かうことができるのでしょうね」

 とてもいいコンディションでレコーディングされたアルバムは素晴らしい音に仕上がっている、ピアノはファツィオリを使っている。「スタジオのピアノがファツィオリだったんです。しっくりくるまでには時間がかかりましたが、結果にはとても満足しています。ECMのレコーディングには欠かせないエンジニアのステファノ・アマリオには感謝していますよ」

 前号で取材したフレッド・ハーシュとは友人で、ピアニストとしては彼とキース・ジャレットを尊敬するという。「彼は言うまでもなく非常に卓越した演奏技術の持ち主で、鍵盤のどこから何を弾いても完全にコントロールできるのです。技術は演奏したい音楽にストレートに向き合うためのもの、というフレッドのアプローチに私も共感し、そうありたいといつも願っています」

 フレッド・ハーシュのようでありたいという願いは、当然ながら彼自身であり続けることで裏切られつつ、いつもハーフ・フルの叙情は切なく、彼の音楽を響かせる。