サンガツ ベルリンライブ@HAU
撮影:Yutaka Endo, LUFTZUG

芸術文化活動、アーティストの表現を支援する公共事業

 芸人、アイドル、ダンサー、ミュージシャン、映像作家、画家……、表現者たちはそれぞれの活動原資をどうやって調達するのだろう。公演やメディア(CD、DVDなど)の販売収入、クラウドや投げ銭のようなファンディングなどを含めると今や活動を支える収入の細目はさまざまだ。ただ 活動を数字で振り返ると、あらためて表現の内容や手段に関わらず芸能・芸術を支配するのはマーケットであり、表現の自由度は、マーケットへの依存の度合いに左右されていることは明らかだ。

 自分の表現したいこと、アートのコンテンツとして伝えられるべきことは、そもそも収支、マーケットに左右されるべきものではないと誰もが思う。だが表現が新しければ新しいほど認知度はゼロ(見たことも聞いたこともないレベル)に近づき、表現のマーケッタビリティは担保を失う。そんなとき可能性として積極的に検討すべきなのが、芸術文化活動に対する公的支援、助成金や補助金だろう。

 

助成する側/される側から見た助成の意義

 そもそも芸術文化活動に対する助成は、補助金同様、制作予算規模に比べてマーケットが小さく、直接資金調達することが難しい活動のために設けられた支援制度だ。今回紹介するアーツカウンシンル東京(以降:ACTと略)の助成は、助成対象経費の2分の1あるいは3分の2を上限としているが、コンサートなどの制作予算の収入面で、CDなどの販売、チケット販売収入に加えて助成金を組み込めるとずいぶんと肩の力が抜けるだろう。昨今、パンデミックや社会環境の変化によって活動規模を縮小、活動自体を断念せざるを得ないケースも増え、緊急避難的な資金確保の手段として助成や補助金へ応募するケースが増加しているかもしれない。しかしそれは表現に対する助成の本来の趣旨とは異なる。

 近年、人々が芸術だと認める表現領域が多様化したこと、知財の蓄積、アートツーリズム、文化都市を創出し観光資源化するなど、芸術文化の投資的価値への期待も受け、こうした支援策は対象を広げその存在感を増している。つまり助成はそもそも表現者のためだけでない。あらゆる人、鑑賞者も巻き込んだ芸術の創造・鑑賞される環境内の好循環を維持、向上させる社会的価値をもつプログラムなのだ。

 こうした助成する側の意図を受けて、受ける側が理解すべきは助成を受ける意味だ。表現や活動はアーティストのものだが、助成申請には、自らの表現への公的支援の必要性を、助成する側に理解させることが不可欠となる。企画意図、実施の実効性、予算の妥当性、透明性など、事業全体についての説明が必要となる。

 助成金交付申請の手続きは、自らの企画や表現を客観的に見つめ直す機会となり、私的なものとして閉じていた意識をパブリックに開いていく。