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日常から新しい世界へ。細田守が誘う〈音楽の旅〉

 「時をかける少女」「サマーウォーズ」で一気に注目され、現代日本を代表するアニメーション映画監督のひとりとなった細田守。その作品群には、細田自身の音楽への愛とこだわりが貫かれている。だからこそ言いたい。細田作品の名曲をオーケストラが奏でたコンサートのライヴ盤 『スタジオ地図 Music Journey Vol.1』は、音楽ファンにとっても聴きごたえのある名盤であると。

VARIOUS ARTISTS 『スタジオ地図 Music Journey Vol.1 シネマティックオーケストラ 2022』 ソニー(2023)

 細田の映画制作会社〈スタジオ地図〉初となる本公演〈スタジオ地図シネマティックオーケストラ〉は、昨年8月、東京国際フォーラムで開催された。「時をかける少女」「サマーウォーズ」「おおかみこどもの雨と雪」「バケモノの子」「未来のミライ」「竜とそばかすの姫」の6作品全30曲の音楽が、栗田博文率いる東京フィルハーモニー交響楽団の生演奏で展開。音楽家:高木正勝がピアノで登場するほか、主題歌を担当した奥華子、アン・サリーも特別出演。大スクリーンに映し出される名場面とともに音楽を味わうオーケストラコンサート、通称〈オケコン〉はいまや一大コンテンツの一つだが、5000席が即ソールドアウトしたというこの公演の熱狂は、音源からも十二分に伝わってくる。

 鮮やかな夏空。緑豊かな場所で営まれる静謐な日常。温かい家庭の音色――。それらを描写するため細田は、高木をはじめ、松本晃彦や岩崎太整など気鋭の音楽家を起用してきた。作中に音楽が散りばめられた最新作「竜とそばかすの姫」は、岩崎を中心にルドウィグ・フォシェル、坂東祐大など複数の音楽家を起用し、キャラクターの心情をエモーショナルに炙り出した新境地だ。

 若き日にアニメーション映画「美女と野獣」――とりわけ〈ディズニーのイメージそのものを変えてしまった作曲家アラン・メンケン〉と出会い、アニメの現場で生きていく覚悟をしたという細田。若者たちに新しい世界を伝える音楽家に憧れて育った映画監督が、今後どんな〈音楽の旅〉を見せてくれるのか、楽しみでならない。